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エピローグ
旅立ち
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――あれからどうなったのかというと。
とりあえずセレナは今、筆をとっている。
書き出しはこうだ。
『――旅に出ます。探さないでください』
そこまで書いて手がとまる。捻りが無さ過ぎるというかむしろこの世界の彼らにはまったく通じない気がした。
勿論半分冗談だけれどそこには育った世界の大きな隔たりがある。
書き直そうかと悩む視界の片隅から伸びた褐色の手が目の前の紙を攫っていく。
「…なんですか? これ」
「ゼノス…!」
しまった一番見られたくない相手に見られてしまった。
思わず固まり言葉に詰まるセレナに、ゼノスは柔らかな微笑みを向ける。
笑っているのに笑っていないというやつだ。紙が返ってくる気配はない。
思わず視線を彷徨わせるセレナに咄嗟の言い訳も思い浮かばなかった。
「…セレナ。兄上が呼んでいますよ、おれもお供します。この件はあとでゆっくり聞きましょうか」
「……はい」
くしゃりと丸められた紙がゼノスの手の中で跡形もなく消えた。
ペンを置いて立ち上がるセレナにゼノスがその手を差し出す。
セレナは一瞬だけ躊躇して、だけどその手をとって部屋を後にした。
この部屋とももう少しでお別れかと思うと少し感慨深かった。
***
「来たね、セレナ。ゼノスもご苦労。少し待っていて、今手を空ける」
執務室で机に座ったまま人に囲まれていたイリオスが、扉を開けたセレナの姿に目だけで笑い、部屋の中央にある来客用ソファへと促した。
若干面食らいながらも言われた通りにソファに腰かけるセレナの前にお茶が差し出される。
部屋まで案内してくれたゼノスは座ることはせずセレナの見える位置で窓の外に視線を向けていた。天気でも気になるのだろうか。
給仕とイリオスの侍従がイリオスの一言で黙って部屋を退室し、部屋にはようやく三人だけになる。
イリオスの執務室に来るのは初めてだし、この城で王子たち…というか、呪いの関係者以外に会うのも初めてだった。なんとなくそわそわと落ち着かない。
いくつかの書類を持ったままイリオスがセレナの前まで来て正面の椅子に腰かけた。
だけどやはりゼノスは立ったままだ。しきりに窓の外を気にしている。話に加わる様子もない。
おそらくこれから話す内容は王子たちの間では既に周知の事実なのだろう。つまり自分が一番最後というわけだ。
それからイリオスが切り出したのは、予定されていた戴冠式がとりやめになったというものがまずはじめだった。
「なにせ次期国王のはずだった“ヘルメス”は、いなくなってしまったからね」
“魔の森”の暴動から一月ほどが過ぎていた。
その間の国の情報をセレナはほとんど知らされていない。今この場で初めてだ。
王子たちとは何度か顔を合わせたり話をしたりはしていたけれど、ひとまずセレナの体調回復が優先だったので、あえて避けられていたのかもしれない。
王家の迅速な対応のおかげで死傷者はほぼいなかった。襲われた近隣の村の復興には王家も手を貸している。
何より大きな功績は、森が“魔の森”ではなくなったことだ。
森から溢れる瘴気もなくなり魔のモノも姿を消し、森が浄化されたのだ。
暫くは立ち入り禁止となっているが、国民の間でははやくも聖なる森として噂になっている。
そして魔の森の暴動鎮圧と浄化にあたり、戦線に出ていた第三王子が犠牲となった。と、国民にはそう知らされている。
譲位前の訃報に国は一時不穏に翳ったけれど、残る王子たちがその心を鎮めた。
第三王子ヘルメスの葬儀は王家においてのみの密葬となり現状では密かに語られるのみだ。まるで幻のように現れて消えた第三王子の存在を。
「王位は現状そのまま。暫くは陛下が継続して国王を務められる」
つまり。次期国王の譲位については白紙に戻ったということだ。
「…陛下、は…その、大丈夫なの? 今回イリオス達が、かなり勝手なことしちゃったんでしょう? わたしの為に」
森の結果を解いたことや生命の樹と果実を森に返したこと。これは王子たちの独断であったと聞いている。
国がこれまで与えられていた女神の加護や恩恵をなくしてこの国事態はどうなるのだろう。今のところ大きな混乱はないようだけれど。
「大丈夫さ。すべてもとに戻っただけ。後は僕たちがなんとかするしかないだろう。その覚悟くらいは皆ある」
そう呟いたイリオスの、後半はそっと目を細めて。自分とここには居ない者たちへと言い聞かせるような響きを孕んでいた。
随分やさしい顔で笑うようになった気がする。彼もようやく肩の荷が下りたのだろうか。代わりにまたいろいろと背負っているようだけれど。
それでもそれが彼の望んで選んだ道なら、それで良かったのだと思う。
おそらく国は彼が継ぐ気がした。なんとなくだけれど。
「さて、では君の話をしようか」
その顔がセレナに向けられる。先ほどまでとは異なり相変わらずセレナに向ける笑みはどこか食えないものなのだけれど。
「…えっと、わたしの話、というのは…」
「ひとまず体調は?」
「げ、元気だよ。もうすっかり。痛みも不調もないし、食欲もあるし、夜もよく眠れてる」
「そう、それは良かった」
行儀悪く膝に肘をつきながら、イリオスがその鋭い藍色の瞳をセレナに向ける。
逸らしたら余計に分が悪いとわかっていても、やましいことがある以上その瞳をまっすぐ見返すことはできなかった。
何やら自分にとって良くない話であることには間違いない。こうなったらもう話題を切り替えるしかない。
「あ、あの、わたしもずっと訊きたかったんだけど…」
「…いいだろう。何?」
「…ブ、ブランは…今どうしてるの…?」
僅かに躊躇しながらセレナはその名前を口にする。
口にして良い名前なのかもわからない。その存在を知っているのはごく一部だ。
森で生きることを選んだブランはひとまず城に居るとは聞いていた。
だけど現状彼がどうなっているのかまでは聞けずにここまで来たのだ。
エレナは一度だけ部屋を訪問してくれた。そうして初めて自分たちの本当の立場を知った時は互いにとても驚いた。
募る話はあったけれど、時間は限られていて長くは話せなかった。
それでもまた会いましょうと手を握ってくれたことがセレナにはとても嬉しくて思わず泣いてしまったほどだ。
あれからエレナにも会えていない。もしかしたらそう会えない立場なのだろうかと思っている。
エレナは国を救った聖女だけれど自分はもはやただの異世界人だ。良くて客人程度だろう。
あれからブランとエレナはどうなったのだろう。どうせなら一緒の未来に繋がっていたら良いなと思う。
「…調度良い。その件は僕からも話すつもりだった。おそらくもうすぐ――」
イリオスが言った言葉に重なるように、部屋の扉がノックされる。
かと思えば部屋の主人であるイリオスが返事をする前に扉が勢いよく開けられた。
そしてほんの少しの間を置いてゆっくりと遠慮がちに足を踏み入れたのは、申し訳なさそうな顔をしたエレナだった。
背後の扉へと振り向きざまにその姿を確認したセレナの腰が思わず浮く。
「エレナ…!」
「…セレナ。あなたも呼ばれて来ていたのですね。お体はもう大丈夫なんですか…?」
「うん、もう、すっかり。エレナもイリオスに呼ばれてきたの?」
「いえ、私はついでと申しますか…」
「呼ばれたのはぼくだからね」
答えたエレナが困ったように苦笑いを浮かべるのと、そのすぐ前に突如人影が現れるのはほぼ同時だった。
セレナは突然の出来事に思わず声を上げて後ずさり体勢を崩す。転ぶかと思っていた衝撃は、いつの間にか近くまで来ていたゼノスによって受け止められていた。
「やっぱりいいなぁ、これ。すごく便利だ。もらって良い? イル」
「貸すのはこの城に居る間だけという約束だろう、ブラン」
そこに居たのは、まさに話題の人物。ブランシェスその人だった。
その手に握られているのは見覚えのある黒いヴェール。姿隠しのヴェールだ。
「驚かせてごめんねセレナ。久しぶり。元気そうで良かったよ」
悪びれもなく言ったブランが改めてセレナと向き直り、体勢を戻したセレナの目の前に身をかがめる。
そうして顔を除きこみ無意識に互いを確認した。
「…ブランこそ。すこぶる元気そうで良かった。元気過ぎて周りに迷惑かけていそうだけれど」
「言うねぇセレナ。少しはしゃぐぐらい良いだろう? ぼくらはもう自由なんだから」
おかしそうに笑うブランは確かにどこか吹っ切れたようにも見える。
「でも良かった、ちゃんと会えて。イリオスに頼んではいたけれど、仕事が忙しそうでぼくの相手すら後回しでね。まったくあの時どの口が離れたくないなどと言ったのやら」
「……ブラン」
「とにかくぼくとエレナは今日でお別れだから、きみにちゃんと挨拶しておきたかったんだ」
何気なしに言われたけれど。今日でお別れ、とは。
「…どういう意味? せっかく久しぶりに、会えたのに」
「ぼくももっとここに居たかったけれど…選ばれたのは、ぼくだけのようだからね。きちんと使命を全うしなくては」
――選ばれた。その言葉にセレナは思わず口を噤む。
その意味を無意識にでも知っていたからだ。
運命の果実の欠片を口にしたのはセレナとブランのふたりだった。残った果実は森に返された。
生命の樹には管理と継承者が必要だった。この国ではそれを王と呼んでいたけれど――実際は少し違うようだ。
そしてふたりの内選ばれたのが、ブランの方らしい。
セレナ自身も自分の身に殆ど変化がないことからなんとなく察してはいた。運よく命だけ繋いでもらった事になる。すべての真相は、分からないけれど。
「また、戻るってこと? あの森に」
「そうなるかな。別にあの森じゃなくたって良いんだ。ただしく森を管理する為だけならば、どこに居たって良い。だけど城はいまいちぼくには馴染みにくいから」
「…そう」
せっかくイリオスとも、ようやく兄弟として共に過ごせるはずだったのに。
そんなセレナの落とした声音にブランはくすりとまた笑う。
「良いんだよ、この一ヶ月はそれなりに満喫したし、ぼくは自分を王子だとは思っていないし。ふたりの時間は十分堪能したよ」
「…その言い方はやめてくれるかな、ブラン。君だってそのヴェールを使って大層自由に動き回っていたじゃないか。僕の事など目もくれずに」
「なんだ、構ってほしかったならそう言ってくれれば良かったのに」
「違う、いくらヴェールがあるからとはいえ迂闊に歩き回るなと、何度言っても君は」
「そういうことで、きみには挨拶しておきたかったんだ。晴れて自由だね、おめでとうセレナ。せっかくだから送ってくれる? 屋上にこっそり転移陣を用意しておいてもらったから」
「え、もう今すぐの話なの? エレナも?」
なんて慌ただしい。しかもふたり、ということは。まさかエレナも森に――
「私は、故郷の修道院に帰ろうと思ってます」
「え…?!」
実家に帰らせてもらいますってこと?
ブランと行くならまだ納得できるけれど、このタイミングでエレナまで居なくなる意味がわからない。
言葉を失い表情を失くすセレナに、エレナは困ったように笑ってそっとその手を握った。
「たまたま同じタイミングになってしまっただけなんです。以前からずっと思っていました。中途半端に故郷を出てきてしまったこと…ずっと心に蟠りとなって残っていました。一度戻って自分の立場と気持ちを整理して、またあの場所を出ることがあれば…今度こそ自分の意思と自分の足で。やり直したいと、そう思っただけなんです」
ゆっくりと言葉を紡ぎながらセレナを映すその瞳に迷いはない。もう決めてしまっているのだろう。何も言えずにセレナはただ頷くことしかできなかった。
「あなたは…これから、どうするんですか…?」
そっと。おそらく誰もが気になっていたそれを、エレナが問う。
セレナはまっすぐその瞳を見返しながら繋いでいた手に力を込めた。
突き刺さる視線。一番近くのゼノスと僅かに距離を置いた先のイリオスのもの。
「…わたしは…」
――わたしは。
***
城の屋上には大きな魔法陣があった。
そこでブランとエレナのそれぞれを見送りセレナは小さく息をつく。
ブランは森へ。エレナは後から合流した侍女と共に故郷である修道院へと帰っていった。
魔法陣は使うと魔力をものすごく消費するのでまた蓄えられるまで使用できないものらしい。
彼らに会いたければ自力で行けば良いとは分かっている。今生の別れというわけでもない。
それでも寂しさは拭えなかった。
「…帰ってきたようですね」
ぽつりと。先ほどからずっと空を見上げていたゼノスが小さく零した。ゼノスが気にしていたのは天気ではなかったらしい。
ゼノスの呟きにつられるようにセレナもイリオスもその視線の先を仰ぐ。視線の向こうは雲ひとつない晴天だった。絶好の旅立ち日和だ。
青い空にやがて黒い点が浮かびそれが段々と近づいてくる。
次第に大きく鳴る羽音。うねる風によろけるセレナの体をゼノスが腕の中に抱き寄せて庇った。ゼノスがそっと発動させた風除けの魔法がふたりを包む。
やがて大きな地鳴りと共にその影が屋上の魔法陣の上に降り立った。
あらかじめここが着地点だったのか、たまたまなのか。獣の呻り声とそれを宥める人の声。
そこにはおよそ空想上の生き物でしかありえなかった生き物が居た。
――どらごん、だ。ドラゴン。
その迫力に呆けて思わずぽかんと口を開けるセレナをゼノスがくすりと笑って見下ろしていた。その琥珀色の瞳が細められる。
広げていた翠色の翼を畳み同じ色の鱗の背中から降りてきたのは見覚えのある人物だった。
数日前にセレナの傍を離れて不在にしていた人物。その目的はセレナの望みを叶える為でもあったのだけれど。
黒髪が風に翻り、ふと振り返ったその碧の瞳が大きく見開かれる。
「……! ノヴァ…?!」
「セレナ…! どうして、ここに」
着地地点にセレナが居たことは想定外のようだった。
そしてそこにゼノスとイリオスが居ることも。
「おかえり、ノヴァ。予定よりはやかったね」
「……イリオス様」
どこか気まずそうな表情を滲ませるも、ノヴァは視線を逸らさない。
それからようやくセレナが状況を理解する。
自分たちの計画が、既にバレていたことを。
***
「――城を出る? セレナが?」
隣りを歩く兄の口から出た予想外の言葉にディアナスは極めて間抜けな声を上げた。
本当に想像すらしていなかったのだ。驚くのも無理はない。
だけどアレスは至って真面目にそれどころが至極不機嫌そうに話を続ける。
「ああ、おそらく不在のノヴァが戻り次第決行するつもりらしい。あれでバレていないと思っているから不思議でならない」
「ちょっと待って、本当に? まさか、ノヴァとふたりで出て行く気ってこと? ここを、ふたりで」
「そこを強調するな、腹が立つ。それをこれから問い質すんだ」
「え、この呼び出しってその為ってこと?」
「そうだ。ノヴァが戻ったとさっきイリオスから蝶伝に報告があった。おまえも連れてくるように、とな」
会話を続けながらもふたりは長い廊下を早足で駆け抜ける。傍目には行儀の悪いそれも、ここは王子専用の通路なので誰に見咎められることもない。
目的地は普段は殆ど使用することのない大型転移陣のある屋上だ。今日は見事な快晴なのでそこから見る景色はさぞかし気分が良いだろう。
自分たちの心はまったく全然晴れないけれど。
この一ヶ月。
絶対安静のセレナの部屋へ王子たちは足蹴く通い詰めた。
最初はセレナの身を案じて多少の気遣いを見せたけれど、ディアナスなどは隙あらば理由を作って部屋を訪問していたくらいだ。
城内も城外も――もっといえば国内も国外も情況は目まぐるしく変わっていった。
表では“第三王子の逝去”から春の宴が中止になったことがディアナスには残念でならなかった。
王族の訃報なので仕方のないことは重々承知だけれど、セレナと行く約束をしていたのに。
公式行事や祝事は吉日を占い日を選ぶ。延期という形はとれなかったのもやはり仕方のないことなのだけれど。
「…やっぱりセレナは、ノヴァを選んだってこと…?」
そんなディアナスがずっと不安に思っていたことのひとつがそれだ。
ノヴァ。ヘルメスの名を捨てその身からは王家の血が失われたという、かつての自分の兄弟。
もう王家の血に連なる者ではない彼だが、彼が城に居る理由は以前と同様“セレナの世話役”だった。
それにディアナスは不安と不満を抱きながらも同時に安堵していたのも事実だった。
セレナの世話役。つまりセレナとノヴァはあくまで他人の関係であるということだ。
これがもしもセレナの恋人として、だったとしたら。そんなふたりがあんな近くで四六時中傍に居るのだとしたら。想像しただけで腹の底が熱くなる。
だけど彼がその名目で城に居る以上、まだ自分にも可能性はあるのだと安易に構えていた。
それでも一抹の不安に駆られ可能な限り部屋には顔を出すようにしていた。
連日訪問するディアナスをノヴァは毎回嫌な顔ひとつせず快く迎えてお茶を出してくれた。その余裕と気遣いが余計にディアナスの心を逆なでるのだけれど、ディアナスも体面ではなるべく冷静に穏便に振る舞ってきた。
でもだからこそ。こそこそふたりで逃げる算段をしていたなんて、全然まったく気づかなかった。
勝手であるとは承知でそれでも裏切られたような気分に顔を歪める。
そんなの絶対認められない。
「落ち着けディアナス。まだ決まったわけじゃない。それを今から確認しに行くんだ」
「アレス兄様だって身なりもそこそこに急いで来たくらい焦ってるんでしょう。髪濡れてる、水滴が撥ねるんだけど!」
「訓練中だったんだ仕方ないだろう! 汗を流してきただけ有難いと思え」
確かに汗臭いのも困るけれど身だしなみが中途半端というのもディアナス的には礼儀に欠ける。兄に向ってなんだけれど。
濡れた髪を乱雑にくくっているので長い赤毛の馬の尾が撥ねているようで少し間抜けだ。そう思ったら荒れていた心が僅かに落ち着いた。
「とにかく今日こそ、セレナの気持ちをはっきりさせる。一応今まで遠慮していたからな」
そうなのだ。
“夜伽聖女”でも“呪われた王子”でもなくなった自分たちの。
この関係の終着点は誰ひとり未だ見えずにいた。
***
「…一応、弁明させてもらうと。ちゃんと話す気だったよ、みんなに。何も言わずに出ていくなんてそんな心ないことしない。今まで散々お世話になってきた人たちに、そんなこと。…ただ、反対されるだろうなぁと思ってその時を先延ばしてたら、今日になっちゃっただけで」
「じゃあ本当に城を出るつもりなの、セレナ。ボクたちを、置いて…ボクたちの傍を離れるつもり? そんなの聞いてない、ひどいよセレナ」
全員が揃った屋上で、いつの間にか簡易的なテーブルと人数分の椅子とお茶が用意されそれぞれが着席した時。
もはや尋問にも似たこの場の空気に耐えかねて、真っ先に口を開いたのはセレナだった。その隣りにはノヴァが、向いの席にはゼノスが居る。
セレナの言葉に真っ先に感情を剥き出しにしたのはディアナスだ。アレスも傍目から見れば平静を装ってはいるが、その顔には言ってやりたい文句がありありと浮かんでいる。大変大人げない様子だ。
意外なほど冷静にお茶を啜っているのはゼノスとイリオスのふたりだけだった。
おそらく真っ先にセレナとノヴァの計画に気付いたであろうふたり。であれば手ぶらでこの場に臨むはずもない。
ノヴァはセレナ側なので沈黙に徹している。
「落ち着いて、ディア。質問は話を最後まで聞いてからだ。それで、セレナ。どうしてそういう結論に至ったのか、その経緯を僕らは知りたいのだけれど」
やはり兄弟の揃うこの場で一番の調整役はイリオスになるのだろう。まるで会議の議長のように義務的に問われてセレナは一瞬言葉に詰まる。
それからぐっと拳を握り、目の前のお茶をぐいと勢いよく飲み干した。視線が集まる中カップをソーサーに戻し息を吐く。
この一ヶ月の間に考えて考えて出した結論を、ひとつずつゆっくり言葉にする。
「ようやく、自分の責務から…“夜伽聖女”という役目から解放されて…もうなにも自分を縛るものはなくなって、気付いたの。自分の想像以上に未来とか自由が広がっているけれど、それを選びとる為の知識とか情報が、自分には圧倒的に足りないなって」
――この世界で生きていくと決めた。
だけど、誰とどこでどうやって生きていくのか。そんなこと全く想像もせずにここまで来てしまったのだ。
そこまで考える余裕なんて無かったのだけれど、いざこうして来てみると呆れるほどに自分は無力で無知だった。
だからまずは、知ることから始めようと思った。
この世界で自分に何ができるのか。もう何も持たない自分だからこそ、それは必要なことに思えた。
「ここに居たら、きっとみんなに頼って守られて、それもきっと悪くはないんだろうけど…」
そこまで言ってセレナは、ようやく吐き出すように微かに笑った。
俯きがちだった顔が上がり、一番に目が合ったのは真正面に座っていたゼノスの瞳。そこに自分の顔が映る。
それからゆっくりと視線を巡らせてひとりひとり。目を合わせてから言葉を続ける。
「まずはひとりで行けるところまで行ってみたい。もっと広い、遠くまで…この世界を見てみたい。誰かと生きるのはそれからで良いと思ったの。だって時間はこれからまだたくさんあるから。だからわたしは、城を出る」
きっぱりと言い切ったその目に、言葉に、胸に。迷いは微塵も感じられなかった。
揺れているのはその場に居るセレナの決意を受け止めきれていない者の心だけ。
高く青い空に風が舞い上がる。
「…と、思ってたんだけど…」
しかしその瞬後に、へなりとその威勢が情けなくも緩む。そっと隣りのノヴァを盗み見ながら。
「どうやら、ひとりでは結局、行けないみたいで…」
「…どういう、こと?」
「君自身の性質のせいだね」
不審に眉を顰めるディアナスの問いに答えたのはイリオスだった。
セレナは困ったように眉を下げて再びカップを手に取るも、先ほど景気づけに飲み干してしまったのでその中身は空だ。
それに気付いたノヴァがそっと自分の分を差し出してくれた。有難く受けとって口をつける。緊張し過ぎてひどく喉が渇いていた。
「異世界より召喚したセレナを“夜伽聖女”と呼んだのは、あくまで王家の呪いに都合の良い呼称の為。その性質は“受態”だ。セレナが生まれ持った資質と言って良い。良いものも悪いものもすべて受け容れて感化されてしまう。僕たちの呪いをそうして受け容れたように」
イリオスの口からノヴァからされた説明とまるで同じ言葉が並べられて、おそらく自分の身体のことは自分以外のところでは共通認識だったのだなとセレナが悟る。
と言ってもアレスとディアナスはいまいち呑み込めていないようだけれど。ちなみにセレナも最初よく分からなかった。
つまりは周囲にとても影響を受けやすい、ということらしい。至極簡単に言えばだけれど。
「誰かが傍で選別するか、最悪の場合は傾いた聖穢の気を調整する役が必要になる。ひとりではいろいろ、難しいだろうね」
そうなのだ、ひとりで生きていくと決意したのに結局。誰の力も頼らずに生きていく事は今の自分には難しいらしい。
自分の内に残った魔力に関してもノヴァに聞いてみたけれど、セレナの場合はやはり特殊で扱うにも観察と時間が必要だという結論。
それでもやはり、自分の望みは捨てられなかった。
生まれて初めて得た自由だから。望んだ世界だから。
セレナの気持ちを汲むように、隣りに居たノヴァが言葉を繋げる。
「なので、僕がついていくと言ったんです。僕なら彼女を守れます」
「なんで、だったら…!」
叫んだディアナスが勢いよく椅子を蹴る。
泣きそうにその綺麗な顔を歪めたまま、縋るように吐き出そうとした言葉は形には成らずに喉の奥で潰えた。
だったら、一層のこと。ずっと城に居れば良い。自分たちがきっと大事に守ってみせる。
それがかなわないならいっそ閉じ込めてしまいたい。彼女が望んだ自由を取り上げて、自分たちだけがいつでも会いに行けるように。
外の世界なんて知らなくて良い。傷ついて泣くことになるだけだ。だから、ここに居て。そうしてボクを安心させて。
――だけど、そんなこと。言えるはずがなかった。
自分たちが出会えたのも、そうして飛び出した外の世界だ。
あの気持ちを否定することは決してできない。セレナの気持ちを蔑ろにすることも。
黙り込んだディアナスが悔しそうに唇を噛んで拳をかたく握りしめる。
その青い瞳に滲む焦燥と喪失への恐怖。ままならない想いへの苛立ち。手に入らない憤り。自分だって選んで欲しいのに。
沈黙を破って言葉を発したのはゼノスだった。
「…それはつまり、彼でなくても良いということですよね」
それは確認というよりは、既に答えを知っている事の摺合せにも似た強い響きを孕んだ問いだった。
ノヴァの鋭い視線がその問いを受け止める。肯定はせずとも否定もしない。
それだけで充分だった。
「なら、おれも行きます」
至極、当然のように。
言い切ったそれは誰の同意をも求めるものではなかった。
それは勿論、当人であるセレナのものも。
「ゼ、ゼノス…! 本気? だって、ゼノスはこの国の王子さまなんだよ、そう簡単に城を離れられるわけ…」
「勿論本気ですよ、セレナ。それほど難しい事ではありません。城を離れる面目はなんとでも立ちます」
平然と言ってのけるゼノスにセレナは言葉を詰まらせる。本人の言う通りものすごく本気で言っているように見えるのだ。
一緒に行く。流石にその発想はなかった。
ノヴァの提案を了承したのはノヴァが王子ではなくなったという事実が大きかったからだ。
ある意味で自由を得た彼だからこそ、彼がそれを望んでくれるのなら。傍に居てくれるということに、何の抵抗もなかったのが正直な気持ち。流石にひとりでは心細かった。
だけど他の人たちはそれぞれに王子という身分と立場がある。だから一緒に、だなんて。はじめから考えもしなかったのだ。
自分の我儘にこれ以上彼らを巻き込むのには気がひけたのもある。
それと同時にセレナの内に強くあったのは、彼らと少し距離を置いた方良いという気持ち。
双方の役目を終えた今だからこそ、呪いという理不尽なものに掻き乱される事もなくなったからこそ。
気持ちを見つめ直す良い機会だとも思った。だからセレナにとって城を離れることは必須だったのだ。
「…それに」
ゼノスの提案に分かり易く思考を乱すセレナではなく、ゼノスが見据えたのはその隣りに居るノヴァだった。
セレナはそのふたりのかち合う視線に気づいていない。予想外の展開に追い付かぬ頭を抱えている。
「おれが王子であるという事がセレナの傍に居ることの弊害になるのなら、おれはその立場を捨てても良いです。…あなたと同じ立場になって…それでもセレナはおれを選ばないのか。あなたを、選ぶのか。確かめてみたくないですか、あなたも」
それはかつて、あの秘密の庭でふたりが対峙した時。ノヴァがまだ王子という立場であった時にゼノスが向けた言葉だった。
あの時と寸分違わぬ思いを見せつけて威嚇するゼノスに、ノヴァはただ綺麗に微笑んでみせた。
「セレナが誰を選んでも…僕は傍に居るだけですよ。もう離れないと誓ったので」
「…余裕の発言ですね。抜け駆けにも近いこの状況で」
「勿論セレナがあなたの帯同を受け容れるなら僕も受け容れます。ゼノス殿下」
「待って、ボクたちは候補に上がらないのはなんでなの、挙手制ってこと? 行っていいならボクも行きたいんだけど!」
「…魔力の底辺組だからだろう。城を出てセレナを護ることが前提である以上それは必須だ」
「だからボクはこれから磨けば光る組だってば!」
そんな弟たちの熱い火花を呆れ混じりに片手で制したのは、やはり長兄であるイリオスだった。
「それぞれの思いはよく解った。それを踏まえて、セレナ。確認なんだけれど」
「え、あ、はいっ」
「つまり、君は。今は誰も選ばないと。そういうことかな。ノヴァは例外として」
イリオスにまっすぐ問われて、セレナももう一度自分に問いかけてみる。
必然的に集まる視線が熱くて痛いほどだ。
差し伸べられる手がいくつもあったことには気づいていた。自分を想うその気持ちを疑いたいわけじゃない。
だけど自分たちの始まりは夜だった。気持ちの外で繋がっていた。
もう特別な力は何も持たず、ただのひとりになった自分を…ありのままの自分を。彼らがどう受け容れてくれるのか。確かめるのが怖かった気持ちも確かにあった。
自分に選べる立場などあるのか。自分の気持ちが一番解らなかった。
――だから。
「いつか誰かを、選ぶ為に。今は自分を選んだの。それだけなんだと思う、きっと」
それが答えだった。
「――わかった。君がそこまでの思いで決めたことなら、僕らも快く旅立ちを見送ろう。ただし、条件がある」
「…条件…?」
というか、何故条件が。ちっとも快くなどないのではないか。
思ったけれどそれは口にはできなかった。それを言わせない空気がイリオスから放たれている。
「皆にも等しくその機会は与えられるべきだ。そうは思わないかい?」
「……えっと…?」
「旅に出るのは構わない。だけど必ずここに帰ってくること」
――帰ってくる。ここに。
それはやはり想定外の提案で。
何故だか胸が熱くなった。
帰る場所があるということは、とても幸せなことだとそう思う。かつてそう、言われたように。
「ちょうど、先行き不安定なこの国の将来の為にも、王子たちそれぞれの生国との繋がりを強固にしておくべきだという議論が可決されてね。その調整の最中だったんだ」
「…えぇ…っと…? どういうこと?」
イリオスの言わんとすることが全く理解できずにひたすら首を傾げるセレナに、イリオスは綺麗に微笑んでみせた。
「王子たちそれぞれとの旅路を君に用意しよう。好きなだけ世界を見て、そうしてここに帰っておいで」
――それってつまり。
「…俺たちのただの里帰りに、セレナを連れてくってだけの事じゃねぇか…」
呆れるように言ったのはアレスだった。長く重たい息を吐きながら、テーブルに突っ伏すように項垂れて。
それが本当に脱力によるものか安堵によるものか分からない。だけどこの時ばかりはイリオスの采配を褒め称えたくなった。体よく彼女にまた鎖をつけただけに思えなくもないけれど。
予想外の展開に弟たちそれぞれが視界の片隅で視線を向け合う。
不思議と言葉にはしなくとも、考えていることは皆一緒だった。
セレナだけがやはりついて行けずにイリオスに食い下がる。
「待って、それってなんか、違くない…?!」
「そんなことないと思うけど。外の世界を見てみたいんだろう?」
「そ、そうなんだけど、そういう軽い意味ではなくて…っ」
つまりいわばこれは自分探しの旅でもあるのだ。この世界で生きていく上での、人生における新たな一歩。なのに何故こんな気軽な旅行みたいな捕えられ方にすり替わってしまったのか。
ここにくるまでにさんざん悩んで考えた時間と決意はいったい。
「最初は三人で行ってくると良い。はじめは君の行きたい場所へ。行けるとことまで行って、君の見たいものを見て触れて…そうして君の中で君という存在を確かなものにすることは、大事なことだと僕も思う。これからの未来を決める上で、それが君の核となるだろう」
急に真面目な顔をしてイリオスは、セレナに説く。
その雰囲気と声音にそれ以上の文句は流石に出てこなかった。
「だけどこれだけは忘れないで欲しい」
ああ、ずるい。ものすごく卑怯だ。
そんな顔でそんな声音で言われたら。もう拒否もできなくなってしまう。
絶対わざとだ。セレナの性格をよく解っているようで嫌になる。
「君が帰る場所で、僕らは待っている。どこへ行っても良い。君はもう自由だ。だけど君はひとりではないということを、決して忘れないでいて」
涙目で頷くことしかできなくなって、もう駄目で。
ぜんぶ受け容れることにした。これが運命だということにしよう。だってけっきょく胸が焦がれてしまうから。
自分が本当に欲しかったものは、結局ここにしかないような気がしてしまうのだ。
でもだからこそ、確かめる為に行く。
大分予定とは違う旅立ちだけれど。
「楽しみですね、セレナ。最初はどこへ行くんですか?」
もうすっかり同行する気満々のゼノスに問われ、無意識に視線が屋上の隅へと向く。
そこで昼寝していた翠色のドラゴンが丁度目を覚ましたところだった。丸めていた体を伸ばして高く鳴く。それでも眠り足りないのか再び体を丸めたドラゴンはしゅるしゅるとその大きさを変えて小さくなった。
ええ、ずるい、反則。かわいい。ちっちゃいドラゴンかわいい。
なんだかんだで結局、旅路がとても楽しみになってきてしまった。
「……最初は…」
それからちらりと隣りのノヴァにに視線を向ける。最初の目的地は既に決めていた。
その為にノヴァに頼んでその手段を用意してもらったのだ。それがあのドラゴンだ。
まさか最初から空の旅になるとは思っていなかったけれど、ファンタジーの王道なので嫌でも心は踊ってしまう。なによりドラゴンかわいいし。
未来は自分が想像してる以上に光り輝いている気がした。
これもいつか誰かの物語になりえるのだろうか。
「すごくすごく、遠いところ。だけど秘密、そのほうがきっと楽しいから」
きっと新しい風が吹く。
名前も知らない旅路の果てに。
――でもひとまず、“夜伽聖女と呪われた王子たち”の物語はこれでお終い。
今度は新しい頁をめくる。
あなたの物語に辿り着くまで。
【終】
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