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番外SS

運命の糸 (ディアナス×セレナ×アレス)

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Web拍手に掲載していたディアナス×セレナ×アレスの3PSSです。
こちらは本編第八章の後半、アレス合流後のあたりのお話ですが本編とは切り離した番外編となっております。本編には通じません。
ご了承頂ける方で、それでもご興味のある方のみお進みください!
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 ――奪い合う立場だった。

 生まれた時からそういう風にできていた。
 だから自分でも意外だった。分け合っても良いとそう思えたのは。
 それはつまり、自分にもその余地があるということだから。


「…本当に…ボクに、反応してるんだね、この痣…」

 既に赤く染まっていたセレナの頬に、ディアナスはそっと手の平を寄せた。
 そこに黒い痣が吸い寄せられるように近寄ってくる。まるで意思を持っているかのように。

「…ぁ…!」
「…ッ」

 その痣が自分の手の平まで辿り着くのと同時に、目の前のセレナが声を上げて喉を震わせた。
 それから、もうひとり。苦しげに息を詰めている。

 自分から移った呪いの痣が、もとの持ち主に反応し、かつ欲情を煽る種となることを知ったのはつい先ほどだ。
 セレナが自らディアナスに打ち明けたのだ。だから過剰に触れないで、と。
 そんな残酷で甘い線引きに、大人しく自分が従う理由はなかった。

 そう言われたら触れたくなる。
 だから確かめたいと説き伏せて、彼女の欲を無理やり煽った。
 それからもうひとり、半ば無理やりこの舞台に引きずり込んで。

「…っ、ディアナス、いい加減、これを解け…!」
「駄目だよ、だってアレス兄様も以前、セレナに同じことをしたんでしょう? だから今度は、される番」

 荒い呼吸に憤りの滲む呻り声が自分に向けられる。
 腹違いの兄、アレスだ。
 その手は後ろ手にガウンの腰紐で縛られていて、身体の自由は奪われている。
 縛ったのはディアナスだ。

 以前兄弟会議の場で、アレスがルールを破りセレナに無理強いしたことは聞いていた。その時彼はセレナの自由を奪ったと。
 だからこの機にアレスにも同じ屈辱を与えようと思ったのだ。少しはされる側の気持ちに立つべきだという弟なりの配慮だ。
 残念ながら伝わっている様子はないけれど。


 アレスが風呂で剣を置きセレナに気をとられている隙に、魔法も手伝って思いの外あっさりとアレスは捕らわれた。
 流石に上手くいき過ぎてディアナスも心配になったくらいだ。いろいろと油断していたのだろう。そしてそのままベッドに放った。

 それから確認と称してセレナの肌を撫でまわしてまた暴いて煽ってさんざんに焦らして。
 その一通りを動けないアレスに見せつけて、またセレナが泣きながら最後にはそれを求めてきて。

 自分のものではなく兄のものをセレナに促した。
 最初戸惑い首を振っていたセレナだが、ディアナスがセレナを満たす気がないと分かると、躊躇いながらもアレスのものに自分から触れた。
 アレスの赤い瞳が困惑と期待と屈辱に燃えていた。
 だけどセレナの口づけにすべて押し潰された。
 抗議も恥辱も快楽に負けた瞬間。
 そしてセレナが自らアレスを受け容れた瞬間だった。
 そのすべてが本心ではなくても。

 それから苦しそうに屹立していた兄のものを、セレナの内に埋める手伝いをした。
 欲望に抗えずひとりでは立てなくなったセレナを抱えて脚を開いて、もう十分なくらいに濡れて滴らせて求めているそこに。

 それはアレスにとって罰なのか褒美なのか。その両方を自分が与えている優越がディアナスを一時満たす。
 痛む心も確かにあった。だけどいっそこのまま。セレナを抱き潰してしまいたいという醜悪な衝動がディアナスを突き動かしていたのも事実だった。
 終りの気配を感じ彼女を引き留める術を持たないディアナスの、不安と焦燥がそうさせた。

 彼女もまた欲に捕らわれるのだと知ったとき。
 だったら捕われたままでいてと、そう思ったのだ。


「…ッ、くそ、おまえ…っ、覚えておけよ、ディアナス……!」
「今言われても、こわくない」

 セレナの身体を這う痣が、その薄い腹の上を蠢いている。ディアナスではなくアレスの痣。
 きっとそこに、兄のものがあるのだろう。互いの欲をひきずり出し合いながら。

 向かい合うようにディアナスが、セレナの鼻先でそっと囁いた。

「動ける? セレナ」
「…っ、む、り…」
「でも動かないと、気持ち良くなれないよ」

 ディアナスがそれ以上手伝う気がないことを暗に示すと、途端にセレナの顔がまたくしゃりと歪む。
 もう殆ど快楽に塗り潰されたそれをディアナスはうっそりと見つめた。なんてそそる顔だろうと。
 風呂から上がり身支度をしきちんと収められた自分のものが、ズボンの中でもう痛いくらいに強張っている。
 だけどそれを見せないようにしながら、肌を滑るようなぬるい愛撫だけを彼女に贈った。

 アレスに背を向けたままれさせたのは、この顔を見せたくなかったからだ。
 セレナは後ろからアレスのものを迎え入れて、支えきれない身体をディアナスに預け縋り付いている。
 ディアナスにとってはそれが堪らなく愛おしい。彼女の欲を弄ぶこの瞬間が。まだ見ぬ扉を開いたようだった。

「…でき、ない…ア、レス…っ」
「駄目だよ、アレス兄様は。動いちゃ駄目。それじゃあ意味がない」
「…っ」

 ディアナスの命令に、ふたり同時に息を呑む。
 このままでは苦しいのはアレスも同じだ。
 突き上げたくて堪らない衝動をなんとか抑えるのに精いっぱいで、セレナに声をかける余裕もない。
 身勝手な弟を非難し制する余裕も。

 アレスからその先を与えられることは叶わないと悟り、セレナはただ自分の内で膨れる熱を持て余しディアナスの肩を必死に掴む。
 その涙目の懇願に、ディアナスは思ったより早々に折れた。その先が、ディアナスは見たいのだ。

「仕方ないな、じゃあ少しだけ…手伝ってあげる」

 分かり易くおおげさな溜息を吐いて、ディアナスがセレナの身体を抱きすくめる。
 それから自分の首にセレナの手を回させて、自分に体重を預けさせ。ぐっと腰を抱き寄せたその手が今度はセレナの体を僅かに引き上げた。
 ずるりと、アレスのものが抜けきる前に、もう一度埋め込む。
 ぐちゅりと音とたてながら、先ほどより更に深く。セレナ自身の体重で奥まで押し込められた。

「…っぁ、あぁ…!」
「…ッ、く、」

 涙に濡れるセレナの瞳が、自身を貫く快楽の杭に大きく見開かれる。
 その背後ではアレスが同じ快楽に歯を食いしばっていた。

 最初を促してやれば、後はもう。ディアナスを支えにセレナは自ら腰を揺らし始めた。
 それを見計らって唇を重ねる。快楽を呑み込む不慣れな律動が、許容外の人数を乗せたベッドを揺らした。卑猥な水音を纏って。

「…、ゃ、ぁ、んん…っ」
「…可愛いなぁ、また、気持ちよさそうな声を出して…」

 互いの唾液が口の端から溢れてセレナの声が口づけの合間に漏れる。溺れるように、喘ぎながら。
 わざと自分のものを流し込みながら、その舌先を絡め取り、ディアナスは片時も目を離さない。
 それからそっとその耳元で囁く。甘い毒の吐息のように。

「気持ち良いの? アレス兄様の」
「…っ!」

 目の前で、ふたり同時に体をびくりと震わせた。
 セレナがアレスのものを締め付けて、アレスが息を詰めたのだろう。
 セレナの動きがいったん止んで、アレスがその下で腰を震わせる。もどかしそうに、物足りなさそうに。
 それに応えたのはセレナから。
 ディアナスに縋りながらもアレスのものを求めてやまないその姿は、堪らなくいやらしく煽情的だ。
 張り詰めた自身が痛くて思わず顔を歪めるほど。

 ふたりのその心の内側を占める感情が、すべてない交ぜになっていく様をディアナスは見つめていた。
 ふたりのなか。後悔も贖罪も嫌悪も罪悪も葛藤も僅かな思慕も。ぜんぶひとつになれば良い。
 そうすれば後は体が求めるだけになる。
 心も体も、満たすことを許せるように。
 そうして離れられないように。
 そこに自分の、余地が生まれるように。

「…ぁ、も、…っ、自分、じゃ…っ」
「…足りない?」
「…っ、もっと、…っ」

 そこまで出かかった言葉の先を躊躇するセレナの様子と、まだ理性を捨てきれていない諦めの悪さにディアナスが笑う。
 はやくぜんぶ、捨ててしまえば良いのに。そうして何も、考えられなくなって。自分だけを求めてくれたら良いのに。

「…言って、セレナ。言えたら全部、満たしてあげる」
「…っ」

 また意地悪く笑ってセレナの晒したくない本心をわざと暴き立てるディアナスに、セレナが観念するのは早かった。
 募る疼きと待つ快楽の果てに、正常な判断力も意識もとっくに薄れて途切れかけていた、残りの僅か。
 理性の最後の糸をディアナスが断つ。指先だけでセレナを煽って。

「…激しいのが、良い…っ、い、いっぱい、突いて、ほし、い…っ」

 その言葉を聞き届けて。ディアナスがアレスの拘束を解いた。
 予想外のセレナの懇願と言葉に煽られ痺れて膨れて達しそうになるのを堪えていたアレスは、その突然の解放に驚きそのままベッドに背中から倒れ込んで呻く。
 それから体を起こしてディアナスを恨めしそうに睨み。まだ自分の上に繋がったままのセレナの後ろ姿に奥歯を噛んだ。
 応えるディアナスの青い瞳が、身勝手な嫉妬と独占欲、そして劣情に揺れていた。

「セレナの望みを、叶えてあげて」

 舌打ちしそうになるのをなんとか堪えて、アレスは体を繋げたままセレナを後ろから抱きすくめた。
 セレナが思わず声を上げるも、抵抗は見せずとっさにその腕にしがみつく。
 体勢を変えシーツに四つん這いになったセレナに改めて腰を押し付けると、セレナの内側が絡みつくようにうねって蜜を溢れさせる。
 その感触に、温かさに。思わずアレスは息を吐く。知らず自分の内から零れたもの。

 セレナとまた体を繋げることができるなど、まるで想像だにしなかったその光景は、奇しくもあの日と同じもの。
 だけど違うのは、あの日は一切自分を受け容れることのなかったセレナの体が、今度は自分を求めているということだった。

 今はまだ。体だけでもいいと、そう思えた。
 そうして細い腰を掴んで、自ら打ち付ける。
 最初は加減するように緩い抽送だったそれが、セレナの内に応えるように激しさを増した。

「…ごめん、セレナ…ボクも、我慢できない…」

 欲に呑まれた声でそれだけ告げて、ディアナスがすでに固く膨れた自身を取り出す。
 それを顔を上げたセレナの鼻先に差し出して、だけど今度は命令はしなかった。
 殆ど反射的に手を伸ばしたのはセレナだった。

 セレナの身体を彷徨う痣が、触れようとする部分へと欲情を導く。心だけを置いてけぼりにして。
 ディアナスのものを、唾液を絡めて舐めて濡らして握りしめて。
 それから咥内に収めるまで、アレスは動きを止めてそれを見届けていた。
 荒い呼吸とセレナの絡める水音だけが部屋に響く。

「…っ、あ、セレ、ナ…!」

 ディアナスの喘ぎにアレスが動きを再開して、その振動がセレナを伝ってディアナスにも伝わった。
 その綺麗な顔が歪められ、ようやく快楽に耽ることのできる開放感に思わず自ら腰を揺らす。
 セレナの頭の後ろにまわした手の平に、汗ばむ肌とさらりと流れる髪の感触。
 唯一その声が聞こえないことだけが惜しい。自分のものを押し込めているせいだけれど。

 途中何度か加減しながら口から引き抜いて呼吸を促す。
 だけどその唇に自身を押し付けると、躊躇なくセレナは再び呑み込む。本能のままに。

「…っ、く、も…う、」
「あぁ、駄目、ボクも…っ」

 言葉でそれを伝えることができたのは、それが可能なふたりだけだった。
 だけどセレナの身体も同じものを、正しくふたりに伝えて震わせる。

 やがてそれぞれが体を心を震わせて、一番奥の深いところで最後を迎えた。
 高く、白く、弾けるように眩んで、胸が押し潰されそうになりながら。
 白くセレナを染め上げて、その内側がいっぱいになった。


 夢を見ているかのような、瞬間だった。
 

 ――繋ぐ意味を考えている。
 分かたれた別々の心と体が、ひとつに繋がることの意味。

 運命なんて信じていない。それでも。
 その糸があるのなら、必死にその糸の先を手繰り寄せるから。

 何度も、何度でも。
 たったひとりに、辿り着くまで。


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