振り向いてよ、僕のきら星

街田あんぐる

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第5話 「いま」と「さき」/「さき」と「いま」

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 それから季節は梅雨に入り、僕と衣真くんは一緒に映画を観た。ロマンチック要素は少しもなかったけど、一緒に映画を観たというのは大事だと思う。

 衣真くんは僕のことを気にかけてくれるし、最初の頃よりもずいぶん僕に気を許してくれている。衣真くんの笑顔が前より輝いて見えるのは、僕の惚れた欲目だけじゃないと思うんだ。そろそろ「関係性を変えたい」と言ってもいい気がしていた。
 僕が衣真くんに告白しない理由がなくなってきた。

 わしわしと伸ばしかけの髪をかき回す。もうちょっと伸びたら、結べるようになったら、金髪に染めて衣真くんがそれを気に入ってくれたら……。
 衣真くんに告白しない理由をこじつけて、「でも衣真くんはあんなに綺麗なんだから、隣に立つなら素敵でいなくては」って、自分に言い訳ばかりしている。

 ある日電車でハーフアップの男性を見かけた。僕も家に帰ってやってみたら、赤ちゃんが髪を結んだときみたいなちょびっとしたひとつ結びができた。
 鏡を覗く。髪の上半分がまとまって、ようやく僕の髪型はおしゃれに見えるようになった。
 もう言い逃れはできない、でも、こんなちびちびのひとつ結びじゃ恥ずかしいから、あと2センチだけ……。

 そうして、僕のタイムリミットは設定された。
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