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第三章
そしてテープは回り始める 15
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「アチメ! オーオーオー!!」
どろりと動いた〝それ〟を、那美はかざした掌で掴む。先生の体の晴明桔梗を介して、那美の手が憑依した呪力を掴み取ったのだ。
「うぅ……ぐぅ……っ!」
掴んだモノを引き摺り出す。那美の手前の何もないところから、漂白されたかのように白く、青い血管の走る腕が出てきた。那美が掴んでいるのは、その白い腕の手首である。
「ぐ……っ……!」
重い。物理的な重さではなく、これは呪力の重さだ。何年分のものだろうか。柳田先生が誰それから恨みを買っていたとして、あるいは悪霊などに憑りつかれていたとしても、これだけのものを抱え込んでいたら今日以前に学内で那美が気付いていたはずである。つまり、これは蓄積した呪いではない。ごく最近、先生の中に大量に投入されたものだ。呪った奴がいるのだ。短時間で、大量の呪詛を仕込んだ人間がいるのだ。それを時限爆弾のように、先生が店内に入った瞬間、発動するように仕掛けていた……。
「何で……」
白い腕に、口が現れて悲痛な声を出す――那美は自分のしくじりに気付く。術の維持が、一瞬ブレたのだ。
「何で俺の腕、切っちまったんだよおおおぉおおぉっ!」
一本の白い腕から、無数の小さな腕が生えて、即座に手を伸ばし那美の腕を掴む。
ごおっ! と柳田先生を中心にして空気が引き込まれていく。吸引する風の力に足元がぐらつく。
「しまった!」
「何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で!?」
たちまち分裂した無数の白い腕が、那美を呪詛へ引き摺り込もうと引っ張ってくる。
「ぐっ――!」
【早送り】
ひどく機械的な音声が聞こえたのは、その時だ。
ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ、と連続で発射された包帯の一本一本が、白い腕の本体に巻き付く。まるで早回しをしているかのような連射速度だ。
あいつが来た。穂結煌津が。
「うおぉおっ!!」
どこかで停止という機械的な声が聞こえたかと思いきや、那美の横に着地した煌津が巻き付けた包帯を全力で引っ張る。魔力の塊である煌津の包帯は白い腕に食い込み、マイナスの力である呪力を、プラスの力である魔力によって侵食する。
「九宇時さんっ!?」
「私は平気! そのまま引っ張って!」
煌津は頷き、唸り声を上げて白い腕の本体を引っ張る。次の瞬間、白い腕の本体のそこかしこに、今度は数え切れないほどの口が現れる。
「大会が近かったんだよぉっ!」「俺が何したって言うんだよっ!」「何で何で何で何で何で何で」「腕がなきゃ何もできないぃぃぃぃ」「結婚するはずだったんだ」「何で俺の腕、切っちまったんだよおおおぉおおぉっ!」
次々と放出される負のオーラをまとった悲嘆の数々に、煌津は奇妙な顔をした。
「九宇時さん、これって!?」
「耳を貸さないで! 感情に訴えるようでも、これらの言葉はもうすでに呪詛なの! 共感したら取り込まれる!」
どろりと動いた〝それ〟を、那美はかざした掌で掴む。先生の体の晴明桔梗を介して、那美の手が憑依した呪力を掴み取ったのだ。
「うぅ……ぐぅ……っ!」
掴んだモノを引き摺り出す。那美の手前の何もないところから、漂白されたかのように白く、青い血管の走る腕が出てきた。那美が掴んでいるのは、その白い腕の手首である。
「ぐ……っ……!」
重い。物理的な重さではなく、これは呪力の重さだ。何年分のものだろうか。柳田先生が誰それから恨みを買っていたとして、あるいは悪霊などに憑りつかれていたとしても、これだけのものを抱え込んでいたら今日以前に学内で那美が気付いていたはずである。つまり、これは蓄積した呪いではない。ごく最近、先生の中に大量に投入されたものだ。呪った奴がいるのだ。短時間で、大量の呪詛を仕込んだ人間がいるのだ。それを時限爆弾のように、先生が店内に入った瞬間、発動するように仕掛けていた……。
「何で……」
白い腕に、口が現れて悲痛な声を出す――那美は自分のしくじりに気付く。術の維持が、一瞬ブレたのだ。
「何で俺の腕、切っちまったんだよおおおぉおおぉっ!」
一本の白い腕から、無数の小さな腕が生えて、即座に手を伸ばし那美の腕を掴む。
ごおっ! と柳田先生を中心にして空気が引き込まれていく。吸引する風の力に足元がぐらつく。
「しまった!」
「何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で!?」
たちまち分裂した無数の白い腕が、那美を呪詛へ引き摺り込もうと引っ張ってくる。
「ぐっ――!」
【早送り】
ひどく機械的な音声が聞こえたのは、その時だ。
ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ、と連続で発射された包帯の一本一本が、白い腕の本体に巻き付く。まるで早回しをしているかのような連射速度だ。
あいつが来た。穂結煌津が。
「うおぉおっ!!」
どこかで停止という機械的な声が聞こえたかと思いきや、那美の横に着地した煌津が巻き付けた包帯を全力で引っ張る。魔力の塊である煌津の包帯は白い腕に食い込み、マイナスの力である呪力を、プラスの力である魔力によって侵食する。
「九宇時さんっ!?」
「私は平気! そのまま引っ張って!」
煌津は頷き、唸り声を上げて白い腕の本体を引っ張る。次の瞬間、白い腕の本体のそこかしこに、今度は数え切れないほどの口が現れる。
「大会が近かったんだよぉっ!」「俺が何したって言うんだよっ!」「何で何で何で何で何で何で」「腕がなきゃ何もできないぃぃぃぃ」「結婚するはずだったんだ」「何で俺の腕、切っちまったんだよおおおぉおおぉっ!」
次々と放出される負のオーラをまとった悲嘆の数々に、煌津は奇妙な顔をした。
「九宇時さん、これって!?」
「耳を貸さないで! 感情に訴えるようでも、これらの言葉はもうすでに呪詛なの! 共感したら取り込まれる!」
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