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第一章
二十一話 逃亡者
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「申し訳ありませんでした」
ダンがアレサとレフトに詫びる。
前にもあった光景だ。
ベルーナは意気消沈している。
「まあ…宿泊客たちが無事でよかったですね」
重苦しい空気だが、レフトは明るく話す。
難しい顔のアレサとアッカ。
下を向いているベルーナ。
ひたすら謝罪するダン。
うわ…何でこんなこうなるんだろうか…。
ベルーナさんが危険な人物というのは確かにわからなかったわ。
アッカがまともな人間ってのも驚いた…。
カラーズの内情はよくわからないな。
そもそも何でそこに宝珠がからんでくるのだろう。
アッカたちに宝珠回収を依頼したのはいったい…。
「教えてちょうだい」
沈黙する空間にアレサが話す。
「ん」
「あんたたちに宝珠の依頼をしたのは誰?」
アレサ…直球だな…。
まあそこがキーなんだけどさ。
「それは…」
アッカが口を開くが、明らかに話したくないようである。
「私が話す」
ベルーナが大きな声で発言する。
「ベルーナ…しかし…」
「もうヘルゲートには戻らない。それに真実を伝えないと…ここは消される…」
「えっ…消される?」
消されるということに反応するレフト。
ニヤニヤと笑うアレサ。
「よくわかったようねベルーナ。あんたたちに選択肢は無いのよ。その依頼した奴も相当危険人物なのでしょう。話すとここが危ないんだと思う。だけど私はそんなことどうでもいいのよ。今、ここで話さねば宿は消されてしまう…あんたも大変よね」
…まあアレサの言い分はわかる。
ベルーナさんは浮き沈みが激しくてちょっとめんどくさいところがある。
だけど…ねえ。
「はい、自分のおかれている状況がよく分かりました。奥様、レフトさん申し訳ないです」
突然立ち上がりダンと一緒に謝罪するベルーナ。
「…おいおい、ベルーナ…どうしたんだ急に…」
その様子に驚いたのはアッカだった。
「アッカ、私はもうここで宿主として生きる」
「…わかった。宝珠…というか、その方はどうする?」
「待って、順番に話すわ。奥様、レフトさん、私に宝珠回収を依頼した人物は…トップオブザワールドです」
「えっ」
「ふ~ん」
驚くレフト。
たいして驚かないアレサ。
「正直、そんな感じはしたわ。でも本人には会っていないでしょう?」
「はい。アウト…とかいう人物にトップオブザワールドのことを聞きました」
「なるほどね」
…フラットのことか。
ドラゴンマスターと面識があったのね。
納得するレフト。
「宝珠は回収しましたが、私は…それを奪って逃げました」
「…」
何でそうなる?
そこがおかしいと思うレフト。
「それは当然追っ手がくるだろうし、あんたはそのトップオブザワールドから逃げ切れると思ったわけ?」
「いいえ。いずれこうなると思っていました。理解できないと思いますが、私は宿を経営したかったんです」
「…」
ようやく人らしい一面が見えたベルーナ。
その様子をレフトは見逃さなかった。
「宝珠を渡したら私たちは消されていたでしょう」
「なるほど、宝珠の秘密を盾に行動ってわけね。それで自分の願いを叶えたと」
「はい。宝珠に願うとダンと宿が手に入りました。ダンから近辺に宿主を探しているという者がいると聞かされました。そして老婆からこの宿を継ぎました」
宝珠は持つ者により効果が変わるのか…。
レフトは宝珠の力の本質を見極めていた。
まさか物体が人になるとはねえ…。
「わかったわ。それでアッカは復興機関に頼み宝珠を回収しトップオブザワールドに渡すつもりだった、ということね?」
「そうです。それでベルーナを解放したかったんです。宝珠を渡して裏の仕事から…」
「アッカ、優しさは嬉しかった。だけど私は宿主をやってみたかったし、優れた能力を持つあなたに宿の仕事をさせるのに抵抗があったの。その能力をここで終わらせてほしくなかった…」
…ああ、なんとなく見えてきたわ。
お互いに相手を尊重しすぎたのかね。
「あんたたちの恋愛事情なんかどうでもいいのよ。宝珠を渡すっていっても今さらダンを連れてってどうぞってわけにはいかないわよね…」
「はい…」
「そ、そうですよね…」
ベルーナとアッカは人になった宝珠をどうするかわからない。
アレサもこんなケースは初めてだろう。
再び沈黙してしまう。
「人になっちゃいましたって…伝えるか」
レフトの楽観的な発言にみんなが笑う。
「まあそうよね…これはもう仕方ないわよね」
怖い顔をしたアレサからは笑みがこぼれる。
ベルーナとアッカも笑っている。
ダンはよくわかっていないが、皆に笑顔が戻り安心しているようだ。
「ダン」
「はい」
アレサはダンをまじまじとみる。
「私にはなんだかわからないけど、あんたはどう思っているの?」
「と、言いますと?」
「言いますとじゃないわよ。あんたはここでベルーナと宿を運営する、それでいいの?」
アレサの言葉に考え込むダン。
ベルーナは何かを伝えようとするがアッカが止める。
「…アレサ、ダンさんは自分ではどうすればいいかわからないのだと思う」
レフトがアレサの肩に手をおき話す。
「…そうね。ごめんなさいダン」
「いえ、奥様。こちらこそ」
一見、人の姿をしているがダンだが、冷静に話しをするとどこか変わっている。
「とりあえず私たちは休ませてもらうわ。復興機関を追い返したのだから、いずれここは捜索されるわよ」
「はい。覚悟は…できております」
「ベルーナ、そばにいるから…」
見つめ合うベルーナとアッカ。
二人をみて安堵するダン。
「ねえ、ちょっといちゃつくもは後でやりなさいよ。部屋に案内してちょうだい」
「…そうだね、ベルーナさんお願いします」
ハッと我に返るベルーナたち。
「し、失礼しました、では」
静養のつもりが、ヘルゲートの騒動に巻き込まれてしまったレフトたち。
復興機関はスペースの報告を元に緊急対策会議、各方面のスペシャリストを招集。
宝珠回収へと動き出す。
機関を去った者が機関に追われることになるのだろうか。
次章へ続く。
ダンがアレサとレフトに詫びる。
前にもあった光景だ。
ベルーナは意気消沈している。
「まあ…宿泊客たちが無事でよかったですね」
重苦しい空気だが、レフトは明るく話す。
難しい顔のアレサとアッカ。
下を向いているベルーナ。
ひたすら謝罪するダン。
うわ…何でこんなこうなるんだろうか…。
ベルーナさんが危険な人物というのは確かにわからなかったわ。
アッカがまともな人間ってのも驚いた…。
カラーズの内情はよくわからないな。
そもそも何でそこに宝珠がからんでくるのだろう。
アッカたちに宝珠回収を依頼したのはいったい…。
「教えてちょうだい」
沈黙する空間にアレサが話す。
「ん」
「あんたたちに宝珠の依頼をしたのは誰?」
アレサ…直球だな…。
まあそこがキーなんだけどさ。
「それは…」
アッカが口を開くが、明らかに話したくないようである。
「私が話す」
ベルーナが大きな声で発言する。
「ベルーナ…しかし…」
「もうヘルゲートには戻らない。それに真実を伝えないと…ここは消される…」
「えっ…消される?」
消されるということに反応するレフト。
ニヤニヤと笑うアレサ。
「よくわかったようねベルーナ。あんたたちに選択肢は無いのよ。その依頼した奴も相当危険人物なのでしょう。話すとここが危ないんだと思う。だけど私はそんなことどうでもいいのよ。今、ここで話さねば宿は消されてしまう…あんたも大変よね」
…まあアレサの言い分はわかる。
ベルーナさんは浮き沈みが激しくてちょっとめんどくさいところがある。
だけど…ねえ。
「はい、自分のおかれている状況がよく分かりました。奥様、レフトさん申し訳ないです」
突然立ち上がりダンと一緒に謝罪するベルーナ。
「…おいおい、ベルーナ…どうしたんだ急に…」
その様子に驚いたのはアッカだった。
「アッカ、私はもうここで宿主として生きる」
「…わかった。宝珠…というか、その方はどうする?」
「待って、順番に話すわ。奥様、レフトさん、私に宝珠回収を依頼した人物は…トップオブザワールドです」
「えっ」
「ふ~ん」
驚くレフト。
たいして驚かないアレサ。
「正直、そんな感じはしたわ。でも本人には会っていないでしょう?」
「はい。アウト…とかいう人物にトップオブザワールドのことを聞きました」
「なるほどね」
…フラットのことか。
ドラゴンマスターと面識があったのね。
納得するレフト。
「宝珠は回収しましたが、私は…それを奪って逃げました」
「…」
何でそうなる?
そこがおかしいと思うレフト。
「それは当然追っ手がくるだろうし、あんたはそのトップオブザワールドから逃げ切れると思ったわけ?」
「いいえ。いずれこうなると思っていました。理解できないと思いますが、私は宿を経営したかったんです」
「…」
ようやく人らしい一面が見えたベルーナ。
その様子をレフトは見逃さなかった。
「宝珠を渡したら私たちは消されていたでしょう」
「なるほど、宝珠の秘密を盾に行動ってわけね。それで自分の願いを叶えたと」
「はい。宝珠に願うとダンと宿が手に入りました。ダンから近辺に宿主を探しているという者がいると聞かされました。そして老婆からこの宿を継ぎました」
宝珠は持つ者により効果が変わるのか…。
レフトは宝珠の力の本質を見極めていた。
まさか物体が人になるとはねえ…。
「わかったわ。それでアッカは復興機関に頼み宝珠を回収しトップオブザワールドに渡すつもりだった、ということね?」
「そうです。それでベルーナを解放したかったんです。宝珠を渡して裏の仕事から…」
「アッカ、優しさは嬉しかった。だけど私は宿主をやってみたかったし、優れた能力を持つあなたに宿の仕事をさせるのに抵抗があったの。その能力をここで終わらせてほしくなかった…」
…ああ、なんとなく見えてきたわ。
お互いに相手を尊重しすぎたのかね。
「あんたたちの恋愛事情なんかどうでもいいのよ。宝珠を渡すっていっても今さらダンを連れてってどうぞってわけにはいかないわよね…」
「はい…」
「そ、そうですよね…」
ベルーナとアッカは人になった宝珠をどうするかわからない。
アレサもこんなケースは初めてだろう。
再び沈黙してしまう。
「人になっちゃいましたって…伝えるか」
レフトの楽観的な発言にみんなが笑う。
「まあそうよね…これはもう仕方ないわよね」
怖い顔をしたアレサからは笑みがこぼれる。
ベルーナとアッカも笑っている。
ダンはよくわかっていないが、皆に笑顔が戻り安心しているようだ。
「ダン」
「はい」
アレサはダンをまじまじとみる。
「私にはなんだかわからないけど、あんたはどう思っているの?」
「と、言いますと?」
「言いますとじゃないわよ。あんたはここでベルーナと宿を運営する、それでいいの?」
アレサの言葉に考え込むダン。
ベルーナは何かを伝えようとするがアッカが止める。
「…アレサ、ダンさんは自分ではどうすればいいかわからないのだと思う」
レフトがアレサの肩に手をおき話す。
「…そうね。ごめんなさいダン」
「いえ、奥様。こちらこそ」
一見、人の姿をしているがダンだが、冷静に話しをするとどこか変わっている。
「とりあえず私たちは休ませてもらうわ。復興機関を追い返したのだから、いずれここは捜索されるわよ」
「はい。覚悟は…できております」
「ベルーナ、そばにいるから…」
見つめ合うベルーナとアッカ。
二人をみて安堵するダン。
「ねえ、ちょっといちゃつくもは後でやりなさいよ。部屋に案内してちょうだい」
「…そうだね、ベルーナさんお願いします」
ハッと我に返るベルーナたち。
「し、失礼しました、では」
静養のつもりが、ヘルゲートの騒動に巻き込まれてしまったレフトたち。
復興機関はスペースの報告を元に緊急対策会議、各方面のスペシャリストを招集。
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