19 / 42
第一章
十八話 過去と未来
しおりを挟む
鋼鉄のさそりによるクーデターらしきものから開戦したシーキヨ戦争は、組織の主であるソサリが倒れたことで終戦した。
機械墓地には大規模な結界が展開され一部関係者しか実体がつかめずにいた。
術主の魔力が途絶えたことで結界は消失した。
現在はテントで出入りの管理をしている。
今後は小屋を新設して墓地の危険箇所を除き自由に研究や採集できるようにする方針らしい。
「失礼します」
レフトはいつかのようにカレンの件で機関から呼び出されていた。
「お忙しいところ申し訳ない」
質問官は三人。
うつむいたカレンからは生気が感じられない。心ここに非ずといったところである。
「単刀直入に言います。あなたの知っていることを全て話して下さい」
質問官は前回のように遠慮や配慮はない。
「…」
「わかりました。シーキヨは再び復興するため多くの方が尽力しております。あなた一人に時間をかけるわけにはいかないのです」
「…」
「カレンさんはもういません。よってあなたはあなた本人としてこれから生きていかねばなりません。先のことをどうするのか決める者はもういません」
「そうだね、カレンと名乗る必要すらないだろうね。あなたはカレンとは違う」
レフトとカレンにはいろいろ事情がありそうだ。
ゆえに戦闘不能にはしたが命を奪ったりはしなかった。
ある日の復興機関での出来事である。
レフトはオメガ、ニナと機関の待合室で待機していた。ニナは初陣だが、実力は相当なもので、この討伐依頼は楽勝だろうと言われていた。辺境に場違いなモンスターが生息しており、その討伐が任務だった。
「それじゃあ向かおう」
レフトは席を立つ。
「待って下さい」
出発する三人を呼び止める声がする。
ニナの同期であるカレンだ。
「私も一緒に連れていってほしいのです。上層部の許可はあります」
「あなたチームは三人って規則を破るつもりなの。そもそも念願の治安課へ配属してもまだ納得できないの?」
ニナがカレンを拒否する。
オメガは上が許可したなら仕方ないというアンドロイドらしい対応だ。
「新人を含む討伐依頼はとても大変でそれが二人。いくら上が許可しても現場の責任者としては許可できないよ」
レフトは冷静に応対する。
ニナはレフト、オメガと座学や生活の一部を共有しており初対面というわけではない。三人はある程度の連携が期待でき、現場に出て実戦するためレフトが依頼を受けたのが経緯である。
「私はお荷物にはならない。一回だけで良いです。レフト、オメガさん、一緒に連れていって下さい」
「レフト、同行させてはダメ、彼女は私と同じで実戦経験が無いわ。これ以上あなたやオメガに負担はかけられないし、規則を守るためにも三人で出発すべきよ」
相反するニナとカレン。
「レフトさん今回のみ許可してほしい」
なかなか出発できない状況に、当時の情報課重鎮ゼットがレフトに頼んだ。
「彼女にチャンスを与えてほしいのです。ムリを言うので埋め合わせはします。もしトラブルがあれば私が責任をとります」
ゼットはカレンの保護者のような印象だ。
親が子を送り出す、そういった感じだ。
「わかったわ。私はもう何も言わない」
結局ニナが折れて、不安ながらも四人で出発となった。カレンはニナへの競争心が強く、このような度を超した個人的な感情は団体行動や組織では望まれず、緊迫した状況下での個人プレーは危険である。
会話もなく目的地へ到着する。
洞窟らしき薄暗い穴があり、ここがモンスターの巣だと言われている。密林の奥地に草木で隠されたようなその洞窟は、いかにもという感じだ。
我先にと洞窟へ入ろうとするカレン。
それに呆れるニナ。
レフトとオメガはカレンをすぐ追いかける。すると巨大なさそりとぼろぼろの服に右手が義手の老人が穴から出てきた。
「ふぉ、実験体がまたきよったか」
老人は杖を取り出し魔法を放つ。
カレンは魔法で拘束され身動きを封じられ、そこにさそりの攻撃が命中する。
尾が身体に刺さり致命傷を受ける。
手慣れた連携によりあっという間にカレンは戦闘不能にされてしまった。
「ちっ、警戒心がなさすぎよ。レフトお願い、彼女に治癒魔法を。私とオメガで片付けるわ」
「ふぉふぉ、実験体は渡さんぞ」
老人はガード魔法を展開する。
杖から光り輝くベールのようなものがカレンを包む。
レフトはゆっくり右腕をカレンに向ける。そして右手を握りしめた。
すると空間が歪み、カレンがレフトの側に転移した。
「ふぉ! なっ…なんと…」
老人は目の前で起こった出来事に一瞬驚くがすぐさま応戦しようと杖を構えた。
そこへ弾丸が命中し、老人は杖を落としてしまう。体勢を崩すほど強烈な弾丸がさらに二発、義手に命中し義手はバチバチと黒煙を上げそのショックで老人は膝をついてしまった。
左手で謎の液体を取り出すが、ニナはよろけた隙に距離をつめていて液体を奪った。格闘による近接攻撃にて腹に一撃、さらにショートした右腕をもぎ取り、老人は一瞬で戦闘不能になった。
巨大さそりはキューブを鉄の塊のような鈍器に変形させたオメガにより尾や胴を潰された。押し潰されたさそりは体液が飛び散りもはや原型はない。
「…お…おぬしらは…何者じゃ…」
老人は咳き込み吐血しながら問う。
「あんたを逮捕しにきたのよ。少しやり過ぎたけど、死にはしないから大人しくしなさい」
ニナは手際良く老人を捕縛した。
カレンはレフトの治癒魔法を受けている。
「傷は見た目ほどひどくないが毒がやっかいだね。この地域は洞窟内に解毒茸が必ずあるはずだよ」
「やれやれ、わかったわ。オメガ、一緒にきてくれる?」
「うむ、レフトの言うように解毒茸はこの地に自生しておる。急ごう」
二人は特殊な服を着て洞窟内へ入っていった。
二人きりになったレフトとカレン。
「…私…死ぬの…かな…」
「大丈夫だよ。解毒すればすぐ良くなる」
レフトは不安そうなカレンを優しく諭す。急な攻撃に反応すらできなかった自分が憎いのだろう、カレンは涙を流す。
「おいおい、初陣なんだから仕方ないよ。これからは素早く動けるようになればいいし、自分を恥じることはないよ」
「レフト、私はあなたを目標に努力するわ。回復してくれてありがとう。あなたにはけっして刃は向けないと約束する…」
そう言い残してカレンは気絶した。
ゆっくり目を開けるレフト。
過去にあった出来事を思い出していたようだ。カレンはニナのような逸材ではなかった。気が強く強引ではあるが努力して皆の手本となるべく鍛練していた。
そういう姿に多くが惹かれシーキヨでは活躍していた。努力と周囲への感謝を忘れない良きリーダーだった。
「ではこれ以上時間はとれないので、決定事項を読み上げます」
質問官は早々に終わらせようとする。
「…あの…」
カレンは小さく弱々しい声で発言する。
「…鏡…鏡のようなモノがあって…」
「鏡?」
みんなが一斉に反応する。
「内部で争いが起こるとソサリが鏡で鎮圧していました。私も怖くて逃げようとした時、鏡を見せられて…気づくと剣を持ち、多くの兵隊が倒れていました」
「…」
みんな黙って聞いている。
「カレンさん、ありがとうございます。事実かどうかはさておき、話す姿勢がみられたので、治療を継続してもらい、タイミングをみてまたお呼びします」
質問官は除名処分を一旦回避した。
彼らも忙しいのだろう。
カレンに病室まで同行する。
「ねえ、レフト」
「ん?」
「…私…死ぬの…かな…」
次回へ続く。
機械墓地には大規模な結界が展開され一部関係者しか実体がつかめずにいた。
術主の魔力が途絶えたことで結界は消失した。
現在はテントで出入りの管理をしている。
今後は小屋を新設して墓地の危険箇所を除き自由に研究や採集できるようにする方針らしい。
「失礼します」
レフトはいつかのようにカレンの件で機関から呼び出されていた。
「お忙しいところ申し訳ない」
質問官は三人。
うつむいたカレンからは生気が感じられない。心ここに非ずといったところである。
「単刀直入に言います。あなたの知っていることを全て話して下さい」
質問官は前回のように遠慮や配慮はない。
「…」
「わかりました。シーキヨは再び復興するため多くの方が尽力しております。あなた一人に時間をかけるわけにはいかないのです」
「…」
「カレンさんはもういません。よってあなたはあなた本人としてこれから生きていかねばなりません。先のことをどうするのか決める者はもういません」
「そうだね、カレンと名乗る必要すらないだろうね。あなたはカレンとは違う」
レフトとカレンにはいろいろ事情がありそうだ。
ゆえに戦闘不能にはしたが命を奪ったりはしなかった。
ある日の復興機関での出来事である。
レフトはオメガ、ニナと機関の待合室で待機していた。ニナは初陣だが、実力は相当なもので、この討伐依頼は楽勝だろうと言われていた。辺境に場違いなモンスターが生息しており、その討伐が任務だった。
「それじゃあ向かおう」
レフトは席を立つ。
「待って下さい」
出発する三人を呼び止める声がする。
ニナの同期であるカレンだ。
「私も一緒に連れていってほしいのです。上層部の許可はあります」
「あなたチームは三人って規則を破るつもりなの。そもそも念願の治安課へ配属してもまだ納得できないの?」
ニナがカレンを拒否する。
オメガは上が許可したなら仕方ないというアンドロイドらしい対応だ。
「新人を含む討伐依頼はとても大変でそれが二人。いくら上が許可しても現場の責任者としては許可できないよ」
レフトは冷静に応対する。
ニナはレフト、オメガと座学や生活の一部を共有しており初対面というわけではない。三人はある程度の連携が期待でき、現場に出て実戦するためレフトが依頼を受けたのが経緯である。
「私はお荷物にはならない。一回だけで良いです。レフト、オメガさん、一緒に連れていって下さい」
「レフト、同行させてはダメ、彼女は私と同じで実戦経験が無いわ。これ以上あなたやオメガに負担はかけられないし、規則を守るためにも三人で出発すべきよ」
相反するニナとカレン。
「レフトさん今回のみ許可してほしい」
なかなか出発できない状況に、当時の情報課重鎮ゼットがレフトに頼んだ。
「彼女にチャンスを与えてほしいのです。ムリを言うので埋め合わせはします。もしトラブルがあれば私が責任をとります」
ゼットはカレンの保護者のような印象だ。
親が子を送り出す、そういった感じだ。
「わかったわ。私はもう何も言わない」
結局ニナが折れて、不安ながらも四人で出発となった。カレンはニナへの競争心が強く、このような度を超した個人的な感情は団体行動や組織では望まれず、緊迫した状況下での個人プレーは危険である。
会話もなく目的地へ到着する。
洞窟らしき薄暗い穴があり、ここがモンスターの巣だと言われている。密林の奥地に草木で隠されたようなその洞窟は、いかにもという感じだ。
我先にと洞窟へ入ろうとするカレン。
それに呆れるニナ。
レフトとオメガはカレンをすぐ追いかける。すると巨大なさそりとぼろぼろの服に右手が義手の老人が穴から出てきた。
「ふぉ、実験体がまたきよったか」
老人は杖を取り出し魔法を放つ。
カレンは魔法で拘束され身動きを封じられ、そこにさそりの攻撃が命中する。
尾が身体に刺さり致命傷を受ける。
手慣れた連携によりあっという間にカレンは戦闘不能にされてしまった。
「ちっ、警戒心がなさすぎよ。レフトお願い、彼女に治癒魔法を。私とオメガで片付けるわ」
「ふぉふぉ、実験体は渡さんぞ」
老人はガード魔法を展開する。
杖から光り輝くベールのようなものがカレンを包む。
レフトはゆっくり右腕をカレンに向ける。そして右手を握りしめた。
すると空間が歪み、カレンがレフトの側に転移した。
「ふぉ! なっ…なんと…」
老人は目の前で起こった出来事に一瞬驚くがすぐさま応戦しようと杖を構えた。
そこへ弾丸が命中し、老人は杖を落としてしまう。体勢を崩すほど強烈な弾丸がさらに二発、義手に命中し義手はバチバチと黒煙を上げそのショックで老人は膝をついてしまった。
左手で謎の液体を取り出すが、ニナはよろけた隙に距離をつめていて液体を奪った。格闘による近接攻撃にて腹に一撃、さらにショートした右腕をもぎ取り、老人は一瞬で戦闘不能になった。
巨大さそりはキューブを鉄の塊のような鈍器に変形させたオメガにより尾や胴を潰された。押し潰されたさそりは体液が飛び散りもはや原型はない。
「…お…おぬしらは…何者じゃ…」
老人は咳き込み吐血しながら問う。
「あんたを逮捕しにきたのよ。少しやり過ぎたけど、死にはしないから大人しくしなさい」
ニナは手際良く老人を捕縛した。
カレンはレフトの治癒魔法を受けている。
「傷は見た目ほどひどくないが毒がやっかいだね。この地域は洞窟内に解毒茸が必ずあるはずだよ」
「やれやれ、わかったわ。オメガ、一緒にきてくれる?」
「うむ、レフトの言うように解毒茸はこの地に自生しておる。急ごう」
二人は特殊な服を着て洞窟内へ入っていった。
二人きりになったレフトとカレン。
「…私…死ぬの…かな…」
「大丈夫だよ。解毒すればすぐ良くなる」
レフトは不安そうなカレンを優しく諭す。急な攻撃に反応すらできなかった自分が憎いのだろう、カレンは涙を流す。
「おいおい、初陣なんだから仕方ないよ。これからは素早く動けるようになればいいし、自分を恥じることはないよ」
「レフト、私はあなたを目標に努力するわ。回復してくれてありがとう。あなたにはけっして刃は向けないと約束する…」
そう言い残してカレンは気絶した。
ゆっくり目を開けるレフト。
過去にあった出来事を思い出していたようだ。カレンはニナのような逸材ではなかった。気が強く強引ではあるが努力して皆の手本となるべく鍛練していた。
そういう姿に多くが惹かれシーキヨでは活躍していた。努力と周囲への感謝を忘れない良きリーダーだった。
「ではこれ以上時間はとれないので、決定事項を読み上げます」
質問官は早々に終わらせようとする。
「…あの…」
カレンは小さく弱々しい声で発言する。
「…鏡…鏡のようなモノがあって…」
「鏡?」
みんなが一斉に反応する。
「内部で争いが起こるとソサリが鏡で鎮圧していました。私も怖くて逃げようとした時、鏡を見せられて…気づくと剣を持ち、多くの兵隊が倒れていました」
「…」
みんな黙って聞いている。
「カレンさん、ありがとうございます。事実かどうかはさておき、話す姿勢がみられたので、治療を継続してもらい、タイミングをみてまたお呼びします」
質問官は除名処分を一旦回避した。
彼らも忙しいのだろう。
カレンに病室まで同行する。
「ねえ、レフト」
「ん?」
「…私…死ぬの…かな…」
次回へ続く。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ファンタジー/ストーリー5
雪矢酢
ファンタジー
この作品には転生系の要素はございません。
また、ループなどの構成を排除したシンプルで分かりやすい内容を目指しています。
◇作品紹介◇
作中最強の主人公や個性豊かなキャラクターが活躍するシンプルなお話です。
物語は最終章へ突入、滅びの運命に抗った者たちや世界の行方を見届けよう。
(内容紹介の詳細はお手数ですが第一期をご覧下さい)
※誤字脱字は可能な限りチェックしており不備は修正いたします。修正により本編内容が変更することはございません
表紙:イラストAC yumazi様より
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ファンタジー/ストーリー3
雪矢酢
ファンタジー
注意!
この作品には転生系の要素はございません。
第一期から読むほうがより作品を楽しめます。
隙間時間で読める、謎は残さない、読者に結末を委ねない後味の良い作品を目指しております。
◇作品紹介◇
魔法剣士が主人公のお話です。
ファンタジーをベースに、強い主人公や個性豊かなキャラクターが活躍するシンプル構成でわかりやすいエンターテイメント風な物語です。
組織から離れた主人公の活躍にご期待下さい。
(内容紹介の詳細はお手数ですが第一期をご覧下さい)
※誤字脱字は可能な限りチェックしており不備は修正いたします。修正により本編内容が変更することはございません。
表紙:イラストAC arayashiki様より
ファンタジー/ストーリー2
雪矢酢
ファンタジー
転生しないファンタジー作品です。
第一期から読むほうがより作品を楽しめます。
謎は残さない、読者に結末を委ねない、後味の良い作品です。
◇作品紹介◇
魔法剣士が主人公のお話です。
ファンタジーをベースに、強い主人公や個性豊かなキャラクターが活躍するエンターテイメント風な物語です。
シンプルな構成でわかりやすいお話です。
(内容紹介の詳細はお手数ですがシーズン1をご覧下さい)
※誤字脱字は可能な限りチェックしており不備は修正いたします。修正により本編内容が変更することはございません。
表紙:イラストAC ガジャマル様より
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる