ファンタジー/ストーリー

雪矢酢

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第一章

十四話 復興機関の決断

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戦争が始まった。

レフトたち復興機関は負傷者の救護に追われていた。巨大なモンスターが城下を進行するが、国家の大砲がそれを爆撃する。
逃げ惑う市民、武器を手に取る市民など、シーキヨは激しく荒れている。

「負傷者が増えてきて医者が圧倒的に足りません。医療設備や薬品の類いは十分にありますが肝心の医者が不在では…」

モモが状況をレフトに報告する。

「どっちもまだ様子見だろう。お互いに切り札のようなものがありそうだ。それを使えば最悪シーキヨは滅んでしまうかもしれない」

今は牽制程度で腹の探り合いの戦争だろうが、それでも市民が巻き込まれている。

「はい、それは私も感じています。巨大モンスターや墓地から発掘した兵器など、今まで未知だったものが突如現れ、お互いがそれを小出しにしているようです」

モモもレフトと同じように争いが激化することを感じている。

そんな時、緑色の照明弾が上空に確認される。

「緑?」

「本部のオメガ様が照明弾を用途別に分けるようマニュアル化したのです。緑は肯定であり、申請した仲裁に入ることについて本部が許可したようですね」

モモはバサッと資料を出して、

「赤は中止や危険などです。ここに詳細があるのでぜひご覧になって下さい」

レフトはモモにミツキを迎えに行くように指示した。ミツキは医者を多数引き連れ帰還、これにより機関は医療所として多くの
負傷者に対応できるようになった。

双方に大きな動きが無いこの状況に機関は今後の方針を決めようとレフトらを召集した。


「レフトーラさん、モモさん、ミツキさん、皆さんの意見が聞きたい。集まってもらいありがとうございます」

「あと一人、とても重要な人物がまもなく到着します」

レフトはシフを待っていた。
諜報に出てかなりの日々が経った。

「シフ? ああ、案内係の方でしたね」

「ええ。彼の情報が終戦となるような気がして…」

「そうですね、今は落ち着いていますが、またモンスターやら爆撃だの始まればここは修羅場になりますものね」

ガチャと扉を開けてシフが入室する。

「お待たせして申し訳ない」

一礼し席に着くシフ。

「でははじめましょう。シフ、まず報告をお願いいたします」


「はい、私はシーキヨをより深い内部より把握しようとして、裏をみてまいりました。結論といいますか、この戦争はシーキヨの新旧争いです。鋼鉄のさそりは旧体制、つまり機械墓地の無かった時代を取り戻そうとしています」

文明が滅びる前?
誰もがそのワードに困惑する。

何か理由があって文明は滅んだと思われるので、ただ再びよみがえらそう! としても、いろいろと難しいだろう、というのがみんなの感想だろう。

「高度な文明があったのは墓地を見ればわかるのですが、そんなことよりも何か恐ろしいものが墓地には眠っている、私はそんな感じがするのです」

モモの真剣な眼差しがより怖い。

「恐怖を封じ込め文明が滅びた、それの可能性は十分あるでしょう」

シフはさらに続ける。

「その恐怖がもし再び復活したら…」

みんな沈黙してしまう。
得たいの知れないものは皆怖い。
まして戦争が始まり日常は失われ、緊張感のある日々が続いている。機関の人間は戦闘の動向などで神経質になっている。
市民は将来の不安や襲撃の恐怖により精神的に追い込まれている。もちろんなかには戦争を楽しむ者もいるだろうが…少数だろう。

「鋼鉄のさそりの戦力はどうだ?」

レフトはシフに問う。
シフはノートのような本を取り出し、それを見ながら答えはじめた。

「四将軍や優れた人間のクローン兵など戦力はかなりのものだろう。四将軍とは鋼鉄のさそりの幹部連中であり、レフトさんは面識がある猛毒のスコーピオン、皆さんご存知の狂気の科学者ゲーハ、冷酷無慈悲なサイボーグガトリン、一時期暴走し、脱走したりして制御不能だったらしいが四将軍最強の女剣士カレン」

…どれも知っている面子だな…。
レフトはそう感じた。

「それぞれが高い戦闘力を持ち、多くの戦闘を経験してきた猛者です。一人たりとも油断は禁物かと」

「ゲーハ、あの科学者、やはりカレンさんと関係があったのね。集落にいたのも納得だわ」

モモは自身の中にあったモヤモヤに納得したようで、敵ではあるがカレンを心配する。そんな彼女には残酷だが、レフトは事実を告げる。

「モモ、本当のカレンはもういないんだ、あのカレンは複製人間だ」

「えっ」

モモは動揺し状況を理解できない。

「詳細はわからないが、カレンはさそりと戦い負けてしまった」

「…そんな、私…」

ショックだったのだろう、モモは部屋を飛び出してしまった。レフトはどんなにつらくて真実を伝える、それゆえにレフトを非情だの噂する者もいる。しかしモモはその時はショックでも、事実を受け入れきっと立ち直れる、そうレフトは信じていた。

「機関も複雑な事情がありそうだが、今は緊急事態だ。個人的な感情は戦局にも影響する」

シフは戦争に集中するように皆へと伝える。

「私は機関の人間ではないが、この戦争
を最速で終戦されるため尽力するつもりです」

「仲裁許可はあるがあくまでも機関は中立。まずは使者を出して双方の正義を聞こう」

レフトは最速で終戦することが市民の願いであり、シーキヨを再び平和な国家にすることが機関の使命だろうと説く。

「わかりました。国家への使者は情報課から出します。さそりに関しては危険があるため、レフトーラさんとシフさんでどうでしょうか?」

「私は機関の人間ではありませんが」

「ええ、そうです。国家の使者としてですよ。レフトーラさんがいれば四将軍だろうが、墓地そのものを吹き飛ばすこともできるでしょう。つまり、ある程度武力を持っていかないと対等に話し合うことはできないでしょう。鋼鉄のさそりに歩み寄りは無さそうですし」


モモは情報課とミツキがフォローし、三人は集落へ避難した。


レフトとシフは、墓地へ向かう。

「ガトリンは既に破壊した」

「えっ」

「襲われたから破壊した」

「…そうですか…」


うわ~絶対に荒れるよ、これ~


シフは死地に向かう侍のような気持ちだ。



次回へ続く
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