上 下
3 / 41
第一章

ニ話 暗黒騎士

しおりを挟む
白い炎を目指して進むレフト。
何もない空間をひたすら歩き続けているが、突然明るい光りに包まれた。
光りに眼が慣れてくると、ここは道場のような場所だとわかる。
歩きながら転移したようだ。

「…夢なのか、プログラムなのかわからないけど…もう何でも有りだねこりゃ…筆者の都合次第…か…」

道場らしきそこは様々な武器があり、正面には不自然なくらい意味深な黒い鎧がある。

「…なるほど…自分の次は己の内にある黒い部分…といったとこだろうか」

やや皮肉っぽいレフト。
そしてやはりというか…鎧は突然、手足が形成され、骸骨などが装飾された禍々しく邪悪な刀を抜刀し戦闘体制になった。

「…殺気があるね…なるほど…」

冷静さを取り戻したレフトは相手を的確に分析。
邪悪なそれはレフトを敵と認識し襲ってきた。
 
鎧が相当重いのだろうか、動きは鈍く、一撃は強烈だろうが、レフトは楽々と攻撃を捌き、相手の剣術を圧倒していく。
 
「その太刀筋……訓練された騎士か…」

レフトは鎧を突き飛ばし距離をとった。鎧は衝撃により後退しよろめきながらも踏み止まった。

「私はレフトーラ」

突然レフトは相手に名乗った。
鎧は言葉を理解できるようで一旦武装を解きレフトに応えた。

「騎士クロス」

「やはり騎士だったか…騎士は争いにこそその剣を使うべきでは?」

「オレはかつて争いに敗れた」

重々しい鎧とは対照的に滑舌がよく、流暢に話す。

「なるほど…敗走により暗黒騎士に堕ちた…」 

「暗黒騎士おおいに結構。もともとオレは身も心も真っ黒な騎士だ。さあ好きな武器を取るがいい。お前とは良い勝負ができそうだ」

「…戦うことはできない」

「ほう、それはその左腕が原因か」

「…」

「ふっ…図星か」

クロスはレフトの事情を見抜いていた。ここにはあらゆる武器があり、刀剣だけでもかなりの種類がある。

「接触して感じたが…お前は人とは違う。ここの武器では全力を出せぬか」

「…」

「無礼を詫びるが、化け物のような気配がする」

不安な予感を指摘されたレフト。
言いたい放題のクロス。

「化け物だろうがオレは屈しない。さあかかってこい」

挑発ともとれる物言いだが、レフトは全く戦うつもりはないようだ。

「こないのならこっちからいくぞっ」

クロスは構えてレフトに照準を合わせた。怨念のような邪悪な闘気を纏い、クロスのほうが化け物に見えるほどだ。

ゆっくりと深呼吸し力を抜くレフト。

「かくごっ」

クロスを一気に距離をつめレフトに斬りかかった。

命中の瞬間、クロスは急に動きが止まった。

「…なっ…」

「存在する世界を間違えたようだね」

レフトは止まって動けないクロスから刀を奪うとそれを消滅させた。

「…化け物め…」

「化け物? そうじゃない、ここは自分がつくり出した空間なのよ」

「…何を言っているんだ…」

「もとの世界に戻ったほうがいいよ」

冷静さを取り戻したレフトはこの世界を認識できた。

夢なのかよくわからない空間だが、自分が認識さえすれば危険はない。よって襲われようがそれを消滅させることもできる。

「ふっ…白い炎……ここでも白にやられるとは…これも運命か…」

クロスは笑い消滅した。


「…だいぶこの世界をコントロールできるようにはなってきたが…」

肝心の脱出方法がわからない。
今はとにかく白い炎の方向に進むしかない。

次回へ続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ファンタジー/ストーリー3

雪矢酢
ファンタジー
注意! この作品には転生系の要素はございません。 第一期から読むほうがより作品を楽しめます。 隙間時間で読める、謎は残さない、読者に結末を委ねない後味の良い作品を目指しております。 ◇作品紹介◇ 魔法剣士が主人公のお話です。 ファンタジーをベースに、強い主人公や個性豊かなキャラクターが活躍するシンプル構成でわかりやすいエンターテイメント風な物語です。 組織から離れた主人公の活躍にご期待下さい。 (内容紹介の詳細はお手数ですが第一期をご覧下さい) ※誤字脱字は可能な限りチェックしており不備は修正いたします。修正により本編内容が変更することはございません。 表紙:イラストAC arayashiki様より

ファンタジー/ストーリー5

雪矢酢
ファンタジー
この作品には転生系の要素はございません。 また、ループなどの構成を排除したシンプルで分かりやすい内容を目指しています。 ◇作品紹介◇ 作中最強の主人公や個性豊かなキャラクターが活躍するシンプルなお話です。 物語は最終章へ突入、滅びの運命に抗った者たちや世界の行方を見届けよう。 (内容紹介の詳細はお手数ですが第一期をご覧下さい) ※誤字脱字は可能な限りチェックしており不備は修正いたします。修正により本編内容が変更することはございません 表紙:イラストAC yumazi様より

ファンタジー/ストーリー4

雪矢酢
ファンタジー
この作品に転生系の要素はございません。 第一期から読むほうがより作品を楽しめます。 隙間時間で読める、謎は残さない、読者に結末を委ねない後味の良い作品を目指しております。 番外編には挿し絵を入れてみましたので、ぜひご覧下さい。 ◇作品紹介◇ 魔法剣士が主人公のお話です。 ファンタジーをベースに主人公や個性豊かなキャラクターが活躍するシンプル構成です。分かりやすいエンターテイメント風な物語をお楽しみ下さい。 神に匹敵する力を持つ魔法剣士の活躍にご期待下さい。 (内容紹介の詳細はお手数ですが第一期をご覧下さい) ※誤字脱字は可能な限りチェックしており不備は修正いたします。修正により本編内容が変更することはございません 表紙:イラストAC yumazi様より

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ファンタジー/ストーリー

雪矢酢
ファンタジー
◇作品のコンセプト◇ 転生しない、話が複雑になる要素や構成は排除、誰でも謎が解けるわかりやすいシンプルな構成、ちょっとした隙間時間で読めるように文字数を調整、文章を読むのが苦手な方でも読書習慣が身に付くような投稿方法を考えてみました。 筆者の自己満足ではなく、読む側、書く側が楽しめるモヤモヤしない後味スッキリの作品です。 ◇作品内容◇ 文明が崩壊してしまった世界。 人類はどのように生きていくのか。 そして文明は何故滅びてしまったのか。 魔法やモンスター、剣などのファンタジーをベースにしつつ、機械、近代兵器が登場する独特の世界観、圧倒的な強さの主人公などの個性的なキャラクターたちが登場し活躍します。 「復興機関」という組織に所属する主人公を中心に話が進みます。 通勤、通学中や暇つぶしなど隙間時間にさっさと読める、一話1000文字~3000文字程度で連載していく長編です。 バトルや人間模様、ギャクにシリアスな謎解きなど、思い付く要素を詰め込んだエンターテイメント風な物語をお楽しみ下さい。 ※誤字脱字はチェックしており不備は修正いたします。修正により本編内容が変更することはございません。 表紙:イラストAC まゆぽん様より

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...