4 / 41
第一章
三話 心の中心へ
しおりを挟む
レフトは歩いている。
距離にするのが恐ろしいほど歩いている。相当な時間も経過しているだろう。だが不思議なことに疲労はない。いくらでも歩いていられる。
「物理の法則が通用しないってのは、いいんだか悪いんだか…不思議な気分だわ…」
ぶつぶつぼやいていると遠方に人が立っているのが確認できる。スラリとした体型からおそらく女性…そして知っている人物…。
「たどり着いたのねレフト」
「…アレサ、やっぱりそうだったか」
「よかった、迷って精神崩壊する者が多いのよ」
「精神崩壊…ここはいったいどこなの?」
「私もよく知らないけど、ここはあなたの心の中らしいわ」
「…心の中…」
ずいぶんとありきたりな世界だな。
気を失って精神世界をさまようだの定番すぎるだろ…と思うレフト。
「前に聞いたことがあるの。人は悪魔と一定時間以上接触すると体調を崩したり、ショックで気を失うことがあるらしいわ」
「…そうなのか…」
「個人差があるらしいんだけど。とはいえ気を失うレベルの人はごく僅かみたいよ」
「ごく僅かな人なのかな」
「うん、ごく僅かね」
二人はニタニタと笑い、この状況を楽しんでいるようだ。
「ホープが教えてくれたのよ」
「先生は…悪魔…なんだね…」
「うん。私以外の悪魔と接触したことで今回は気を失ったのだと思うわ」
「…アレサはどうやってこの世界に来たの?」
レフトは一番の疑問を聞いた。
アレサは意志があるように見えて現実世界と変わらないようだが…。
「それだけあなたは私を鮮明に記憶しているということよ」
「…記憶?」
「この姿はあなたのイメージがつくったもの。ここでの出来事はつじつまが合わないこともあるでしょうが現実世界とは違うと認識できたからこそ私をイメージできたのよ」
「…あくまでも自分のイメージでしかないと……悪魔だけに」
「…」
場の空気が凍りつく。
「…なるほどね、自分のギャクを自分が笑うってのはどうかと思うわ…」
「冷静さと世界を認識できるようになってあなたは今、この世界をコントロールできるようになった。それが何を意味するかわかるかしら?」
アレサはゆっくりとレフトに近づく。
接近に戸惑うレフト。
「それは…」
「それは? 何かしら?」
「自分を…コントロールできる…こと?」
言葉を発したその瞬間、目の前が真っ白になり、正面のアレサを含めた全てが崩れ落ちた。
真っ白い空間にレフトだけが存在している。目を閉じて、ここはどこだと頭で思考すると、何故かここは「心の中心」と認識できる。
ゆっくりと周囲を見渡すとここが白い炎の中だということがわかる。
「到着していたのか…」
レフトは座り深呼吸をして、心を無にした。
様々な出来事やこれからすべきことが多数あるのだが、それらを一時的に忘れて心を空っぽにするよう努めた。
だんだんと出来事や考え事が消滅していく手応えを感じた。
だが、突然、正体不明の物体が現れて、人の姿を形成していく。白い皮膚に黒い服、まるでモノクロのようだ。
レフトはその正体に心当たりがあった。
自分の中にある唯一コントロールできていないところ…それ…。
次回へ続く
距離にするのが恐ろしいほど歩いている。相当な時間も経過しているだろう。だが不思議なことに疲労はない。いくらでも歩いていられる。
「物理の法則が通用しないってのは、いいんだか悪いんだか…不思議な気分だわ…」
ぶつぶつぼやいていると遠方に人が立っているのが確認できる。スラリとした体型からおそらく女性…そして知っている人物…。
「たどり着いたのねレフト」
「…アレサ、やっぱりそうだったか」
「よかった、迷って精神崩壊する者が多いのよ」
「精神崩壊…ここはいったいどこなの?」
「私もよく知らないけど、ここはあなたの心の中らしいわ」
「…心の中…」
ずいぶんとありきたりな世界だな。
気を失って精神世界をさまようだの定番すぎるだろ…と思うレフト。
「前に聞いたことがあるの。人は悪魔と一定時間以上接触すると体調を崩したり、ショックで気を失うことがあるらしいわ」
「…そうなのか…」
「個人差があるらしいんだけど。とはいえ気を失うレベルの人はごく僅かみたいよ」
「ごく僅かな人なのかな」
「うん、ごく僅かね」
二人はニタニタと笑い、この状況を楽しんでいるようだ。
「ホープが教えてくれたのよ」
「先生は…悪魔…なんだね…」
「うん。私以外の悪魔と接触したことで今回は気を失ったのだと思うわ」
「…アレサはどうやってこの世界に来たの?」
レフトは一番の疑問を聞いた。
アレサは意志があるように見えて現実世界と変わらないようだが…。
「それだけあなたは私を鮮明に記憶しているということよ」
「…記憶?」
「この姿はあなたのイメージがつくったもの。ここでの出来事はつじつまが合わないこともあるでしょうが現実世界とは違うと認識できたからこそ私をイメージできたのよ」
「…あくまでも自分のイメージでしかないと……悪魔だけに」
「…」
場の空気が凍りつく。
「…なるほどね、自分のギャクを自分が笑うってのはどうかと思うわ…」
「冷静さと世界を認識できるようになってあなたは今、この世界をコントロールできるようになった。それが何を意味するかわかるかしら?」
アレサはゆっくりとレフトに近づく。
接近に戸惑うレフト。
「それは…」
「それは? 何かしら?」
「自分を…コントロールできる…こと?」
言葉を発したその瞬間、目の前が真っ白になり、正面のアレサを含めた全てが崩れ落ちた。
真っ白い空間にレフトだけが存在している。目を閉じて、ここはどこだと頭で思考すると、何故かここは「心の中心」と認識できる。
ゆっくりと周囲を見渡すとここが白い炎の中だということがわかる。
「到着していたのか…」
レフトは座り深呼吸をして、心を無にした。
様々な出来事やこれからすべきことが多数あるのだが、それらを一時的に忘れて心を空っぽにするよう努めた。
だんだんと出来事や考え事が消滅していく手応えを感じた。
だが、突然、正体不明の物体が現れて、人の姿を形成していく。白い皮膚に黒い服、まるでモノクロのようだ。
レフトはその正体に心当たりがあった。
自分の中にある唯一コントロールできていないところ…それ…。
次回へ続く
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ファンタジー/ストーリー3
雪矢酢
ファンタジー
注意!
この作品には転生系の要素はございません。
第一期から読むほうがより作品を楽しめます。
隙間時間で読める、謎は残さない、読者に結末を委ねない後味の良い作品を目指しております。
◇作品紹介◇
魔法剣士が主人公のお話です。
ファンタジーをベースに、強い主人公や個性豊かなキャラクターが活躍するシンプル構成でわかりやすいエンターテイメント風な物語です。
組織から離れた主人公の活躍にご期待下さい。
(内容紹介の詳細はお手数ですが第一期をご覧下さい)
※誤字脱字は可能な限りチェックしており不備は修正いたします。修正により本編内容が変更することはございません。
表紙:イラストAC arayashiki様より
ファンタジー/ストーリー5
雪矢酢
ファンタジー
この作品には転生系の要素はございません。
また、ループなどの構成を排除したシンプルで分かりやすい内容を目指しています。
◇作品紹介◇
作中最強の主人公や個性豊かなキャラクターが活躍するシンプルなお話です。
物語は最終章へ突入、滅びの運命に抗った者たちや世界の行方を見届けよう。
(内容紹介の詳細はお手数ですが第一期をご覧下さい)
※誤字脱字は可能な限りチェックしており不備は修正いたします。修正により本編内容が変更することはございません
表紙:イラストAC yumazi様より
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる