上 下
26 / 108
第一部 ご飯パトロン編

26. 流血沙汰!?

しおりを挟む
 柴田がエコバッグから食材を取り出して仕分けしていたとき、ドアベルが鳴った。インターホンで返事をする。

「すみませーん、さっきの浅井ですけど、ちょっとティッシュ箱でもらえたりします?」

 なぜか鼻声の、さっきの男性だった。柘植野さんのお友達だと思っていたけど、柘植野さんの家にはティッシュがなかったのだろうか?
 はーい、と返事をして、未開封のティッシュ箱を持って玄関を開けた。

「すいません、鼻血出ちゃって」
「あ……いえ、大丈夫ですか……?」

 一応返事はしたものの、柴田は混乱していた。
 鼻血はたまたま出ることもあるけど、それなら柘植野さんにティッシュをもらえばいいわけで……。

 流血沙汰!? 柘植野さんはこの人が家に来たのを嫌がってる様子だったし!?

「柘植野さんに何かあったんですか!?」
「あー、いや、あいつはピンピンしてるよ。ちょっと喧嘩はしたけど」
「喧嘩!?」

 柴田は、柘植野がこの体格のいい男に殴られるシーンを想像して青ざめた。

「いやいや、口論ね。たまたま廊下で鼻血が出てきたけど、この鼻血と喧嘩は無関係。でも柘植野が怒ってティッシュくれなかったから、申し訳ない、柴田くんにお願いした次第で」
「……そうですか。あ、袋使ってください」

 柴田はさっさと浅井を追い返したかった。

 柘植野さんが無事か、確認しなければ。

 ゴミ袋を渡せば帰るかと思ったが、浅井はまだ玄関先に居座っている。

「あ、袋ありがとね。悪いけどこのティッシュ、箱ごともらっていい?」
「大丈夫です。……そうだ、連絡先交換してもらっていいですか?」

 柴田の頭の中では想像が悪い方向に走り続け、もう柘植野は意識不明の重体という設定になっていた。
 柘植野の意識が戻らない中でも、この男の素性すじょうを特定できる情報をゲットしておかなければ。そこで柴田が咄嗟とっさに思いついたのが連絡先だった。

「連絡先? いいけど。なんで? ナンパは嬉しいけどおれ彼氏いるからさ~」
「えーっと……」
「あ、恋愛相談?」
「そうです!! そうなんです!! 柘植野さんのお友達に、ぜひ!!」

 柴田はウソをつくときに力む癖があり、全力で肯定した。

「柘植野も隅に置けんなぁ~。いいよ。スマホ持ってきて」

 トークアプリの名義は「浅井康介」だから「浅井」と名乗っているのは偽名ではない。
 柴田はそれだけ確認して、「また連絡します」とせわしなく浅井を追い返した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『別れても好きな人』 

設樂理沙
ライト文芸
 大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。  夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。  ほんとうは別れたくなどなかった。  この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には  どうしようもないことがあるのだ。  自分で選択できないことがある。  悲しいけれど……。   ―――――――――――――――――――――――――――――――――  登場人物紹介 戸田貴理子   40才 戸田正義    44才 青木誠二    28才 嘉島優子    33才  小田聖也    35才 2024.4.11 ―― プロット作成日 💛イラストはAI生成自作画像

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【完結】四季のごちそう、たらふくおあげんせ

秋月一花
ライト文芸
田舎に住んでいる七十代の高橋恵子と、夫を亡くして田舎に帰ってきたシングルマザー、青柳美咲。 恵子は料理をするのが好きで、たまに美咲や彼女の娘である芽衣にごちそうをしていた。 四季のごちそうと、その料理を楽しむほのぼのストーリー……のつもり! ※方言使っています ※田舎料理です

極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。 あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。 そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。 翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。 しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。 ********** ●早瀬 果歩(はやせ かほ) 25歳、OL 元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。 ●逢見 翔(おうみ しょう) 28歳、パイロット 世界を飛び回るエリートパイロット。 ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。 翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……? ●航(わたる) 1歳半 果歩と翔の息子。飛行機が好き。 ※表記年齢は初登場です ********** webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です! 完結しました!

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

処理中です...