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【本編】出会いと別れ
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眩しい。
それに鳥の鳴き声がする。
いつもの病室。
それも今日が最後だ。
「いい天気。今日は良い一日になりそう」
アイは遠足当日のウキウキした子供のようだ。
今日、退院してついにスルとの共同生活が始まるのだ。身体はある程度回復しており小距離なら歩行できるほどだ。
「あらアイちゃん、おはよう」
スタッフが部屋に入ってくる。
「おはようございます」
「検温するのも今日が最後よね」
スタッフたちは基本的、患者に思い入れなどはしない、あくまでも仕事だからだ。
だが、アイは特殊なケースであり、同じような日常の医療現場において刺激となり印象に残る患者となっていた。
スルと出会ってからは気持ちの変化もあって多くのスタッフを惹き付けた。
「皆さんのお力がなければ私はどうなっていたか…本当に感謝しておりますし、いずれ恩返ししたいです」
深々とお礼をするアイに戸惑うスタッフ。
「そんな大げさよ。元気な姿をみせてくれればそれでいいわよ。さあ検温して朝食にしましょう」
朝食後にスルが病院に到着した。
病室へ向かうと、室内には車椅子に乗ったアイが待っていた。
「手続きは済んでいるからまず家にいこう」
優しい笑顔のスルにコクりとうなずくアイ。
「お世話になりました」
多くのスタッフや患者が見送りにきてくれた。
アイは人の優しさを感じて涙した。
「…涙が…何でだろう…」
涙に戸惑うアイをみてスルは優しく伝える。
「なんというか…そういうものよ」
実に適当でいい加減な応答ではあるが、
人は理屈では説明できないこともある。
人生は出会いあれば別れもある。
「ふふ、そういうものなのね」
不思議と涙はとまり真っ直ぐな瞳でスルをみる。
「いきましょう、お家へ」
病院は東エリアにあり、住居は西エリア。
賑やかな南エリアを横断していく。
「すごい活気ね」
アイはキョロキョロとしており、見るもの全てが真新しく感じているようだ。
その姿に喜ぶスル。
「少し寄り道して市場をみてみようか」
スルの提案に満面の笑みで応えるアイ。
人が多く混雑しているが、この国の通路はとても広く車椅子でも苦にならない。
戦争中ということもあり、義手、義足や車椅子の方も多く、こういった方々への配慮は国民の義務なのである。
「ねえ、えっと…」
「そうね、お互いにどう呼んだらいいかな」
照れくさそうな仕草のスル。
そんな姿をみて、アイは勇気を出す。
「スルって呼ぶから…アイって呼んで…」
この急展開はお互いにドキドキ、胸キュンキュンといったところだ。
「…うんと…これからよろしくねアイ」
「こちらこそよろしくねスル」
スルが若干ぎこちない。
だが、二人の距離は確実に縮まっており、信頼関係は確かに構築されている。見知らぬ二人の共同生活が始まった。
それに鳥の鳴き声がする。
いつもの病室。
それも今日が最後だ。
「いい天気。今日は良い一日になりそう」
アイは遠足当日のウキウキした子供のようだ。
今日、退院してついにスルとの共同生活が始まるのだ。身体はある程度回復しており小距離なら歩行できるほどだ。
「あらアイちゃん、おはよう」
スタッフが部屋に入ってくる。
「おはようございます」
「検温するのも今日が最後よね」
スタッフたちは基本的、患者に思い入れなどはしない、あくまでも仕事だからだ。
だが、アイは特殊なケースであり、同じような日常の医療現場において刺激となり印象に残る患者となっていた。
スルと出会ってからは気持ちの変化もあって多くのスタッフを惹き付けた。
「皆さんのお力がなければ私はどうなっていたか…本当に感謝しておりますし、いずれ恩返ししたいです」
深々とお礼をするアイに戸惑うスタッフ。
「そんな大げさよ。元気な姿をみせてくれればそれでいいわよ。さあ検温して朝食にしましょう」
朝食後にスルが病院に到着した。
病室へ向かうと、室内には車椅子に乗ったアイが待っていた。
「手続きは済んでいるからまず家にいこう」
優しい笑顔のスルにコクりとうなずくアイ。
「お世話になりました」
多くのスタッフや患者が見送りにきてくれた。
アイは人の優しさを感じて涙した。
「…涙が…何でだろう…」
涙に戸惑うアイをみてスルは優しく伝える。
「なんというか…そういうものよ」
実に適当でいい加減な応答ではあるが、
人は理屈では説明できないこともある。
人生は出会いあれば別れもある。
「ふふ、そういうものなのね」
不思議と涙はとまり真っ直ぐな瞳でスルをみる。
「いきましょう、お家へ」
病院は東エリアにあり、住居は西エリア。
賑やかな南エリアを横断していく。
「すごい活気ね」
アイはキョロキョロとしており、見るもの全てが真新しく感じているようだ。
その姿に喜ぶスル。
「少し寄り道して市場をみてみようか」
スルの提案に満面の笑みで応えるアイ。
人が多く混雑しているが、この国の通路はとても広く車椅子でも苦にならない。
戦争中ということもあり、義手、義足や車椅子の方も多く、こういった方々への配慮は国民の義務なのである。
「ねえ、えっと…」
「そうね、お互いにどう呼んだらいいかな」
照れくさそうな仕草のスル。
そんな姿をみて、アイは勇気を出す。
「スルって呼ぶから…アイって呼んで…」
この急展開はお互いにドキドキ、胸キュンキュンといったところだ。
「…うんと…これからよろしくねアイ」
「こちらこそよろしくねスル」
スルが若干ぎこちない。
だが、二人の距離は確実に縮まっており、信頼関係は確かに構築されている。見知らぬ二人の共同生活が始まった。
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