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【本編】記憶
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記憶喪失の騎士アイ
完成された戦闘力は幼少期の訓練にて培われた。
無慈悲で仲間すら恐怖する黒騎士だったが、本心は争いを嫌い、世界を旅するのが夢だった至って普通の女性だ。
「そうそう、上手です」
リハビリが進み、歩行訓練まで回復したアイ。
「…痛みはほとんどないわ」
記憶を失っていても、身体能力はとても優秀で自然治癒がとにかくはやい。医療スタッフも驚くほどだ。
「この分だとすぐ退院できるわよ」
そう、退院後はスルとの生活が始まる。
スタッフもスルとの生活をできる限りサポートしてくれるそうだ。
そんな雰囲気でみんなが気分良く取り組んでいる時、院内施設でトラブルが発生する。
リハビリ中の高齢者が急に倒れて心肺停止状態になってしまったのだ。
突然の事態に慌てる現場。
すぐさま電気ショックの準備に入るのだが、即死のような感じであり誰もが諦めていた。
「…くっ…」
震える手で装置を力強く握るスタッフ。
その悲しみに皆、共感していた。
だがそんな状態の高齢者にアイは、そばにいきたい素振りをみせ、スタッフを呼びつける。
「まだ救えるわ。私をあの方のそばに連れてって」
車椅子でゆっくり近づき横に座るアイ。
「前にもこんなことがあったわ。だからね、自然と対処法が思い浮かんだの」
そう言うと高齢者の腹部を数ヶ所を軽く押す。すると膿のようなものが耳鼻口から流れ出た。
そして右手を高くあげ、一気に振り下ろし、心臓を刺激した。その様子をみていたスタッフは顔面蒼白だ。
高齢者は口からどす黒い血を吐き出し、咳き込み、心肺が蘇生した。直ぐ様、脈を確認したスタッフは言葉を失った。
ありえない、今までみたことがない療法に皆が固まっている。
「…私は…ただ命を救いたくて…」
そう言うとアイは気絶した。
この件は直ぐ様上層部へ伝わった。
この騎士が何者なのか。
一部の軍関係者が興味を示したのだが、激化する敵国との領地争いに人材をつかい、素性調査どころではなかった。
「アイさんは…大丈夫でしょうか」
話を聞いたスルが病室へ駆けつけた。
引っ越しは、ほぼ完了しており後はアイの荷物を運ぶのみだ。
「ええ、突然の出来事でびっくりしましたが、アイさんも患者も大丈夫ですよ」
スルは一息といったところだ。
余計な詮索はせず二人で平和に暮らす。
それが彼女にとって一番の薬。
そう信じてスルは行動している。
「良かった」
「そうだ、ほとんど無いのですが、彼女の荷物をまとめてあるのでお持ちになられますか」
「はい、彼女の荷物で引っ越し準備は終了です。後、必要なモノはこれで準備してください。彼女がほしいモノもあるだろうし」
そう言うとスルはいくらかのお金をスタッフに手渡した。一般兵士のわりに多額を渡され戸惑うスタッフだった。
誰かが呼んでいる。
誰なの私を呼ぶのは…。
「…失礼、少々考え事を」
「数時間後には敵が攻めてきます。ここは重要な地です。それをお忘れか」
これは私?
それにこの威圧感のある男性は誰なの…。
記憶が断片的に描写される。
「木刀を持て」
「はっ」
親子と思われる二人が剣の稽古をしている。
親は子に猛攻する。
子は防ぐのに精一杯といったところだ。
これは私の過去なの?
攻撃がさらに激しくなり後退して追い込まれる子。
「引くは愚なり。騎士は常に前をみるものなのだ。その考え、この一撃で悔い改めよ」
親は剣を振り上げ狙いを定める。
子は絶体絶命であるが…
次の瞬間、子の素早い一撃が親の腕に命中。
ボキっと骨が折れたような音が響く。
「っつ…くっ…」
命中したのは右の手首。
あまりの激痛に剣を落とす親。
折れたというより砕けた…というべきか。
ともかくこれで勝負ありである。
「なぜかこの光景は記憶にある。振り上げた瞬間、右の手首を打てると瞬間的に思ったの。おもいっきり打ったわ。かなり痛かっただろうね」
そして再びゆっくり目を閉じるアイ。
一方、アイの荷物を確認しているスルは、豪華な装飾の宝剣が目に入れる。
「…見覚えがある…この装飾は…」
急に顔色が変わるスル。
「…村を襲撃した者が持ってい…」
剣に背をむけるスル。
アイの荷物にあるということは、あの襲撃に関係しているのか。
まさかあの襲撃は彼女が…。
「今はやめよう」
もし彼女に関係があったとしてもそれは過去だ。今は治療している一人の女性。
スルはその剣を片付けて荷物を整理した。
そこへ上層部の一人ウエが声をかけてきた。
「スル、話がある」
「はい、わざわざこんなところへすみません」
「いいさ、それよりあの騎士はどうした?」
「病室で休んでいますよ。施設での出来事は既に報告がいっているかと。あれからずっと休んでいますよ」
「ふむ、実は騎士の身元が判明したかもしれないのだ」
「身元ですか、では共同生活はどうされるのですか」
「落ち着け、お前たちの生活は変更無いし邪魔はしない。あの騎士を嫁にしようが好きにしろ。だが…」
「…ちょっと嫁って…」
「あの騎士は破壊の黒騎士だ」
「破壊の黒騎士って…南西拠点基地を単騎で陥落させたあの騎士のことですか」
敵国の兵士ですら恐れる破壊の黒騎士は素性が知れず神出鬼没な存在だ。もし出会ったら即時撤退し被害を最低限に抑えるように軍部から教わった記憶がある。
「まだ確かな証拠はないのだが…本人と推測し、もし騎士に記憶が戻って本来の役殺戮マシーンになったら…ここを災害が襲ったかのような甚大な被害が出るだろう」
「…」
スルは宝剣のことは伏せていた。
彼女にとって不利なことは言いたくなかったのだ。もし破壊の騎士だったとしても今は違う。そう信じている。
「おい、大丈夫か、顔色が悪いぞ」
「…少し引っ越しで疲れました」
「ああ、そうだったな。こっちが急に提案したんだったね」
「ちょっと休憩します。何かあればすぐ出向きますので」
アイの素性が判明した時、上層部はどう対応するのか。スルは静かに決意していた。
「…嫁…か…」
完成された戦闘力は幼少期の訓練にて培われた。
無慈悲で仲間すら恐怖する黒騎士だったが、本心は争いを嫌い、世界を旅するのが夢だった至って普通の女性だ。
「そうそう、上手です」
リハビリが進み、歩行訓練まで回復したアイ。
「…痛みはほとんどないわ」
記憶を失っていても、身体能力はとても優秀で自然治癒がとにかくはやい。医療スタッフも驚くほどだ。
「この分だとすぐ退院できるわよ」
そう、退院後はスルとの生活が始まる。
スタッフもスルとの生活をできる限りサポートしてくれるそうだ。
そんな雰囲気でみんなが気分良く取り組んでいる時、院内施設でトラブルが発生する。
リハビリ中の高齢者が急に倒れて心肺停止状態になってしまったのだ。
突然の事態に慌てる現場。
すぐさま電気ショックの準備に入るのだが、即死のような感じであり誰もが諦めていた。
「…くっ…」
震える手で装置を力強く握るスタッフ。
その悲しみに皆、共感していた。
だがそんな状態の高齢者にアイは、そばにいきたい素振りをみせ、スタッフを呼びつける。
「まだ救えるわ。私をあの方のそばに連れてって」
車椅子でゆっくり近づき横に座るアイ。
「前にもこんなことがあったわ。だからね、自然と対処法が思い浮かんだの」
そう言うと高齢者の腹部を数ヶ所を軽く押す。すると膿のようなものが耳鼻口から流れ出た。
そして右手を高くあげ、一気に振り下ろし、心臓を刺激した。その様子をみていたスタッフは顔面蒼白だ。
高齢者は口からどす黒い血を吐き出し、咳き込み、心肺が蘇生した。直ぐ様、脈を確認したスタッフは言葉を失った。
ありえない、今までみたことがない療法に皆が固まっている。
「…私は…ただ命を救いたくて…」
そう言うとアイは気絶した。
この件は直ぐ様上層部へ伝わった。
この騎士が何者なのか。
一部の軍関係者が興味を示したのだが、激化する敵国との領地争いに人材をつかい、素性調査どころではなかった。
「アイさんは…大丈夫でしょうか」
話を聞いたスルが病室へ駆けつけた。
引っ越しは、ほぼ完了しており後はアイの荷物を運ぶのみだ。
「ええ、突然の出来事でびっくりしましたが、アイさんも患者も大丈夫ですよ」
スルは一息といったところだ。
余計な詮索はせず二人で平和に暮らす。
それが彼女にとって一番の薬。
そう信じてスルは行動している。
「良かった」
「そうだ、ほとんど無いのですが、彼女の荷物をまとめてあるのでお持ちになられますか」
「はい、彼女の荷物で引っ越し準備は終了です。後、必要なモノはこれで準備してください。彼女がほしいモノもあるだろうし」
そう言うとスルはいくらかのお金をスタッフに手渡した。一般兵士のわりに多額を渡され戸惑うスタッフだった。
誰かが呼んでいる。
誰なの私を呼ぶのは…。
「…失礼、少々考え事を」
「数時間後には敵が攻めてきます。ここは重要な地です。それをお忘れか」
これは私?
それにこの威圧感のある男性は誰なの…。
記憶が断片的に描写される。
「木刀を持て」
「はっ」
親子と思われる二人が剣の稽古をしている。
親は子に猛攻する。
子は防ぐのに精一杯といったところだ。
これは私の過去なの?
攻撃がさらに激しくなり後退して追い込まれる子。
「引くは愚なり。騎士は常に前をみるものなのだ。その考え、この一撃で悔い改めよ」
親は剣を振り上げ狙いを定める。
子は絶体絶命であるが…
次の瞬間、子の素早い一撃が親の腕に命中。
ボキっと骨が折れたような音が響く。
「っつ…くっ…」
命中したのは右の手首。
あまりの激痛に剣を落とす親。
折れたというより砕けた…というべきか。
ともかくこれで勝負ありである。
「なぜかこの光景は記憶にある。振り上げた瞬間、右の手首を打てると瞬間的に思ったの。おもいっきり打ったわ。かなり痛かっただろうね」
そして再びゆっくり目を閉じるアイ。
一方、アイの荷物を確認しているスルは、豪華な装飾の宝剣が目に入れる。
「…見覚えがある…この装飾は…」
急に顔色が変わるスル。
「…村を襲撃した者が持ってい…」
剣に背をむけるスル。
アイの荷物にあるということは、あの襲撃に関係しているのか。
まさかあの襲撃は彼女が…。
「今はやめよう」
もし彼女に関係があったとしてもそれは過去だ。今は治療している一人の女性。
スルはその剣を片付けて荷物を整理した。
そこへ上層部の一人ウエが声をかけてきた。
「スル、話がある」
「はい、わざわざこんなところへすみません」
「いいさ、それよりあの騎士はどうした?」
「病室で休んでいますよ。施設での出来事は既に報告がいっているかと。あれからずっと休んでいますよ」
「ふむ、実は騎士の身元が判明したかもしれないのだ」
「身元ですか、では共同生活はどうされるのですか」
「落ち着け、お前たちの生活は変更無いし邪魔はしない。あの騎士を嫁にしようが好きにしろ。だが…」
「…ちょっと嫁って…」
「あの騎士は破壊の黒騎士だ」
「破壊の黒騎士って…南西拠点基地を単騎で陥落させたあの騎士のことですか」
敵国の兵士ですら恐れる破壊の黒騎士は素性が知れず神出鬼没な存在だ。もし出会ったら即時撤退し被害を最低限に抑えるように軍部から教わった記憶がある。
「まだ確かな証拠はないのだが…本人と推測し、もし騎士に記憶が戻って本来の役殺戮マシーンになったら…ここを災害が襲ったかのような甚大な被害が出るだろう」
「…」
スルは宝剣のことは伏せていた。
彼女にとって不利なことは言いたくなかったのだ。もし破壊の騎士だったとしても今は違う。そう信じている。
「おい、大丈夫か、顔色が悪いぞ」
「…少し引っ越しで疲れました」
「ああ、そうだったな。こっちが急に提案したんだったね」
「ちょっと休憩します。何かあればすぐ出向きますので」
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