夜伽聖女と呪われた王子たち

藤原いつか

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第六章

月の雫②

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「――信じる。まだ何か隠しているその心も含めて、ぜんぶ信じて受け容れる。だから何かあったらその時は共倒れだってこと、忘れないで」
「…シンシア」

 シンシアからの答えに、セレナは泣き出しそうな思いを堪えて笑った。
 それからセレナがシンシアに勢いよく抱きつく。セレナの膝の上のミルヒが膝の上から転がって不満の声を上げた。だけどセレナは構わずシンシアの首に腕をまわして力いっぱい抱き締める。

 咄嗟にセレナの体を受けとめるも、その華奢な体躯と柔らかさにシンシアは内心驚いた。表情かおには出さずそっと。
 掠める甘い香りはセントポーリアとはまた別のもの。
 おそらく年上だろうセレナの背丈は殆ど自分と変わらない。なのにその体は明らかに自分とは違う。はじめてそれに、気が付いた。
 心では必死に抗ってきた自分が男であるということを、他人の体に触れて今はじめて自覚した。

「ありがとう、シンシア」
「…それはまだ、はやいんじゃないの…」

 そっと、さりげなく。気付かれないくらいの丁寧さで、シンシアはセレナの体を自分から引き剥がす。
 どうしてだかは分らない。同じものは返せなかった。
 本当に自分が女だったら、抱き締め返すことくらい造作もないはずなのに。

 セレナは自分を女だと思っている。だからこうして何の躊躇いもなく触れてくるのだ。
 その信頼を裏切る自分に疾しさが疼く。
 彼女の本心を疑っておいて、自分はまだ彼女に明かせていない秘密がある。
 自分にセレナを問い質す資格など本当はないのだ。

 ようやく落ち着いた鼓動がまた僅かにはやり出し、シンシアはセレナの顔を見れなかった。
 そんな自分には気づかずに、セレナはどこか安心しきった顔で自分の顔を覗き込む。

「さっそくこの花について知っていることを教えてほしいの。この花が浄化の花といわれているなら、それなりの理由や根拠があると思うんだけど…」
「…セントポーリアの花に具体的な浄化の力なんて確認されていない。…だけどそれは、おそらくそれを扱える存在がこれまで居なかったからだと思う。ただしく使う、術があれば…確かに、可能性はあるのかもしれない」
「…聖女か、女神…?」
「…今は。聖女の力は当てにできない」
「それなら、女神の加護は? 女神の加護も穢れを払えるって聞いた。女神の加護っていうのは、具体的にどういうことなの?」
「女神の加護は、王族の公式行事や神事でのみ付与される特別なものだと聞いている。女神の加護を受けた剣は確かに魔のモノや瘴気に太刀打ちできる存在だよ。だけどその方法を知っているのは王族と位の高い神官だけ」
「…王族」

 シンシアの言葉にはっとセレナは距離を空けた先に居るアレスを振り返る。
 ミルヒを預かっておくという役目を放棄したアレスは、人工的な日向で寝転がるミルヒを捕まえにくる素振りもなく、ただこちらの様子には注視していた。
 なのでセレナの視線にすぐに気付き腰を上げて近づいてくる。

「…なんだ。話は済んだのか」
「言いたいことはいろいろあるけど、シンシアと話はできた。シンシアも、協力してくれるって」
「…ほぅ…」
 
 セレナの報告にアレスは意味ありげな視線をシンシアに向け、それを受けたシンシアは決まり悪そうに視線を逸らす。
 すべて見ていたであろうアレスの、その物言いたげな。今は何も訊かないで欲しいし訊かれても答える気はない。
 アレスもそれを追及する気はなかった。ふたりの様子を見ればある程度の予測はつく。
 肝心な部分の秘密は互いに明かせていないのだと。
 ならば自分もその立ち位置を守るまでだ。

「で、俺に何を訊きたい」
「女神の加護について。王族のひとなら知ってるって」
「…なるほど」

 言ってアレスは自分の腰元に携えていた剣をとり、ふたりの前でそれを地面についた。
 僅かな装飾が日の光に煌めいて、セレナとシンシアは思わず息を呑む。
 美しいものはそれだけで魔力を宿すとされている。だけどそれとは明らかに異なる異質な輝きだった。

「確かにこれにも、“女神の加護”が施されている。魔の森の討伐に赴く騎士の剣には、ごく一部のみだが“女神の加護”が与えられる。瘴気を払う力があるのも確かだ。ただその方法は、俺も実際に見たことはない。神官長と立会人の王族のみで行われる儀式だからだ」
「じゃあアレスもどうやって加護を受けるのかは知らないってこと?」

 明らかに落胆の色を見せるセレナにアレスはむっと顔をひきつらせ、不満顔で説明を続けた。
 
「立ち会ったことはないが、その内容は知らされている。ただ王子としての秘匿事項だ。そう易々と口にできるものではない」
「今それをもったいぶっても仕方ないでしょう。協力してくれるって言ったんだから、教えて。どうするの」
「おまえな…」

 全くの遠慮を見せないセレナにアレスは頭を抱えるも、確かにセレナの言うことも一理ある。
 ただディアナスの目の前で王家の秘匿事項をそうあっさりと部外者に話す兄ではありたくないと一応の誇りと見栄と理性が働いたまでだ。
 その内容は王族には等しく伝えれられているはずなのでディアナスも知ってはいるのだが、今ここに居るのはディアナスではなくシンシアだ。
 本当にまったく面倒くさい。
 だけど腹を括らなければ進まない。
 セレナの求めるものはアレス自身もまた向き合わねばならないものだからだ。

 ふっきれたように顔を上げたアレスの、赤い瞳にセレナが映る。
 セレナはもう自分から視線を逸らすことはない。

「儀式自体は単純だ。女神との間に立つ神官が、女神の代理を務める。大抵は神官長だ。必要なのは月の光を浴びた“聖水”と加護を受け取る“対象”のみ。聖水は対象を清めそして仲介の役割を持つ。神官が対象に口づけをし、女神の加護は与えられる」

 アレスの説明を聞いて、セレナは口を噤んで考え込む。
 たったそれだけ、と。思わず口を出そうになるのをなんとか堪えた。

 不可視の女神の加護にどれだけの効力があるのかはセレナには分からないが、アレスが言うのならそれは確かなのだろう。
 だけど心底不思議だった。
 女神の存在意義が未だセレナにはわからないのだ。

 本当に居るのなら。その力を分け与える慈悲の心があるのなら。
 すべて等しく救ってみせてほしい。
 そうしたらいくらでも信じられるのに。

 言葉を詰まらせるセレナの考えていることが、隣りのシンシアにも伝わったのだろう。
 状況を整理するように話を進める。

「月の光を浴びた聖水は用意できる。だけど神官は難しい。神殿に仕える神官はその殆どが王家の庇護下にあるから、そうそう私事では動かせない」
「神官じゃないと駄目なの…? つまりは、何か女神の代わりを務めるものが、あれば…」

 そこまで言って、はっと。
 全員の意識がひかれるように同じものへと吸い寄せられる。
 ミルヒが小さく鳴いた。いつの間にか花壇の周りで遊びながら。

「…セントポーリア」

 口にしたのはセレナだった。その名を冠する以上、何か意味を、意義を求めたのは。

 ──女神の化身。浄化の花。

「…やってみよう。駄目だったら他の方法を探せば良い」

 そしてそれを継いだのは、シンシアだった。
 すっと立ち上がりドレスの裾の埃を払うと、いつもの気品溢れるシンシアの顔がそこにあった。つられるようにセレナとアレスも立ち上がる。

「花を摘んでいこう。アルベルトには私から言っておく。とりあえず手に持てるだけ摘んで、それから裏庭の泉へ。そこも女神の加護の領域で、その水は聖水と呼ぶに相応しいはず」

 シンシアの声に従うように、セレナとアレスは水生花壇からセントポーリアの花を摘む。
 水が滴り床にいくつも滲みを作った。それが黒い痣のように、セレナの胸をざわつかせた。 

 ミルヒを抱いたシンシアに先導され肌寒い夜の庭へと出ると、不思議と腹の底から冷めていくような錯覚がする。静かな夜に響く足音と、時折子猫の鳴き声。
 そんな簡単なことではないと、たぶん誰もが思っている。
 だけど何もせずにはいられないのだ。

 丸い月が見下ろしていた。古来より月の光には魔力があるといわれている。
 だけどセレナ自身にはこれまでそういったものを感じたことはない。それは自分が異なる世界きら来た人間だから、ある意味当然なのかもしれない。
 ──でも。
 今のセレナはこの世界に、まったくの無関係な存在ではない。

――『この世界の人間として、体が馴染んだ、ということよ』

 その確証はまだない。だけど、もしも自分に、その恩恵があるのなら。
 女神がわたしを選んだというのなら――

 裏口から続く石造りの道の先に、その泉はあった。建物から僅かに離れた暗がりの中、月の姿をそのまま水面に映した泉が夜の光に瞬いていた。
 煉瓦と石で舗装された泉に最初セレナは驚いた。泉というと森の中の木々と緑に囲まれた水場というイメージがセレナには強い。
 人工的なその泉の色は透明で、底の敷石の隙間から小さな泡がたっていた。
 そこまで深さはない。普段は生活用水にと使われているらしい。

「泉に花を。聖水は清めと仲介。ミルヒは、」
「わたしにやらせて。言い出したのはわたしだから」

 ミルヒを抱いたままだったシンシアの行動を、セレナが先にその体で制する。花は既に泉に撒いた。
 シンシアがそのを丸くして、それから一瞬だけ思案した後に無言でセレナにミルヒを託す。ミルヒは小さく鳴いて、セレナの胸に大人しく抱かれ喉を鳴らした。

 その小さな体を抱えながら、セレナがそっと泉へと足を浸す。
 小さく水の撥ねる音が、静かな夜に波をたてた。
 靴を脱いだ素足に冬の水は冷たい。だけど今はあまりそれは感じなかった。
 それでも、体は震える。寒さでではない。
 言葉にできない緊張がそれぞれの胸の内でさざなむ。

 セレナはゆっくりと波紋を描きながら泉に浮かぶ月まで進んだ。
 泉の深さは膝よりも下。濡れた裾が水面に浮かべたセントポーリアの花を纏って、やがてセレナを囲むように咲いてゆく。

「…セレナに、魔力はあるの…?」
「…いや、そこまでは把握していない。だけど、あれは…何も持たない娘ではないはずだ」

 シンシアとアレスが僅かに距離をとりながらも声を潜めてセレナの動向を見守る。
 月の明かりが眩し過ぎて、セレナの姿が霞むほど。このまま何処かに連れ去られていかれそうだと錯覚するほどだ。
 だけどそれ以上近づくことははばかられた。
 ふたりは神聖な儀式を見守るような気持ちで、泉から少し離れた場所で神経を研ぎ澄ませる。

 そっとセレナが泉の水をひと掬いして、ミルヒの額に数滴を垂らす。流石にミルヒを泉に浸すには抵抗がある。だけど“対象”であるミルヒにも“聖水”は必要だ。
 ミルヒが不満そうな鳴き声を上げ、セレナはなだめるように背中をさする。

 崇める気持ちも伴わないのに、女神は果たして微笑むのか。
 分らない。信じる気持ちはおそらく足りない
 だからセレナが祈りを捧げたのは女神にではなかった。

 “聖水”の役割は清めと仲介。
 そっと、ミルヒの額に口づけをする。
 僅かに濡れたその白い毛並が、月の光に輝いていた。

 一瞬の間を置いて、時の止まった世界に何かが紛れ込んだ気配。
 それを感じたのはセレナとミルヒだけだった。
 ――花が。僅かに光を宿す。

 ぴくりと、ミルヒが体を強張らせる。セレナもそれに気付き腕の中のミルヒを覗き込んだ。
 アーモンド型の目が大きく見開かれ、まっすぐ月を見上げていた。
 まるで宝石のようなその瞳に月の色。ざわりと背筋が鳥肌立つ。

 風もないのに泉の水が揺らいだ。セントポーリアの花の甘い香り。波紋のように広がっていく。
 そしてミルヒの小さな体に月の雫が零れ落ちた。
 ミルヒの目が細められ、そして強張っていた体から力が抜けていき、その目にセレナを映した次の瞬間。

「…、」

 ミルヒがセレナの手に爪をたてた。

「セレナ!」

 腕が緩んだ一瞬の隙をついてミルヒはセレナの腕の中から抜け出て、そのまま泉に音をたてて零れ落ちる。ずぶ濡れになったミルヒを慌てて抱き上げたセレナに、なおも爪をたてようとするミルヒをシンシアが慌てて抱え込んだ。

「ミルヒ、どうしたの…!」
「おい、大丈夫か」

 アレスがセレナの腕を掴んで、泉からひきあげる。セレナは無言でアレスの腕にひかれながら、飛沫を上げて泉を這い出た。
 水を含んだ裾が重い。足に絡んで思うように歩けない。
 見かねたアレスがセレナを抱え上げる。セレナは咄嗟にその胸にしがみついた。どきりとしたの一瞬で、セレナのその顔色にアレスが眉を顰める。

「セレナ?」

 泉にはいる前とは様子の違うセレナに、シンシアが心配そうにその顔を覗き込む。
 セレナはようやく眩んでいた意識を手繰り寄せ、その青い瞳に笑って答えた。
 アレスを掴んだ手は、震えていた。
 
「大丈夫、ちょっと、寒さにやられたみたい。ミルヒもすぐに乾かしてあげて、風邪ひいちゃう」
「でも…」
「とりあえず今夜は引き上げだ。こいつも着替えが必要だろう」
「…っ、それなら私の、ドレスがある。すぐに届けるから部屋で待ってて」
 
 シンシアがミルヒを抱えながら先に建物へと戻っていく。 
 それを、見届けて。セレナがアレスの胸に体を預ける。
 体の芯からどっと力が抜けて、立ち上がることもできないセレナをアレスは黙って抱えて歩き出した。

「…ごめん、眠い、の…」
「…いい、休め。話はぜんぶ後で聞く」

 アレスの返事を意識半ばで聞きながら、セレナはゆっくりと意識を手離した。

 泉に浮かべたセントポーリアの花は、ひとつ残らず枯れていた。
 残骸だけがただ静かに、泉の水面を揺蕩っている。そこに月はもう居ない。


 修道院の来客用の部屋のベッドにそっとセレナを下ろしたアレスの視線が、眠りに落ちたその体を確認する。
 自分の胸にしがみついていた、その手の甲。ミルヒにひっかかれた痕が赤く滲んでいる。そっとその手をとり手当に悩んだ時、袖の隙間から覗く色に気が付いた。
 そこに見えたものに。
 アレスは無言で奥歯をきつく噛みしめる。

 愚か者は誰だったのか。
 アレスはこの時まで気付かなかった。
 守ることと守られることのその意味が、平等ではないことに。


 同じ頃、ずぶ濡れのミルヒをタオルで拭きながらシンシアはあることに気がついた。
 さんざん暴れたミルヒの機嫌はもう直ったようで、自分たちに付き合わせて冷たい思いまでさせたお詫び代わりにとシンシアが与えたミルクを行儀良く飲んでいる。
 その隙にと分厚いタオルでミルヒの体中を撫でまわし、乱れた毛並をくしで整えた。

「……ミルヒ…?」

 そこにあるのは、真っ白い毛並だけ。
 ミルヒがねだるようにシンシアの足元にすり寄って甘えた声を上げた。おかわりが欲しいのだろう、その様子は普段と何も変わらない。

 だけどその体に黒い痣はもうなかった。
 真っ白い毛色のただの子猫がそこに居るだけだった。






 ――運命の式日がくる。誰も彼もを巻き込みながら。



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