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第一章
十九話 機械墓地の調査
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巨大化したネズミが立ち上がり爪でシフを襲う。
「今だ」
シフが合図すると後方から短剣が二本飛んできてネズミの腹部に命中する。
攻撃を受けて倒れ込むネズミ。
終戦後、しばらくしてから墓地よりモンスターが多数現れて機関は対応に追われている。
数は多いがそれほど強力なモンスターではなく、市民でも撃退できるものが大多数だが、一部危険な種類がいるため、機関は本格的に調査を開始した。
シフはミツキと本部から派遣されたクーガという情報課の者を加えチームを組んでいた。
「やはり墓地にはまだまだ秘密がありそうです。このネズミは微力ながら魔力が感じられます」
クーガは優れた分析力がある実力者だ。戦闘は苦手だが、抜群のサポートで二人を支える。
「シフ、サンプルを持ち帰ろ。体毛を採集してくれ」
ミツキはシフに告げ、自分は鋭い爪を削りクーガへ渡す。すぐさま採集ボックスを広げ手早く回収する。
「戦争していた期間は短いが、みんなが疲弊したのは事実でありシーキヨは荒れてしまった。そんな時にこのモンスター騒動は厄介だな」
シフは難しい顔をしている。
「それを調べるのが我々です」
クーガは二人と馴染んでおり、シフとミツキもクーガを信用しているようだ。
シーキヨ支部は人員不足により一時期は閉鎖を検討されたが、新たなる人材にての再スタートが見事に成功している。
モモは情報課を離れ集落に戻った。
集落の長グルを補佐するためだ。
集落の者は皆モモを慕い滞在を願った。
モモは進むべき道を見つけたようだ。
そして…
モンスター騒動と同時に結界が消えた墓地の奥でゼットの目撃情報が多発。
真相を知るため機関はレフトとカレン、それに内部に詳しいスコーピオンを加え調査隊結成し墓地へ派遣した。
「まさかあなたと組むことになるとは思いませんでした」
現地集合でお互いに驚く三人。
そんな状況でカレンはいきなり二人に決意を告げる。
「私は復興機関シーキヨ支部所属、治安課カレンの複製人間であり、つまりクローンです。どのように産まれたのかはわかりませんが、カレンは本人だけであり、私は私です。私はこれからレンと名乗り自分の人生を生きます」
堂々と語る姿にどこかカレンらしさをみるレフトであったが…
…いきなり語るとことか…そっくりだよ。
と心で思っていた。
「わかった。レン、よろしくね」
「承知した。レン」
気持ちを切りかえて奥へ進む三人。
元々口数が少ない者同士であったので意外と良いチームなのかもしれない。
早速、狂暴化したモンスターが三人に襲いかかる。
スコーピオンは真っ先に短剣を抜刀して応戦する。以前と違いキレのよい動きで獣系のモンスターを掃討していく。
レンはシーキヨの聖堂で清められた剣を手に取る。
彼女は聖堂で祈りを捧げ洗礼を受けていた。
それにより今までの突き刺しメインの剣術から進化し、魔法剣のような聖剣技を習得した聖剣士となる。
切った対象が燃える等の聖剣技は魔法とは異なり洗礼を受けた純粋な心を持つ者しか習得できない。これが魔力によるものなのか判明しておらず、詳細は不明である。
聖剣技は心浄の炎、雷の審判、刃身の氷と区分され、レンは新たなる力を授かった。
モンスターの群れを抑えつつ進む三人。
「確かにモンスターはいたが、ここまで多くはなかった」
「ゲーハの研究室へ向かいましょう」
スコーピオンとレンはレフトに説明する。
「あいつはその辺のモンスターをよく利用していた。それがこの騒動と関係しているかもしれない」
「レフト、私は正直、研究室には行きたくないわ。おそらくそこで私は産まれたと思うから…でももう目を背けない」
二人は鋼鉄のさそりという呪縛を乗り越えようとしていた。二人なりに考え、この調査に参加したのだろうとレフトは感じた。
研究室前には人間らしきサイボーグが四人立っている。
「あれはゲーハが改造したカレンの部下か」
「行方不明になった部隊か。やはりこれもゲーハだったか」
レフトは神妙な面持ちで剣を構える。
するとレンとスコーピオンがスッと手を出しレフトを止める。
「私たちが…」
そういうと二人は武器を構える。
スコーピオンは一気に距離をつめて、四人の足に水をかける。
急襲に対応できない四人は素早い動きのスコーピオンを攻撃できず、お互いが振り回した警棒のような武器でダメージを受ける。
レンが聖剣を抜刀し念じる。
聖剣技を使うようだ。
それを察知したスコーピオンは鉄のムチを取り出し、距離をとりつつ四人を拘束する。まとまっている四人にレンの一撃が放たれた。それは激しい雷となり足から一気に感電した。バチバチと音をたて崩れ落ちる三人。
それを避けて研究室に入るレフトたち。
内部は大きな水槽があり、周囲をコンピューターが囲んでいる。
点滅が確認できるため動力はあるようだ。
「これは一体なんだろう」
レフトたちは目の前にある巨大な物体が理解できなかった。
「これは人をモンスター化する水槽です」
水槽の奥からゲーハそっくりな者が現れる。身体の所々が機械化しており、人間というよりはアンドロイドだ。
「…またクローンか」
スコーピオンは元同僚ながらもさすがに愛想がつきたようだ。倫理観が崩壊しているゲーハの行動に怒りすら感じているようだ。
「ゲーハは、いにしえより生きる人間であり、私や君たちが知るあのゲーハは複製人間です。複製を繰り返し延命して永遠といえる時間を生きてきました」
衝撃を受ける三人。
しばらく沈黙が続いていたがレンが口を開く。
「何故、そこまでして生き続けるの?」
レンはゲーハに問う。
「何故? 人間は誰もが生き続けたいと願うでしょう。永遠の命は誰もが望むでしょう。複製を造り続けることは永遠をいきる一つの答えなのです。ですがあなたはまた違った理由で造られたのです」
「ええ、私は兵器として造られたのだろうと思います」
レフトは黙って聞いている。
スコーピオンは両手を強く握りしめ、
今にも飛び出しゲーハは殴りそうだ。
「私はソサリ様に従い、オリジナルのあなたから複製を造り、部隊を改造人間にしました。独眼の者がここを突き止め襲撃してきましたが、戦闘不能にし、その頭脳を有効活用しています」
「…ゼットか…ここにやはりいるのか」
レフトはゲーハを問い詰める。
ゲーハは顔色を変えずに答える。
「その女性と同じですよ。ただ女性のオリジナルは激しく抵抗したので、必要なデータだけ抽出して処分しましたが独眼の者はまだ奥にいますよ。この男をベースにした複製人間は非常に賢く、隙をみて脱走するなど手がかかり厄介なのです。しかし能力は優秀ですから逃げても問題ないように短命に調整しました」
ゼットも複製されていたようだ。
だが、まだ本人が生存している。
レンはそれを聞くと聖剣を抜刀した。
スコーピオンは飛び出して短剣でゲーハの腕と足を切りつける。
ゲーハは悲鳴を上げ倒れ込む。
「君が手を出すことはない」
そういうとスコーピオンは短剣でゲーハの喉を切りつける。
出血してバタバタと暴れたが直ぐに絶命した。
ここにゲーハは倒れ本当の意味で鋼鉄のさそりは終わった。
永遠を生きたといわれる男の悲しい最後である。
複製人間はこれで世に出ることはないだろう。
おそらく複製人間をこの水槽に入れてモンスター化し処分していたようだ。
ゲーハの日誌らしきものがある。
一部朽ち果てているがそこに様々な秘密があると思い三人は読み始める。
複製人間は古くから存在していたが兵器としての利用は鋼鉄のさそり結成後からのようだ。強者を誘拐したり犯罪者を拉致して複製を造り、兵力を増強、急激に戦力をつけていったようだ。しかしソサリが倒れたことで複製人間は不要となった。大量に余ってしまった複製人間の処分にゲーハは困ってしまったようだ。そこで強引にモンスター化させて処分することを計画し実行する。複製人間は目的を設定して、始めて動く人形のようなものであり、起動せずそのまま放置するにも広大な空間が必要であり、一般的な処分は非常に手間がかかるらしい。
モンスター化してしまえば勝手に墓地を徘徊し本能で行動するらしく手がかからないためソサリが没後、次々と複製人間をモンスター化していたようだ。
ソサリはシーキヨをひっくり返すことが目標であった。それにゲーハを利用していた…そんなとこだろうと三人は思っていた。
ソサリの鏡については、強大な魔力を秘めたモノから少々魔力を受けた産物、と書いてあった。
「私やレフトがみたモノのこと?」
「おそらく…そうかも。魔力が込められた炎は普通の炎と根本的に違い、簡単には消えないんだ。その炎に耐えていたみたいだからかなりの硬度か同じく魔力が込められたモノの可能性が高いよ」
スコーピオンやレンは正直、ソサリのことはよくわからない。自分のことを主と呼ぶことを徹底していたこと、魔法使いであるが戦っているところはみたことがないこと等、謎が多い人物だったようだ。
「鏡やソサリのことは引き続き調査をしてもらおう。これ以上もうわからないだろうと思うよ」
レフトはため息をつく。
「そうだな、それよりゼット殿を解放しよう。確か奥にいると言っていたな」
三人は奥へ進む。
その時、誰かがセンサーのようなものを踏んだらしく、激しい警報が鳴る。
三人は驚いて周囲を見渡す。
すると次の瞬間、
鋭利な針がレフトへめがけて飛んでくる。
「危ないレフト!」
針はレフトをかばったレンの右肩に命中した。バランスを崩し倒れ込む二人の頭上からさらに三本の針が二人へめがけて放たれた。
「くっ…避けれない…」
今度はレンをかばうレフトだが針のスピードがはやい。
直撃する瞬間に二人はスコーピオンのタックルにより回避できた。タックル後にスコーピオンは脅威の身体バランスで針を回避。
体勢を整えたレフトは即、魔力を解放して周囲を吹き飛ばす。
トラップやコンピューター、水槽などは一瞬で消失し瓦礫と砂ほこりがまいあがった。
「まだ防衛システムが残っていたか」
レフトは急いでレンに治癒魔法をかける。
すると崩れた散乱物の中から武装したロボットが現れる。
「治癒を止めるわけにはいかない」
レフトは選択を迫られている。
「私がやる。ただ長くは持たない」
スコーピオンが前に立ちふさがる。
ロボットはスコーピオンを敵と認識し急接近する。それを迎え撃つスコーピオン。しかし、ロボットのレーザーでスコーピオンは大ダメージを受ける。
突然のレーザー攻撃が痛恨の一撃となり、スコーピオンはダウンする。
今度はレフトを敵と認識するロボット。
レンはダメージを追いながらも立ち上がり抜刀する。
「この程度のダメージなど問題ない」
剣は光り輝きレンは聖剣技を構える。
だが、傷口から大量に出血しており、レフトの治癒魔法でギリギリ意識を保っている。
「レン、やめるんだ、すぐに止血しないと命が危ない」
レンはそんなレフトをみてにっこり笑う。
「このままだとみんなやられてしまうわ」
レフトは言い返せない。
「いいのよ、私はあなたのそばに…」
レンはレフトを振り払いロボットへ特攻する。強烈な斬撃がロボットのボディを容易に切り裂く。追撃で稲妻がロボットの全身に伝わる。バチバチと腕や足からは黒煙が発生し金属が焼ける匂いがする。
やがてロボットは発火しそのまま倒れた。
聖剣は折れてしまいレンも倒れた。
そこへすぐにレフトが駆け寄る。
「まだ助かる。動かないでくれ」
レフトはさらに強力な治癒魔法をレンにかける。それにより血は止まった。
「さっきは…伝え忘れ…たわ…私は…」
ゆっくりとレフトの目をみるレン。
「ダメだよ、しゃべったら命が…」
にっこり笑うレン。
「…嬉しいな…」
「レフトさんこれを飲ませて」
その時レフトにどこからか小瓶が飛んでくる。よくわからないが受けとるレフト。
「…ゼット…か」
次回へ続く
「今だ」
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シフは難しい顔をしている。
「それを調べるのが我々です」
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シーキヨ支部は人員不足により一時期は閉鎖を検討されたが、新たなる人材にての再スタートが見事に成功している。
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集落の長グルを補佐するためだ。
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そして…
モンスター騒動と同時に結界が消えた墓地の奥でゼットの目撃情報が多発。
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そんな状況でカレンはいきなり二人に決意を告げる。
「私は復興機関シーキヨ支部所属、治安課カレンの複製人間であり、つまりクローンです。どのように産まれたのかはわかりませんが、カレンは本人だけであり、私は私です。私はこれからレンと名乗り自分の人生を生きます」
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と心で思っていた。
「わかった。レン、よろしくね」
「承知した。レン」
気持ちを切りかえて奥へ進む三人。
元々口数が少ない者同士であったので意外と良いチームなのかもしれない。
早速、狂暴化したモンスターが三人に襲いかかる。
スコーピオンは真っ先に短剣を抜刀して応戦する。以前と違いキレのよい動きで獣系のモンスターを掃討していく。
レンはシーキヨの聖堂で清められた剣を手に取る。
彼女は聖堂で祈りを捧げ洗礼を受けていた。
それにより今までの突き刺しメインの剣術から進化し、魔法剣のような聖剣技を習得した聖剣士となる。
切った対象が燃える等の聖剣技は魔法とは異なり洗礼を受けた純粋な心を持つ者しか習得できない。これが魔力によるものなのか判明しておらず、詳細は不明である。
聖剣技は心浄の炎、雷の審判、刃身の氷と区分され、レンは新たなる力を授かった。
モンスターの群れを抑えつつ進む三人。
「確かにモンスターはいたが、ここまで多くはなかった」
「ゲーハの研究室へ向かいましょう」
スコーピオンとレンはレフトに説明する。
「あいつはその辺のモンスターをよく利用していた。それがこの騒動と関係しているかもしれない」
「レフト、私は正直、研究室には行きたくないわ。おそらくそこで私は産まれたと思うから…でももう目を背けない」
二人は鋼鉄のさそりという呪縛を乗り越えようとしていた。二人なりに考え、この調査に参加したのだろうとレフトは感じた。
研究室前には人間らしきサイボーグが四人立っている。
「あれはゲーハが改造したカレンの部下か」
「行方不明になった部隊か。やはりこれもゲーハだったか」
レフトは神妙な面持ちで剣を構える。
するとレンとスコーピオンがスッと手を出しレフトを止める。
「私たちが…」
そういうと二人は武器を構える。
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「…またクローンか」
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「ゲーハは、いにしえより生きる人間であり、私や君たちが知るあのゲーハは複製人間です。複製を繰り返し延命して永遠といえる時間を生きてきました」
衝撃を受ける三人。
しばらく沈黙が続いていたがレンが口を開く。
「何故、そこまでして生き続けるの?」
レンはゲーハに問う。
「何故? 人間は誰もが生き続けたいと願うでしょう。永遠の命は誰もが望むでしょう。複製を造り続けることは永遠をいきる一つの答えなのです。ですがあなたはまた違った理由で造られたのです」
「ええ、私は兵器として造られたのだろうと思います」
レフトは黙って聞いている。
スコーピオンは両手を強く握りしめ、
今にも飛び出しゲーハは殴りそうだ。
「私はソサリ様に従い、オリジナルのあなたから複製を造り、部隊を改造人間にしました。独眼の者がここを突き止め襲撃してきましたが、戦闘不能にし、その頭脳を有効活用しています」
「…ゼットか…ここにやはりいるのか」
レフトはゲーハを問い詰める。
ゲーハは顔色を変えずに答える。
「その女性と同じですよ。ただ女性のオリジナルは激しく抵抗したので、必要なデータだけ抽出して処分しましたが独眼の者はまだ奥にいますよ。この男をベースにした複製人間は非常に賢く、隙をみて脱走するなど手がかかり厄介なのです。しかし能力は優秀ですから逃げても問題ないように短命に調整しました」
ゼットも複製されていたようだ。
だが、まだ本人が生存している。
レンはそれを聞くと聖剣を抜刀した。
スコーピオンは飛び出して短剣でゲーハの腕と足を切りつける。
ゲーハは悲鳴を上げ倒れ込む。
「君が手を出すことはない」
そういうとスコーピオンは短剣でゲーハの喉を切りつける。
出血してバタバタと暴れたが直ぐに絶命した。
ここにゲーハは倒れ本当の意味で鋼鉄のさそりは終わった。
永遠を生きたといわれる男の悲しい最後である。
複製人間はこれで世に出ることはないだろう。
おそらく複製人間をこの水槽に入れてモンスター化し処分していたようだ。
ゲーハの日誌らしきものがある。
一部朽ち果てているがそこに様々な秘密があると思い三人は読み始める。
複製人間は古くから存在していたが兵器としての利用は鋼鉄のさそり結成後からのようだ。強者を誘拐したり犯罪者を拉致して複製を造り、兵力を増強、急激に戦力をつけていったようだ。しかしソサリが倒れたことで複製人間は不要となった。大量に余ってしまった複製人間の処分にゲーハは困ってしまったようだ。そこで強引にモンスター化させて処分することを計画し実行する。複製人間は目的を設定して、始めて動く人形のようなものであり、起動せずそのまま放置するにも広大な空間が必要であり、一般的な処分は非常に手間がかかるらしい。
モンスター化してしまえば勝手に墓地を徘徊し本能で行動するらしく手がかからないためソサリが没後、次々と複製人間をモンスター化していたようだ。
ソサリはシーキヨをひっくり返すことが目標であった。それにゲーハを利用していた…そんなとこだろうと三人は思っていた。
ソサリの鏡については、強大な魔力を秘めたモノから少々魔力を受けた産物、と書いてあった。
「私やレフトがみたモノのこと?」
「おそらく…そうかも。魔力が込められた炎は普通の炎と根本的に違い、簡単には消えないんだ。その炎に耐えていたみたいだからかなりの硬度か同じく魔力が込められたモノの可能性が高いよ」
スコーピオンやレンは正直、ソサリのことはよくわからない。自分のことを主と呼ぶことを徹底していたこと、魔法使いであるが戦っているところはみたことがないこと等、謎が多い人物だったようだ。
「鏡やソサリのことは引き続き調査をしてもらおう。これ以上もうわからないだろうと思うよ」
レフトはため息をつく。
「そうだな、それよりゼット殿を解放しよう。確か奥にいると言っていたな」
三人は奥へ進む。
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三人は驚いて周囲を見渡す。
すると次の瞬間、
鋭利な針がレフトへめがけて飛んでくる。
「危ないレフト!」
針はレフトをかばったレンの右肩に命中した。バランスを崩し倒れ込む二人の頭上からさらに三本の針が二人へめがけて放たれた。
「くっ…避けれない…」
今度はレンをかばうレフトだが針のスピードがはやい。
直撃する瞬間に二人はスコーピオンのタックルにより回避できた。タックル後にスコーピオンは脅威の身体バランスで針を回避。
体勢を整えたレフトは即、魔力を解放して周囲を吹き飛ばす。
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「まだ防衛システムが残っていたか」
レフトは急いでレンに治癒魔法をかける。
すると崩れた散乱物の中から武装したロボットが現れる。
「治癒を止めるわけにはいかない」
レフトは選択を迫られている。
「私がやる。ただ長くは持たない」
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今度はレフトを敵と認識するロボット。
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「この程度のダメージなど問題ない」
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だが、傷口から大量に出血しており、レフトの治癒魔法でギリギリ意識を保っている。
「レン、やめるんだ、すぐに止血しないと命が危ない」
レンはそんなレフトをみてにっこり笑う。
「このままだとみんなやられてしまうわ」
レフトは言い返せない。
「いいのよ、私はあなたのそばに…」
レンはレフトを振り払いロボットへ特攻する。強烈な斬撃がロボットのボディを容易に切り裂く。追撃で稲妻がロボットの全身に伝わる。バチバチと腕や足からは黒煙が発生し金属が焼ける匂いがする。
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「さっきは…伝え忘れ…たわ…私は…」
ゆっくりとレフトの目をみるレン。
「ダメだよ、しゃべったら命が…」
にっこり笑うレン。
「…嬉しいな…」
「レフトさんこれを飲ませて」
その時レフトにどこからか小瓶が飛んでくる。よくわからないが受けとるレフト。
「…ゼット…か」
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