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第五章
影の中で 18
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「穂結君!」
那美の声を合図に煌津が飛び退くと、同時に銃声が轟いた。静星がにやりと笑った。スーツの背中から赤い腕が生えて大ハサミの持ち手を掴み、銃弾を叩き落とす。
「ハサミ女の能力……!」
「それだけじゃない」
地響きとともに、地を割って現れたのは、巨大なくねくねモドキの群れだ。静星は現れたくねくねモドキを蹴って、頭上から攻撃を仕掛けてくる。
「絡み付く包帯!」
左手から射出した包帯が、静星の体に纏わりつく。静星の体から、さらに赤い腕が生えた。その手に持っているのはカッターや、包丁だ。それらがあっという間に、絡み付く包帯を切り刻んでしまう。
「フジバカマノヒメ、ハゼランノヒメ!」
二体の式神を呼び出し、那美は静星を追う。巨大なくねくねモドキはさらに数を増し、赤い靄と相まって視界を狭くする。
「そらっ!」
くねくねモドキの影から出現した静星が、伸縮しるサターン・リングを伸ばして煌津の顎を狙う。煌津はくねくねモドキを蹴ってこれを躱し、お返しとばかりに影からの奇襲攻撃で静星を打つ。
「ははっ! はははっ!」
静星が、心底楽しそうに笑っていた。
「これ! これだよ! こういう戦いこそ、わたしが求めていたものなんだ!」
赤い腕が伸びて、大ハサミをはじめとした刃物の群れが煌津を追ってくる。右手に気を集中し、念じる。右手のグローブの模様から出た炫毘の火が、天羽々斬に燃え移る。
「ふん!」
炫毘の燃え盛る剣を一閃すれば、赤い腕の数々が燃え落ちた。
「いいねえ、やるじゃない! ビデオマン!」
大ハサミの猛追撃が襲ってくる。煌津は剣で打ち合い、忍び寄るリングの一撃さえ弾いて見せる。
「すごい! 本当にすごい! 頑張ればわたしを倒せるかもしれませんよ、先輩!」
「――静星さん、楽しそうだね」
打ち合いを制し、煌津は少し離れたところに着地する。
静星は上機嫌そうに答えた。
「当たり前じゃないですか、先輩。楽しいに決まっているでしょ、こんなギリギリの戦い!」
煌津は剣を下げて、静星の目を見つめた。
「静星さん、どうして俺たちの事をずっと先輩と呼ぶの?」
静星は怪訝そうな顔をした。
「急に何を言い出すんですか。先輩は先輩でしょう。ほかに呼び方なんて……」
「ずっと引っ掛かっていたんだ。静星さんの様子が」
「様子?」
煌津は頷いた。
「手段を選ばずにやれば、君はもっと簡単に俺たちを殺せていたはずだ。なのに君は、回りくどい手段で何度も俺たちを試していた。直接会った時でさえ、不意打ちでいくらでも殺せただろうに、君はあくまで直に戦う事を選んだ」
「何を……だって、それはそのほうが楽しいからで……」
那美の声を合図に煌津が飛び退くと、同時に銃声が轟いた。静星がにやりと笑った。スーツの背中から赤い腕が生えて大ハサミの持ち手を掴み、銃弾を叩き落とす。
「ハサミ女の能力……!」
「それだけじゃない」
地響きとともに、地を割って現れたのは、巨大なくねくねモドキの群れだ。静星は現れたくねくねモドキを蹴って、頭上から攻撃を仕掛けてくる。
「絡み付く包帯!」
左手から射出した包帯が、静星の体に纏わりつく。静星の体から、さらに赤い腕が生えた。その手に持っているのはカッターや、包丁だ。それらがあっという間に、絡み付く包帯を切り刻んでしまう。
「フジバカマノヒメ、ハゼランノヒメ!」
二体の式神を呼び出し、那美は静星を追う。巨大なくねくねモドキはさらに数を増し、赤い靄と相まって視界を狭くする。
「そらっ!」
くねくねモドキの影から出現した静星が、伸縮しるサターン・リングを伸ばして煌津の顎を狙う。煌津はくねくねモドキを蹴ってこれを躱し、お返しとばかりに影からの奇襲攻撃で静星を打つ。
「ははっ! はははっ!」
静星が、心底楽しそうに笑っていた。
「これ! これだよ! こういう戦いこそ、わたしが求めていたものなんだ!」
赤い腕が伸びて、大ハサミをはじめとした刃物の群れが煌津を追ってくる。右手に気を集中し、念じる。右手のグローブの模様から出た炫毘の火が、天羽々斬に燃え移る。
「ふん!」
炫毘の燃え盛る剣を一閃すれば、赤い腕の数々が燃え落ちた。
「いいねえ、やるじゃない! ビデオマン!」
大ハサミの猛追撃が襲ってくる。煌津は剣で打ち合い、忍び寄るリングの一撃さえ弾いて見せる。
「すごい! 本当にすごい! 頑張ればわたしを倒せるかもしれませんよ、先輩!」
「――静星さん、楽しそうだね」
打ち合いを制し、煌津は少し離れたところに着地する。
静星は上機嫌そうに答えた。
「当たり前じゃないですか、先輩。楽しいに決まっているでしょ、こんなギリギリの戦い!」
煌津は剣を下げて、静星の目を見つめた。
「静星さん、どうして俺たちの事をずっと先輩と呼ぶの?」
静星は怪訝そうな顔をした。
「急に何を言い出すんですか。先輩は先輩でしょう。ほかに呼び方なんて……」
「ずっと引っ掛かっていたんだ。静星さんの様子が」
「様子?」
煌津は頷いた。
「手段を選ばずにやれば、君はもっと簡単に俺たちを殺せていたはずだ。なのに君は、回りくどい手段で何度も俺たちを試していた。直接会った時でさえ、不意打ちでいくらでも殺せただろうに、君はあくまで直に戦う事を選んだ」
「何を……だって、それはそのほうが楽しいからで……」
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