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【本編】苦悩
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「美味しかった」
アイは満面の笑みである。
食事を済ませて館へ帰ろうとした時、
「ねぇスル、私は来週には自力で動けるようになると思うわ。リハビリは順調だし、継続して通院できていることに感謝しているわ」
「どうしたの?いきなり」
少々疑問そうなスルはアイに問う。
真剣な表情で勇気を出しことを伝える。
「身体は回復しても記憶は戻るかわからないわ。それに…」
「それに?」
なかなか伝えにくい内容のようだ。
だがここでお伝えしないといけない。
アイは己の胸に秘めた想いを話す。
「病院の皆さんは配慮してくれるけど、私はこの国の人間じゃないのよね」
「…」
「いいのよ、それは事実だもの。捕虜なのになぜここまで優遇されているのかな。私にはわからないことだらけ…」
「…」
スルはこの争いの意味がよくわからなくなっていた。自国のため戦ったのに何故かスパイと疑われる。アイは敵国の騎士だけどすごく優しくて一緒にいると自分に正直になれる。
そんな彼女が苦悩している。
「白も黒も関係ないような気がした」
「えっ」
「アイがどこの誰だろうが一緒にいてほしい。もし騎士としての記憶が戻り、戦地へ戻るというなら…」
「やめてスル」
突然大声を出すアイ。
そして真剣な眼差しでスルを見つめる。
「私は自分のことがわからない。さっきも言ったのだけど、記憶が戻るかはわからない。なら今を大切に前を向いて生きればいいと思ったのよ。あなたがそう思わせてくれたのよ」
二人の距離が一気に近くなっていくようだ。
お互いに想っているが、相手は敵国の人間である。
周囲は当然ざわつく。
そのうち武力行使される可能性もあるだろう。
だがスルは覚悟ができていた。
この人と一緒にいたいと。
お互いの気持ちを伝え、スッキリした二人。
先の事はわからないけど、館にはコトさん達がいて相談にのってくれると思う。
アイは記憶のことで少し神経質になっている模様。
それでもスルを想っている。
そんなこんなで館へ帰って来た二人。
「うふふ、コトさんに来週で車椅子を卒業って報告しちゃおう」
笑顔いっぱいのアイ。
「ねえコトさん…」
二人はすぐに分かった。
コトさんの様子がおかしい。
具合でも悪いのだろうか。
「ん、コトさん、具合でも悪いの?」
「…少し考え事を…」
その瞬間、アイは記憶がフラッシュバックしていた。
黒い騎士がいる。
私を呼びにきたようだ…。
「…部隊長…がお呼び…」
声が途切れてはっきり聞こえない。
すると突然黒騎士はいきなり抜刀してアイに斬りかかってきた。一撃を受けたアイは視界が真っ暗になった。
何も見えない。
斬られて私は死んだのかしら。
「…何……あっ……ですか」
声が聞こえる。
これはスルの声だわ。
身体の感覚が戻ってきたわ。
私は横になっているようだわ。
「…アイ様を…ひ……渡す…」
「えっ」
コトさんの声。
私を…引き渡すの。
途切れてよく聞き取れないが、
私の事を話しているようだわ。
「バン、お手伝いさん達を二階に避難させて下さい。スル様、二人で表に出てまず話しをし争いにならないよう交渉しましょう」
「そうだね。この館で血が流れるのは避けたい」
「私たちは軍の者ですが、アイ様を引き渡すことはしません」
コトはその旨をスルに伝えた。
外に出ると大勢ではないが、武装した集団が館の正面に陣取っている。服装が荒々しくて兵士というより傭兵みたいな感じだ。とても統率がとれた集団とは言い難い。
「お、これはこれは」
スルの姿を確認するや、野次を飛ばす集団。
何者かに雇われてアイを連行するよう言われたのだろう。コトは無礼な集団の振る舞いに拳を強くにぎっている。
一触即発
コトさん…
争いを避けて交渉しようと言ったけど…めっちゃキレそうなんですけど…一人でこいつらをボコボコにしそうなんですけど…。
そうならないようにスルは真っ先に集団との交渉を始めた。話を聞くかはわからないが…。
アイは満面の笑みである。
食事を済ませて館へ帰ろうとした時、
「ねぇスル、私は来週には自力で動けるようになると思うわ。リハビリは順調だし、継続して通院できていることに感謝しているわ」
「どうしたの?いきなり」
少々疑問そうなスルはアイに問う。
真剣な表情で勇気を出しことを伝える。
「身体は回復しても記憶は戻るかわからないわ。それに…」
「それに?」
なかなか伝えにくい内容のようだ。
だがここでお伝えしないといけない。
アイは己の胸に秘めた想いを話す。
「病院の皆さんは配慮してくれるけど、私はこの国の人間じゃないのよね」
「…」
「いいのよ、それは事実だもの。捕虜なのになぜここまで優遇されているのかな。私にはわからないことだらけ…」
「…」
スルはこの争いの意味がよくわからなくなっていた。自国のため戦ったのに何故かスパイと疑われる。アイは敵国の騎士だけどすごく優しくて一緒にいると自分に正直になれる。
そんな彼女が苦悩している。
「白も黒も関係ないような気がした」
「えっ」
「アイがどこの誰だろうが一緒にいてほしい。もし騎士としての記憶が戻り、戦地へ戻るというなら…」
「やめてスル」
突然大声を出すアイ。
そして真剣な眼差しでスルを見つめる。
「私は自分のことがわからない。さっきも言ったのだけど、記憶が戻るかはわからない。なら今を大切に前を向いて生きればいいと思ったのよ。あなたがそう思わせてくれたのよ」
二人の距離が一気に近くなっていくようだ。
お互いに想っているが、相手は敵国の人間である。
周囲は当然ざわつく。
そのうち武力行使される可能性もあるだろう。
だがスルは覚悟ができていた。
この人と一緒にいたいと。
お互いの気持ちを伝え、スッキリした二人。
先の事はわからないけど、館にはコトさん達がいて相談にのってくれると思う。
アイは記憶のことで少し神経質になっている模様。
それでもスルを想っている。
そんなこんなで館へ帰って来た二人。
「うふふ、コトさんに来週で車椅子を卒業って報告しちゃおう」
笑顔いっぱいのアイ。
「ねえコトさん…」
二人はすぐに分かった。
コトさんの様子がおかしい。
具合でも悪いのだろうか。
「ん、コトさん、具合でも悪いの?」
「…少し考え事を…」
その瞬間、アイは記憶がフラッシュバックしていた。
黒い騎士がいる。
私を呼びにきたようだ…。
「…部隊長…がお呼び…」
声が途切れてはっきり聞こえない。
すると突然黒騎士はいきなり抜刀してアイに斬りかかってきた。一撃を受けたアイは視界が真っ暗になった。
何も見えない。
斬られて私は死んだのかしら。
「…何……あっ……ですか」
声が聞こえる。
これはスルの声だわ。
身体の感覚が戻ってきたわ。
私は横になっているようだわ。
「…アイ様を…ひ……渡す…」
「えっ」
コトさんの声。
私を…引き渡すの。
途切れてよく聞き取れないが、
私の事を話しているようだわ。
「バン、お手伝いさん達を二階に避難させて下さい。スル様、二人で表に出てまず話しをし争いにならないよう交渉しましょう」
「そうだね。この館で血が流れるのは避けたい」
「私たちは軍の者ですが、アイ様を引き渡すことはしません」
コトはその旨をスルに伝えた。
外に出ると大勢ではないが、武装した集団が館の正面に陣取っている。服装が荒々しくて兵士というより傭兵みたいな感じだ。とても統率がとれた集団とは言い難い。
「お、これはこれは」
スルの姿を確認するや、野次を飛ばす集団。
何者かに雇われてアイを連行するよう言われたのだろう。コトは無礼な集団の振る舞いに拳を強くにぎっている。
一触即発
コトさん…
争いを避けて交渉しようと言ったけど…めっちゃキレそうなんですけど…一人でこいつらをボコボコにしそうなんですけど…。
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