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第一章
ハ話 武器を手に
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「ダグ、武器を。モンスターが迫っている」
ここに攻めてくるのは時間の問題。
必死に説得を続けるジジ。
「…わかった……これを…」
ダグは鍵の束をジジに渡した。
鍵にはそれぞれ色のついたテープが貼ってありとてもカラフルだ。
「そこの通路を真っ直ぐいったところに倉庫がある…武器庫だ。鍵の色は赤だったと思う」
通路を指差すダグ。
「よし、動ける者は何名か手伝って下さい。医療に心得がある方は射たれた方の手当てを。救急箱はダグにもらって下さい」
的確な指示で人を動かすジジ。
「視力に自信のある方は表に出て見張りをお願いします」
抜群のリーダーシップで場を統率していく。
「元軍人かもしれないわね」
「そうかも。一般人ではないのは確かだね」
その様子をみていたアレサとレフトはジジのただ者ではないその行動力などに感心していた。
皆が一斉に動き出す。
「お二人は移動している団体に着いていき奥の大部屋で休んでいて下さい。そこなら安全です」
「ありがとう。じゃあレフトいきましょう」
ふらふらのレフトをゆっくりと起こし、二人はその大部屋へと向かった。屋敷の中は外観以上に広く感じた。
「…ふぅ…」
「どうしたの急に?」
「いや、身体が動けばなぁ…と」
「ふーん、ここへ来た理由を忘れちゃったのかしら」
アレサは人差し指でレフトの顔をツンツンする。
「ぅう…」
「確かにモンスターの気配は感じるわ。だけどジジさんの言う通りで弱小モンスターよ、住民たちで十分対処できるわ」
「そうだね、ありがとうアレサ」
二人の会話を聞いていた若い男女が近づいてくる。
「仲が良いですね。旦那さんはご病気ですか」
「えっ……そうです…リハビリ中でして…」
突然話しかけてきた女性。
奇抜な格好で独特の雰囲気がある。気難しい印象っぽいが話すと普通でそのギャップにアレサは驚いた。
「具合が悪そうっすね。手をかしますよ」
その女性の相方であろう男性は、ド派手な格好でチャラチャラしてそうな印象である。
だが、気が利く優しい男性であり、歩行が困難なレフトを支えてくれた。
「ありがとうございます」
「俺はレオっていいます」
「レオさん、申し訳ない。レフトです。妻のアレサです」
「困っている時はお互い様っすよ。それより本当、顔色悪いっすね」
「ねえレオ、外が騒がしいわよ。あ、私はミーナよ」
アレサもレオ同様に外の様子が気になるようだ。
「広間へ急ごう」
レオはレフトに負担がないように抱え込み小走りで広間へ向かった。
次第に大きくなる外の音により、集団は不安で軽いパニック状態となった。
「危ないわね、恐怖から我先に広間へ向かおうとして……」
ミーナが集団を指摘した次の瞬間、
鳥型のモンスターが窓ガラスをぶち破り屋敷に侵入してきた。
「奥へ逃げるんだ。早くっ」
武器を手にしたジジたちが勢いよく走ってくる。
「ずいぶんと早く攻めてきたわね」
パニック状態となり慌てる周囲とは対照的に冷静なアレサ。
窓ガラスからは翼のある鳥型モンスターが次々と侵入してくる。
武装したジジたちが集団のしんがりとなり、逃亡の時間をかせいでいる。
だが数が多く、何羽かの鳥が集団へ襲いかかる。
「くっ…これでは銃を使えない…」
住民の方向に発泡するわけにはいかない。
鳥はそんな事情など関係なく集団に紛れ込み人々を襲う。
「みんな伏せるんだっ!」
突然大声をあげるレオ。
なんと両手には魔力が収束している。
言われた通りみんな一斉にかがんだり、倒れこんだりしながら姿勢を低くくした。
「レフト、かがんでちょうだい」
「…これは爆破の魔法…」
「うん、鳥は飛んでるから上空を爆破させるみたいね」
放つタイミングを狙うレオ。
鳥はこの事態に気づき、レオめがけて突撃していく。
「終わりだ」
レオの魔法が放たれると、まるで花火のような閃光と音がして鳥たちは丸焦げになった。
「さあ今のうちに奥へ」
レオの声に反応したジジたちは、起き上がりすぐさま破られた窓ガラスを補強した。
「レフトさんいきましょう。これでしばらくは大丈夫です」
レオはレフトの肩に手をかけてゆっくりと歩き出した。アレサと二人でレフトを運び、ミーナがそんな三人に人がぶつからないようにガードしている。
「魔法が使えるんですね」
「はい、でも魔法は特別珍しいもんでもないっすよ」
「おかげで助かったわ、ありがとう。あなたはみんなのヒーローだね」
アレサは住民を救ってくれた事に感謝した。二人の身分は気になるが、今はただ、多くの命を守った事実に敬意を表した。
「そんな軍人みたいに堅苦しいの無しっすよ。あざす!とかフランクにいこういこう」
「ふっ」
つい笑ってしまったレフト。
それに過剰反応したアレサは、レフトの脇腹を軽くつねる。
「あらレフト。どうせ私はお堅い軍人ですわ」
「いたたたっ、お優しい軍人さんですこと」
その様子を見て微笑むレオとミーナ。
そんなこんなで広間へ到着し、ようやくレフトを寝かせる。
広間は文字通りとても広く、集団が長期間生活できるくらい設備が充実している。
食料の備蓄も凄まじく、まるでこうなることが予測されていたようである。
「ジジさんたちはどうするのだろうか」
ボソリと呟くレフト。
武器を所持した人たちが集まり今後について話し合っているように見える。
「いつの間にか夜なり、暗くて外の様子がわからない」
屋敷はモンスターに包囲されてしまったのか。また、マスターと呼ばれる謎の人物はどこにいるのか。
優れた戦闘力を持つレオ、その彼女らしきミーナ。
謎だらけだが、最大の謎は事の発端である大蛇と農夫である。
次回へ続く
ここに攻めてくるのは時間の問題。
必死に説得を続けるジジ。
「…わかった……これを…」
ダグは鍵の束をジジに渡した。
鍵にはそれぞれ色のついたテープが貼ってありとてもカラフルだ。
「そこの通路を真っ直ぐいったところに倉庫がある…武器庫だ。鍵の色は赤だったと思う」
通路を指差すダグ。
「よし、動ける者は何名か手伝って下さい。医療に心得がある方は射たれた方の手当てを。救急箱はダグにもらって下さい」
的確な指示で人を動かすジジ。
「視力に自信のある方は表に出て見張りをお願いします」
抜群のリーダーシップで場を統率していく。
「元軍人かもしれないわね」
「そうかも。一般人ではないのは確かだね」
その様子をみていたアレサとレフトはジジのただ者ではないその行動力などに感心していた。
皆が一斉に動き出す。
「お二人は移動している団体に着いていき奥の大部屋で休んでいて下さい。そこなら安全です」
「ありがとう。じゃあレフトいきましょう」
ふらふらのレフトをゆっくりと起こし、二人はその大部屋へと向かった。屋敷の中は外観以上に広く感じた。
「…ふぅ…」
「どうしたの急に?」
「いや、身体が動けばなぁ…と」
「ふーん、ここへ来た理由を忘れちゃったのかしら」
アレサは人差し指でレフトの顔をツンツンする。
「ぅう…」
「確かにモンスターの気配は感じるわ。だけどジジさんの言う通りで弱小モンスターよ、住民たちで十分対処できるわ」
「そうだね、ありがとうアレサ」
二人の会話を聞いていた若い男女が近づいてくる。
「仲が良いですね。旦那さんはご病気ですか」
「えっ……そうです…リハビリ中でして…」
突然話しかけてきた女性。
奇抜な格好で独特の雰囲気がある。気難しい印象っぽいが話すと普通でそのギャップにアレサは驚いた。
「具合が悪そうっすね。手をかしますよ」
その女性の相方であろう男性は、ド派手な格好でチャラチャラしてそうな印象である。
だが、気が利く優しい男性であり、歩行が困難なレフトを支えてくれた。
「ありがとうございます」
「俺はレオっていいます」
「レオさん、申し訳ない。レフトです。妻のアレサです」
「困っている時はお互い様っすよ。それより本当、顔色悪いっすね」
「ねえレオ、外が騒がしいわよ。あ、私はミーナよ」
アレサもレオ同様に外の様子が気になるようだ。
「広間へ急ごう」
レオはレフトに負担がないように抱え込み小走りで広間へ向かった。
次第に大きくなる外の音により、集団は不安で軽いパニック状態となった。
「危ないわね、恐怖から我先に広間へ向かおうとして……」
ミーナが集団を指摘した次の瞬間、
鳥型のモンスターが窓ガラスをぶち破り屋敷に侵入してきた。
「奥へ逃げるんだ。早くっ」
武器を手にしたジジたちが勢いよく走ってくる。
「ずいぶんと早く攻めてきたわね」
パニック状態となり慌てる周囲とは対照的に冷静なアレサ。
窓ガラスからは翼のある鳥型モンスターが次々と侵入してくる。
武装したジジたちが集団のしんがりとなり、逃亡の時間をかせいでいる。
だが数が多く、何羽かの鳥が集団へ襲いかかる。
「くっ…これでは銃を使えない…」
住民の方向に発泡するわけにはいかない。
鳥はそんな事情など関係なく集団に紛れ込み人々を襲う。
「みんな伏せるんだっ!」
突然大声をあげるレオ。
なんと両手には魔力が収束している。
言われた通りみんな一斉にかがんだり、倒れこんだりしながら姿勢を低くくした。
「レフト、かがんでちょうだい」
「…これは爆破の魔法…」
「うん、鳥は飛んでるから上空を爆破させるみたいね」
放つタイミングを狙うレオ。
鳥はこの事態に気づき、レオめがけて突撃していく。
「終わりだ」
レオの魔法が放たれると、まるで花火のような閃光と音がして鳥たちは丸焦げになった。
「さあ今のうちに奥へ」
レオの声に反応したジジたちは、起き上がりすぐさま破られた窓ガラスを補強した。
「レフトさんいきましょう。これでしばらくは大丈夫です」
レオはレフトの肩に手をかけてゆっくりと歩き出した。アレサと二人でレフトを運び、ミーナがそんな三人に人がぶつからないようにガードしている。
「魔法が使えるんですね」
「はい、でも魔法は特別珍しいもんでもないっすよ」
「おかげで助かったわ、ありがとう。あなたはみんなのヒーローだね」
アレサは住民を救ってくれた事に感謝した。二人の身分は気になるが、今はただ、多くの命を守った事実に敬意を表した。
「そんな軍人みたいに堅苦しいの無しっすよ。あざす!とかフランクにいこういこう」
「ふっ」
つい笑ってしまったレフト。
それに過剰反応したアレサは、レフトの脇腹を軽くつねる。
「あらレフト。どうせ私はお堅い軍人ですわ」
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「いつの間にか夜なり、暗くて外の様子がわからない」
屋敷はモンスターに包囲されてしまったのか。また、マスターと呼ばれる謎の人物はどこにいるのか。
優れた戦闘力を持つレオ、その彼女らしきミーナ。
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次回へ続く
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