上 下
11 / 41
第一章

十話 真実と決着

しおりを挟む
ギィィッ

ゆっくりと広間の扉は開けられた。
人もモンスターもいない。
六人は外に出て、すぐに扉を閉めるように指示した。

「さて…」

「真っ直ぐ進みましょう。すぐ近くに警備モニタールームがあり、屋敷の全体を把握できます」

ダグの言葉を聞き、皆、周囲を警戒しつつ歩き始めた。
だがモンスターというか人の気配すらない。

「…妙だぜ…」

「えっ」

レオは歩きながら考えていた。

歩いてすぐに鳥が窓をぶち破った場所に到着した。
レオとアレサはその現場を調べた。

「ちょっとお二人さん、離れないで下さい」

ジジがそんな二人を注意する。

だが…。

「これは…」

その現場をみて絶句するジジ。

「…内側から破壊されている…」

「そうだ。あの襲撃は屋敷の誰かが外部から攻撃してきたかのように見せた芝居だったんだよ」

レオは推理ものの探偵並みに謎解きをした。

その瞬間、ゲイルは突然銃口を他の五人に向けた。
急展開に驚くレオやダグたちだったが、アレサは氷のように冷たい視線で冷静だった。

「おい、誰なんだ」

「落ち着いて下さいゲイルさん」

ジジがなだめるが興奮状態のゲイルは息づかいが荒く今にも発泡しそうだ。

「芝居はやめろ、犯人はお前だろ」

興奮状態の者をさらに刺激するダグ。
なんと懐から拳銃を取り出し銃口をゲイルに向けた。

「おいおいおいおい」

レオは更なる急展開に身構えた。

「お二人ともお止めください」

ジジも身構えて二人を制止する。
シルクは腰を抜かし言葉を発せぬようだ。

「黙れっ、だいたいこの執事は前々から胡散臭かったんだ。この場で消してやる」

ゲイルは引き金に指をおく。


「やめろっ」


レオは床を殴り皆の視界を奪った。
そして、その隙に二人を抑え込もうとしたが、なんと二人はおろか、ジジやシルクまでもが地にひれ伏してた。

その光景にガタガタと震えるレオ。
その後ろにはアレサがいた。

「良い判断ね。お見事」

トンとレオの首に一撃をみまい気絶させた。
これでアレサ以外は皆行動不能となった。

「ふう、さっさと終らせて休みたいわよ。後は外ね」


アレサは窓を破り外に出た。


外にはなんと多数のモンスターに囲まれた大蛇がいた。


「この地が小さいながらも発展していた理由がわかったわ。幻獣の加護ね」


「ほぅ、お主、人ではないな」


「事を荒立てるつもりはないわ。私たちは静養したいだけ。あなたの狙いはダグでしょう」


「ふむ、なかなか話がわかるな。我はこの地の人間たちに救われたのだ」


すると後方より人が駆けつける。
その人物はジジだ。


「お止めください奥様。ゾルム様はこの集落の守り神。ここは幻獣と人が共存する地なのです」


必死にアレサを説得するジジ。


「大戦で負傷でもしたのかしら。そこを人間に救われたといったところかしらね」


「なるほどお主の正体がわかったわ」


二人はお互いに干渉は避け構えを解き和解した。
戦いにならずほっとしたジジ。


「ジジは好きにするといいわ。私とレフトはほっといてちょうだい。さすれば何もしないし、手が必要な時は全面的に協力を約束するわ」

「ありがとうございます奥様」

「よかろう。なら我も世が乱れた時は助力を約束しよう。ここに住むもよし。好きにするがいい」

ゾルムは白銀の腕輪をアレサに投げた。サイズ的にレフトがはめるのはムリそうだ。

「ゾルム様、わざわざありがとうございます」

ジジは深くお辞儀をし見送った。

「奥様、これからすべきことは…」

「幻獣は物分かりがいいから楽だけど人はそうはいかないわ」

「と言いますと?」

「あの鳥は幻獣が引き連れたモンスターではないでしょう」

「…それは……」

「あれは魔術師が召喚したモンスターよ」

「…」

沈黙してしまうジジ。
アレサはやれやれと言った表情で続ける。

「ダグは幻獣を追い出して人だけの集落にしたかった。だけど幻獣と共存してこその集落と思っていたあなたはそれを阻止したかった」

「…はい」

「だけどそのタイミングで目的はわからないけど魔術師が紛れ込んだ」

「住民に危害は加えたくなかった。あの襲撃は予想外でした」

「魔術師はおそらくレオよ」

「レオさんが…しかし…」

「ええ、自作自演だったのよ」


その時屋敷の壁を破りレオが外に出てきた。


「あら、もう騒動は解決したわよ」

「アレサさん、あなたとは戦いたくない。俺の望みは大蛇の血だけだ」

「なんとっ」

「またえらく懐かしい言葉ね」

「まずここの住民を襲撃して申し訳ない。あの召喚は魔力の誤作動でした」

「ふっ、襲撃現場で器をすぐに回収してわね。それがあなたを魔術師と思った理由よ」

「お見事です。俺はあなたやレフトさんが優しく強いことがすぐ分かりました。だからここは引いて下さい」

「引くって私たちは何もしないわよ。あなたは大蛇の血で難病を治したいのでしょう?」

「はい、ミーナが…後一年で…」

「なるほどね。ジジさんゾルムさんに頼んでみたら?」

「ええ。消えゆく命をきっと救済してくれるでしょう」

それを聞くと泣き崩れるレオ。
チャラチャラしていた印象はそこにはない。


「これで一件落着だね。ようやく休めるわ」


「まだだ」


その時、ゲイルとシルクを抱えたダグが現れた。
注射針が腕に刺さり目は血走っている。


「あらら、モンスター化しちゃってどういうつもりかしら」

「黙れ、マスターはお前とレフトーラには手を出すなと仰っていたが、もう我慢ならん」

「やめんかジジ。そのマスターは私だ。表は住居案内人として、裏では人知れずこの集落を取りまとめていたのだ」

「なんだと、マスターが…」

「ダグ、お前の能力は十分評価している。だから冷静になるのだ」

「くっ、だまれ、今さらひけるか。覚悟」

ジジの説得を振り切りアレサに襲いかかるダグ。


「もういい加減にしなさいっ」


アレサは闘気を解放した。
久しぶりだったので手加減ができず、衝撃波で屋敷の壁や窓が破損。アレサの立つ地面は激しく陥没し、エネルギーの凄まじさがわかる。


レオは多少魔力が使えるためその闘気の質を理解し腰が抜けたようだ。
ダグは吹き飛び屋敷の壁に激突。

「なんと…幻獣を…上回るその力」

ジジもレオ同様に腰が抜けて立てない。


「もう私はレフトと休ませてもらうわ」


すぐに闘気を払い屋敷に戻るアレサ。
その様子をみてレオは呟く。

「恐妻家だろうか…」


次回へ続く





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ファンタジー/ストーリー3

雪矢酢
ファンタジー
注意! この作品には転生系の要素はございません。 第一期から読むほうがより作品を楽しめます。 隙間時間で読める、謎は残さない、読者に結末を委ねない後味の良い作品を目指しております。 ◇作品紹介◇ 魔法剣士が主人公のお話です。 ファンタジーをベースに、強い主人公や個性豊かなキャラクターが活躍するシンプル構成でわかりやすいエンターテイメント風な物語です。 組織から離れた主人公の活躍にご期待下さい。 (内容紹介の詳細はお手数ですが第一期をご覧下さい) ※誤字脱字は可能な限りチェックしており不備は修正いたします。修正により本編内容が変更することはございません。 表紙:イラストAC arayashiki様より

ファンタジー/ストーリー5

雪矢酢
ファンタジー
この作品には転生系の要素はございません。 また、ループなどの構成を排除したシンプルで分かりやすい内容を目指しています。 ◇作品紹介◇ 作中最強の主人公や個性豊かなキャラクターが活躍するシンプルなお話です。 物語は最終章へ突入、滅びの運命に抗った者たちや世界の行方を見届けよう。 (内容紹介の詳細はお手数ですが第一期をご覧下さい) ※誤字脱字は可能な限りチェックしており不備は修正いたします。修正により本編内容が変更することはございません 表紙:イラストAC yumazi様より

ファンタジー/ストーリー4

雪矢酢
ファンタジー
この作品に転生系の要素はございません。 第一期から読むほうがより作品を楽しめます。 隙間時間で読める、謎は残さない、読者に結末を委ねない後味の良い作品を目指しております。 番外編には挿し絵を入れてみましたので、ぜひご覧下さい。 ◇作品紹介◇ 魔法剣士が主人公のお話です。 ファンタジーをベースに主人公や個性豊かなキャラクターが活躍するシンプル構成です。分かりやすいエンターテイメント風な物語をお楽しみ下さい。 神に匹敵する力を持つ魔法剣士の活躍にご期待下さい。 (内容紹介の詳細はお手数ですが第一期をご覧下さい) ※誤字脱字は可能な限りチェックしており不備は修正いたします。修正により本編内容が変更することはございません 表紙:イラストAC yumazi様より

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ファンタジー/ストーリー

雪矢酢
ファンタジー
◇作品のコンセプト◇ 転生しない、話が複雑になる要素や構成は排除、誰でも謎が解けるわかりやすいシンプルな構成、ちょっとした隙間時間で読めるように文字数を調整、文章を読むのが苦手な方でも読書習慣が身に付くような投稿方法を考えてみました。 筆者の自己満足ではなく、読む側、書く側が楽しめるモヤモヤしない後味スッキリの作品です。 ◇作品内容◇ 文明が崩壊してしまった世界。 人類はどのように生きていくのか。 そして文明は何故滅びてしまったのか。 魔法やモンスター、剣などのファンタジーをベースにしつつ、機械、近代兵器が登場する独特の世界観、圧倒的な強さの主人公などの個性的なキャラクターたちが登場し活躍します。 「復興機関」という組織に所属する主人公を中心に話が進みます。 通勤、通学中や暇つぶしなど隙間時間にさっさと読める、一話1000文字~3000文字程度で連載していく長編です。 バトルや人間模様、ギャクにシリアスな謎解きなど、思い付く要素を詰め込んだエンターテイメント風な物語をお楽しみ下さい。 ※誤字脱字はチェックしており不備は修正いたします。修正により本編内容が変更することはございません。 表紙:イラストAC まゆぽん様より

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...