不死身の英雄なんかじゃないのに

プロローグ

　生と死の擦り合わせの最前線の最中に、在る場所で高位の君主が居る。其の周りに跪くファントム全員の姿がある。

『私はそろそろ故郷へと帰る必要がある。今迄私を護ってくれて感謝する』

『いえ…我々ファントム一同は、あの日に拾われた時から身も心も、───様の為に捧げ未来永劫忠誠を誓っています』

『君達ファントムのお陰で、生きたまま故郷に帰れるよ。───。どうか、君達も幸せになって欲しい』

　君主が元の世界に帰還する姿を一同で、見届け終えても動かない。其の光景は君主を失い暴走する前兆である。

「─、──０！───０００っ！！！」

「──ッ！敵襲か！？」

「いえ…違います」

「００１か。何だ構って欲しいのか？勿論構わないが全員を此処に呼べ。話す事が有る」

　ハァ…。随分と１年前の過去を思い出していたな…。忘れたくても忘れられない記憶だ

　部下はすみませんと謝り乍言葉を述べ、彼等も未だ喪失感が残る。僕は部下に全員来させる様に要件を伝えた。

「隊長～～！！話ってなんすっか？」

「隊長っち！此奴盗み食いしたんですよ！」

「隊長、気分優れない様ですが…大丈夫ですか？」

「御前達！鎮まらんか！」

　部下全員が呼び出され其の場に集まる。各々自由奔放な彼等だが、００１の声で黙らせると辺りが静かになる。

「あの御方の居ない世界に未練は無い。あの御方の居る世界へ渡ろうと思う。御前達に選択を与える」

「隊長…真逆！隊長も居なくなるんですか！？」

「落ち着け！だから言っただろう？選択を与えると。１つあの御方と僕との記憶を消され此処で寿命を迎える」

「「「………」」」

「２つ次元を越え異世界に渡り、再びあの御方の元で忠誠を誓う。さぁ、何方が良いのか？猶予は１日のみ設ける。良く考える事だな」

　部下は与えられた選択に息を呑み込む。部下達は猶予も関係無く、既に覚悟を決めていた為同時に答えていた。

「隊長猶予なんて必要ねぇ！俺達は既に覚悟しています。あの御方と隊長の居ない世界はうんざりなんです！」

「隊長！我々も連れて行って下さい」

「ハァ…分かった。御前達は声が大きい。後近過ぎる！１回離れろっ！！本当に僕と共に来るんだな？」

「「「勿論です！！」」」

　同時に頷く部下の姿につい口が綻ぶと、僕の足元に縋り付く光景。内面ではうんざりし乍も彼等を受け入れる。

「次元の門に入る！」

　君主により禁忌の力を封印されていた。封印されし力を解放する。封印を解けば次元の門が開かれ中へと入る。