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5.突然の海外出張 その2
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出発当日。
「あぁ…ついにこの日が来てしまった…。」
飛行機での移動は、15時間弱。移動時間も快適に過ごせるようにお気に入りの香りをアイマスクに纏わせてきた。
集合場所には、立花君と女性社員たちが楽しそうに話している。今から1週間何も起きませんように。平和に終わりますように。お守りとして昔、男の子から貰った白いハンカチを持ってきた。何となく精神的に落ち着くからだ。
立花君は、私の姿に気がつくと研修に参加するメンバーの点呼をとり、搭乗手続きをはじめた。女性社員の中には、立花君とこの研修中にどうにか親密になりたい人がいるらしい。
「植花 茜さんでしたよね?入社が一緒だった、今井さちです。覚えてます?」
突然声をかけられる。今井さち、エリート大学出身のデザイナー。豊かな感性でパッケージのデザインを何度も採用されている天才。フランス語もペラペラだとか。
「もちろんです!前回のデザインも香水にあった色彩で作り込まれてて、とっても素敵でした!」
「あぁ…。ありがと。ところで、あなたも立花君狙いなの?」
とんでもない勘違いをされているようだ。
丁重に説明し、全く恋愛感情はないと伝えた。
「ふーん…。じゃあいいわ。余り接点はないけれど、1週間よろしくね。あと、自由行動がある研修日を知ってるでしょ?邪魔しないでね。」
言葉の端々に棘のある人は苦手だ。
パリで吸収したい事はたくさんある。面倒なことに巻き込まれるのは遠慮したい。小さく深呼吸をすると嫌なドキドキがなくなっていく。
長い長い時間を耐えて、やっとパリへ到着。日本とは違う空気感、街の景色、街の人の服装。こういう所からインスピレーションをもらうことも多い。
「じゃあ、皆んな日程表持ってると思うけど、基本的にパリ本社での研修と自由行動日がある。今日は、ホテルへ直行。明日から研修に参加する事となる。グループは、2つに分かれて行動するように。」
立花君はフランス語を話せるため、今回の研修リーダーに抜擢されたようだ。
宿泊ホテルは、本社から徒歩10分圏内の場所にある。基本的に研修時間外は、自由行動ができるため、ちょっとした観光や食事が楽しめたりする。
「後で、本社までお散歩してみよう!」
新人研修の時に二度パリへ来ているが、数年振りのため初めて来た時の感覚に近い。地理関係をわかっていれば、滞在中少し苦労は減るだろう。
石造りの街並みが広がり、町全体が統一感のある景色になっている。歴史的な建造物もたくさんある。ゆっくりして噛み締めながら本社の前まで散歩をした。
本社の前に数人の人が待機している所に、高級車が停まり、そこから1人の男性が降りてきた。
身長は、180cm以上ありそうな、ダークブラウンの長めの髪は少し癖がある。着こなしているスーツは、見るからに一流品だろう。
あまりにも目を見張る存在感だった為、その場から動けずに目で追ってしまう。
その男性は、横を通り過ぎると数歩先でピタリと止まった。そして振り返り、私と視線が合った様な気がした。顔立ちは日本人の様ではなく、鼻筋が通っていて凛々しい。男性は、周りにいた数人に何かを伝えると1人になり私の前で立ち止まりフランス語で話しかけてきた。かたことのフランス語で返答したが、うまく伝わらなかったようだ。
「君は日本からきたの?」
突然の日本語に驚いて答えられないでいると、握られた手は男性の唇へ触れる。
「君から懐かしい香りがしたから、声をかけてしまった。驚かせるつもりはなかったんだ。ごめん。」
「あっ、すみません!日本から先ほど到着した所です!」
一瞬ポカンとした顔をされるが、笑顔にもどりこう言われた。
「君をもっと知りたいな。少し話せるかい?」
「あぁ…ついにこの日が来てしまった…。」
飛行機での移動は、15時間弱。移動時間も快適に過ごせるようにお気に入りの香りをアイマスクに纏わせてきた。
集合場所には、立花君と女性社員たちが楽しそうに話している。今から1週間何も起きませんように。平和に終わりますように。お守りとして昔、男の子から貰った白いハンカチを持ってきた。何となく精神的に落ち着くからだ。
立花君は、私の姿に気がつくと研修に参加するメンバーの点呼をとり、搭乗手続きをはじめた。女性社員の中には、立花君とこの研修中にどうにか親密になりたい人がいるらしい。
「植花 茜さんでしたよね?入社が一緒だった、今井さちです。覚えてます?」
突然声をかけられる。今井さち、エリート大学出身のデザイナー。豊かな感性でパッケージのデザインを何度も採用されている天才。フランス語もペラペラだとか。
「もちろんです!前回のデザインも香水にあった色彩で作り込まれてて、とっても素敵でした!」
「あぁ…。ありがと。ところで、あなたも立花君狙いなの?」
とんでもない勘違いをされているようだ。
丁重に説明し、全く恋愛感情はないと伝えた。
「ふーん…。じゃあいいわ。余り接点はないけれど、1週間よろしくね。あと、自由行動がある研修日を知ってるでしょ?邪魔しないでね。」
言葉の端々に棘のある人は苦手だ。
パリで吸収したい事はたくさんある。面倒なことに巻き込まれるのは遠慮したい。小さく深呼吸をすると嫌なドキドキがなくなっていく。
長い長い時間を耐えて、やっとパリへ到着。日本とは違う空気感、街の景色、街の人の服装。こういう所からインスピレーションをもらうことも多い。
「じゃあ、皆んな日程表持ってると思うけど、基本的にパリ本社での研修と自由行動日がある。今日は、ホテルへ直行。明日から研修に参加する事となる。グループは、2つに分かれて行動するように。」
立花君はフランス語を話せるため、今回の研修リーダーに抜擢されたようだ。
宿泊ホテルは、本社から徒歩10分圏内の場所にある。基本的に研修時間外は、自由行動ができるため、ちょっとした観光や食事が楽しめたりする。
「後で、本社までお散歩してみよう!」
新人研修の時に二度パリへ来ているが、数年振りのため初めて来た時の感覚に近い。地理関係をわかっていれば、滞在中少し苦労は減るだろう。
石造りの街並みが広がり、町全体が統一感のある景色になっている。歴史的な建造物もたくさんある。ゆっくりして噛み締めながら本社の前まで散歩をした。
本社の前に数人の人が待機している所に、高級車が停まり、そこから1人の男性が降りてきた。
身長は、180cm以上ありそうな、ダークブラウンの長めの髪は少し癖がある。着こなしているスーツは、見るからに一流品だろう。
あまりにも目を見張る存在感だった為、その場から動けずに目で追ってしまう。
その男性は、横を通り過ぎると数歩先でピタリと止まった。そして振り返り、私と視線が合った様な気がした。顔立ちは日本人の様ではなく、鼻筋が通っていて凛々しい。男性は、周りにいた数人に何かを伝えると1人になり私の前で立ち止まりフランス語で話しかけてきた。かたことのフランス語で返答したが、うまく伝わらなかったようだ。
「君は日本からきたの?」
突然の日本語に驚いて答えられないでいると、握られた手は男性の唇へ触れる。
「君から懐かしい香りがしたから、声をかけてしまった。驚かせるつもりはなかったんだ。ごめん。」
「あっ、すみません!日本から先ほど到着した所です!」
一瞬ポカンとした顔をされるが、笑顔にもどりこう言われた。
「君をもっと知りたいな。少し話せるかい?」
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