ファンタジー/ストーリー

雪矢酢

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第一章

一話 それぞれの依頼

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重苦しい空気の室内。
レフトには暗い過去があるようだ。
それをニナとオメガは知っている。
沈黙は続く。

トントン

扉を叩く音がする。

三人はふと我に返り扉のほうを向く。

「どなたか、名と要件を述べよ」
オメガが発する。
「私は武器商人のウエポンと申します。捕らえたカラスについてご報告があり参りました。中に入れてもらえませんか」

「なるほど」

機関に直接伝えればよいものを、わざわざこちらに報告とは不自然である。
何かを察したレフトは剣を手に取る。
「ニナ、後方を頼む、無力化してくれ」
レフトはそう言うとオメガと目線を合わせる。
「機関に引き渡した者の情報は公開できない、報告は機関にされよ」
「もちろん規則は承知しております。ただ我々はあなた方へどうしても報告がございます。どうか中へ入れて下さい」
「我々?あなた一人ではないのですか」

「…」

オメガの冷静な対応にウエポンは沈黙する。
そしてなにやらガサゴソ音がする。
「攻撃がくる。レフト、構えよ」
オメガがそう言うと、バンっと扉が打ち破られ、
レフトへ向け短剣が二本飛んでくる。
それをオメガが腕で止める。キンッキンッと、金属が磁石にくっつくような状態だ。
アンドロイドであるオメガはそういう人間離れした芸当が可能である。

「バ、バカな、人じゃねえ」

ウエポンが雇ったと思われるごろつき二人は動揺している。そこへニナが気配を消し近づき二人の足へ発砲する。銃身にはサイレンサーらしきものが取り付けられ、わずかな銃声しかせず、被弾した二人は倒れ込む。二人に銃口を向け、もう一丁銃を取り出しウエポンへ向ける。

「ひっひぃい」

ウエポンは手をあげ投降を示す。
一瞬だ、戦闘に優れた三人はあっという間にごろつきと武器商人を無力化した。

「武器商人がずいぶん物騒なことをしたね」
レフトはゆっくりと話す。
「カラスはお得意様だったので、捕まると困るのです。脅迫して居場所を聞き出す予定でした」
怯えながらウエポンは話す。
「居場所がわかったところでどうするのよ、襲撃でもするのかい?」
ニナは拳銃を仕舞い腕組みをして問う。
「場所さえ分かれば奪還できる」
ウエポンは怯えた口調だが、自信があるようだ。
ただの武器商人ではない。
オメガはゆっくりとウエポンへ近づく。
そして右腕を攻撃して骨を折る。
「ぎゃあーっ」と悶絶するウエポン。
しかしレフト、ニナは動じない。
「次は左腕を破壊します」
「ま、待ってくれ、私は商人だ、こんな暴力を復興機関は許すのか」
話は聞かずオメガは左腕を破壊する。
ボキッと鈍い音がする。
「うぎゃっ」
ウエポンは痙攣して倒れ込む。
「芝居は無意味だ、軟体生物の反応があるあなたはこれしきではダメージを受けない」
オメガは倒れ込んだウエポンへさらに追い討ちをする姿勢をとる。レフトはごろつき二人を連行するためオメガに手を振り部屋を後にする。近くにある復興機関の支部へ連れていくのだ。宿主に金貨を渡し部屋に危険生物がいることを説明し、宿泊客を一時避難させるように指示。部屋では倒れ込んだウエポンが溶けて、ジェル状の物体に変異していた。
ニナは構え、拳銃に特殊な弾薬をつめている。オメガは金属のような小さな立方体を取り出した。
「液体化した私にはどんな攻撃も効かない。さあ、カラスはどこだ」
ウエポンは形状を刃物に変形し二人に迫る。
立方体を手にしたオメガはなにやら念じると、それは巨大なフライパンを形成、煙りがあがり、見た目で高温だとわかる。
「!」
事態を悟ったウエポンは逃亡しようとするが、ニナの弾丸がウエポンの真下に着弾。すると一気に凍結してウエポンは動きを封じられる。そこへ超高温のフライパンが直撃し、ウエポンは蒸発した。
「素直に商売していればこうはならなかっただろうにね」
ニナは首を振りながら呟く。
「おそらく武器商人や犯罪者を操る巨大な組織が存在するのでしょう」
オメガはカラスもウエポンもただの小悪党と分析しそれを裏で支配する連中を見つけねばならないと解く。
「さすが情報課、鋭いわね」
「後始末は機関へ任せよう、伝達しておく」




ギモンがまた少し世界観について説明するわ~



復興機関は主に三つの課で構成されいる。

情報課
オメガが所属する文字通りあらゆる情報を集まるデータベースのような部署。優秀な学者や技術者が多く、アンドロイドはオメガ一人であり、やや特殊なポジションである。市民が機関へ依頼する場合はこの情報課へ申請する。

派遣課
長期的な任務や依頼の情報確認、生態系の調査等、現場での実務が中心の部署。場合によっては生死の危険があり、優れた人材のみが配属される。ニナが所属している。

治安課
情報課が受けた市民の依頼を遂行する部署。警察のようなイメージで戦闘能力だけでなく、柔軟性が求められ多くの雑務等もあり、総合力が求められる。レフトが所属している。

このよう独立した各課が、それぞれ一名ずつ人材を出してチームが組まれる。治安課がリーダーとなり依頼にあたる。
三人で行動するチームもあればバラバラで個人個人行動するチームもある。

人材に合わせたスタイルでチームを組んでいるため、依頼には臨機応変に対応できるようだわ~。



カラスの一件は片付き、怪しい武器商人はおそらくヘルゲートの一派で、人体改造された人工モンスターだろうというのが機関の見解だ。三人はそれぞれ機関に呼び出され状況説明と今後についての話し合いがされていた。

「レフトーラさんはシーキヨへ向かって下さい。そこで新しくチームを組み、依頼を受けて頂きたいです」
機関の情報課がそう告げる。オメガとニナはそれぞれ別の単独での特別な任務があり、レフトにもシーキヨで特別な依頼を受けてほしいとのことだ。
「シーキヨの支部はカレンが指揮しているはずで、彼女のチームは機関でも屈指のチームだと思う。それに彼女を慕う部隊がありそこへわざわざ私が向かう理由がわからないです」
レフトはそう伝える。

「治安課カレンは現在行方不明で、彼女らの構成部隊は全滅したと言われております。シーキヨ支部は現在情報課のゼットが管理しておりますので早急に合流して頂きたい。そしてレフトーラさんには秘密裏にカレン周りの事情を調べてもらいたい。機関はカレンがシーキヨに洗脳され部隊を全滅させたと推測しております。カレンは貴重な人材であり、相当な戦闘能力があるため、レフトーラさんしか適任がいません」
情報課の幹部はマシンガントークでレフトを説得する。しかしレフトはカレンが行方不明という事実にショックを受け、話が全く頭に入らない。

「シーキヨはわりと平和だぞ、いったい何があった?」
レフトは心の中でそう思い、シーキヨ行きを受け入れた。

それぞれ話し合いが終わり、支部のロビーで待ち合わせる。
「今回は事態が緊急であり、大陸で何かが起ころうとしているのかもしれないわ」
「…また文明が消し飛ぶのか」
レフトはニナに皮肉を言う。
それをニナはニコニコ笑いながら、
「カレンには気をつけなさいよ、油断しているとあなたの首が消し飛ぶわよ」
ニナとカレンは同期であり相性は最悪。
お互いに何かを感じることがあり常に喧嘩。ニナは本来治安課へ所属予定だったが、カレンが派遣課を拒否したため、彼女が派遣課となり、カレンは治安課配属となった経緯があるのだ。

「一時的に別行動になるけど私はあなたたち以外とは組まないわ、オメガもそうでしょう」
ニナはやや強い口調で言う。
「無論、受けた仕事はデータベースの整理だ、人がやるよりアンドロイドが整理すれば正確確実迅速だ。二人を誰よりも信じている」
オメガも続けて答える。
「レフトはちょっと暗いけど頼れるリーダーよ。だからこそ、シーキヨではいつも以上に冷静にね」
ニナはレフトが少々心配のようだが、オメガが肩をポンと叩く。
が、オメガは力が強力でニナは顔を歪める。
「力みすぎよ、レディには優しくしてね」

「おっと、すまぬ。申し訳ない」
何気ないこの会話にレフトは暖かみを感じていた。
そして三人はそれぞれ歩き出す。

次回へ続く



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