[完結]禁断の愛と嫉妬

桃源華

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第13話: 胸のざわめき

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アスクの誕生日が近づき、
ロバートは父への贈り物を
選ぶために町へ出かけた。
今回は久しぶりに会う
従姉妹のエリカも一緒だ。
エリカは快活で、
ロバートにとっては
気楽に話せる
大切な存在だった。

「ロバート、
どんな贈り物にするの？
アスク伯父様には
立派な剣が似合いそうね！」
エリカが楽しそうに言った。

ロバートは笑って、
「父にはすでに
たくさんの剣があるから、
もっと実用的なものが
いいかなと思って
いるんだよ」と答えた。

「そうね…なら、
豪華なマントとか？
伯父様はいつも
立派な装いを
されているし、
似合うはずよ」

「それはいい
アイディアだ。
エリカ、さすがだね」と、
ロバートは
感心したように頷いた。

二人が楽しげに
話していると、
ふと街角でマリーと
ばったり会った。
マリーは
思わぬ再会に驚き、
瞬間的にロバートと
エリカに視線を
向けたが、何も言わずに
立ち止まった。

「マリー…？」
ロバートが
少し動揺しながら
声をかけた。

マリーは微笑み、
「ロバート様、
お買い物ですか？
こちらは
どなたでしょう？」
と、エリカに目をやった。

エリカはにっこりと笑い、
「初めまして、
私はエリカです。
ロバートの従姉妹なんです」
と名乗った。

ロバートが
マリーの視線に気づいて、
「エリカは
父の誕生日会に
招かれていて、
一緒に贈り物を
選んでいるんだ」
と説明した。

「そうでしたのね。
アスク様の誕生日会…
それは
おめでたいことですわ」
と、マリーは
少し微笑みながら応えたが、
どこかぎこちなさが
感じられた。

エリカはそんな
マリーの様子に気づき、
「マリーさんもロバートの
お知り合いなの？」と聞いた。

「はい、
以前より少しお世話に
なっております」
と、マリーは控えめに
答えた。

エリカは興味深げに、
「そうなのね！
では、今度お茶でも
ご一緒にいかがかしら？
私はロバートの
仲の良い友人に会えるの
が楽しみなの」と言った。

「ありがとうございます。
でも…」
マリーは微妙な表情で
言葉を濁しながら
ロバートを見た。

ロバートは
少し躊躇いを見せ、
「マリー、
もし君が都合が良ければ、
エリカと一緒に
食事でもどうだい？」
と提案した。

しかし
マリーは首を軽く横に振り、
「お気持ちは嬉しいのですが、
今日は予定がありまして…
またの機会にさせてください」
と、やんわりと断った。

エリカが少し不思議そうに、
「あら、そうなの？
またお会いできる日を
楽しみにしているわね」
と言った。

ロバートは気まずさを
感じながらも、
「…そうか。
分かったよ、マリー」
とだけ答えた。

マリーはロバートの態度に
何か違和感を感じたものの、
「それでは、また
お目にかかれますことを」
と静かに一礼し、
立ち去ろうとした。

だがその瞬間、
エリカが
何か気づいたように、
「あら、ロバート。
もしかしてマリーさんが
少し特別な存在なのかしら？」
と微笑みを浮かべて
からかうように聞いた。

ロバートは一瞬動揺し、
「いや、
特別かどうかは…
その…」と口ごもった。

その反応に、
マリーの顔が一瞬曇ったが、
何も言わずに微笑を保ち続け、
「お気遣いなく。
私はただの知人に
過ぎませんから」
とあっさりと言った。

エリカはそれを聞いて、
「まあ、謙虚な方ね！
でもロバート、
こんな素敵な女性が知人
だなんて、もったいないわね」
と、少し驚いたように言った。

マリーは微かに苦笑し、
「ありがとうございます、
エリカさん。
でも、本当に私は…」
と言いかけてから、一歩引いた。

ロバートはその様子に
心を乱されながらも、
「…マリー、
また改めて話せる
機会を作るよ」とだけ言った。

マリーはその言葉に、
少しはにかんだ笑顔を
浮かべながら、
「そうですね。
では、お二人とも
良いお買い物を」と、
控えめに挨拶をして
その場を去っていった。

彼女が去った後、
エリカはロバートを
じっと見つめ、
「ロバート、あなた、
もしかして…
あの方に対して
何か特別な感情が
あるんじゃない？」
と聞いた。

ロバートは少し複雑そうな
表情を浮かべ、
「それが…最近、
少し分からなくなって
いるんだ。
マリーが誠実かどうか、
自信が持てなくなってきて…」

エリカは驚いたように
眉をひそめ、
「そんなことを考えるなんて、
何があったの？
まさか誰かがあなたに
余計なことを吹き込んで
いるんじゃない？」

ロバートは
深いため息をつき、
「…正直に言えば、
イザベラがマリーに関して
いろいろと忠告して
くれているんだ。
でも、どうしても
彼女の言葉を信じ切れない
部分もあって…」

エリカは納得がいかない
様子で、
「ロバート、それは
あなたの心が決めることよ。
他人の言葉に惑わされて、
自分の感情を見失って
しまうのはもったいないわ」
と優しく忠告した。

ロバートは
少し考え込んだ様子で、
「そうかもしれない。
でも、僕にはまだ確信が
持てないんだ」と言った。

エリカはそんな彼に
温かく微笑んで、
「ロバート、答えを出すのは
急がなくていいの。
もしマリーさんがあなたに
とって大切な人なら、
信じる心を持ち続けることが
必要なのよ」と優しく
アドバイスした。

ロバートはその言葉に
少し救われた気がして、
エリカに向かって微笑んだ。
「ありがとう、エリカ。
君のおかげで
少し冷静になれたよ」

エリカも微笑みを返し、
「伯父様のための贈り物を
選ぶことに集中しましょう。
ロバート、時には自分の心を
信じることが、誰よりも大事よ」
と励ました。

ロバートはエリカの言葉に頷き、
再びアスクへの贈り物選びに
集中することを決意したが、
その心の中にはまだ微かな
疑念がくすぶっていたのだった。

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