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第三章
そしてテープは回り始める 12
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両の掌から放たれる包帯を振り回して、向かってくる影の群れを薙ぎ払う。ダメージになっているのかいないのか、それさえわからないが、影の群れは意に介した様子もなく煌津に迫る。
「このっ!」
影の群れは壁のようになって、煌津の侵攻を防いでいた。その奥に、白い腕に憑りつかれた柳田先生の体が浮かんでいる。
「先生……!」
包帯攻撃だけでは埒が明かない。何かほかの攻撃方法がないと……!
「いや待て……確か」
煌津は訓練場での光景を思い出す。あの時の包帯のヒトガタの攻撃。巨大な爪のような――
「うまく、造り出すんだ。あの爪――」
鋭い影の一撃を何とか躱す。隙が見えた。今、ここで切り込めれば!
思わず腕を横薙ぎにすると、まるで獣が切り裂いたかのように、影が無残に散った。
気が付けば、煌津の両手は幾重もの包帯が巻き付き、鋭い爪を形成していた。
「俺が思い描けば、その通りに動くのか!」
――カッ、カッ、カッ、カッ、カッ。
近付いてくる影を煌津は勢い爪で一突きにする。喉が潰れたような声を上げて、影が霧散していく。だが、影の壁はまだ高い。それに囲まれたら、今の煌津は一瞬で終わりだろう。
「もっと、何か違うものがいる。攻撃だけじゃない、もっと違う要素が……」
下腹部に出現したビデオデッキに目をやる。【再生】ボタン以外にも色々とあるが、どういう機能を持つかはわからない。
――ヒュッ! 影が前方から背後から、双方向から迫ってくる。戦いは考える暇を与えてはくれない。長い爪で双方の影を打ち払う。その瞬間、全く別の方向から、三本目の影が煌津の首を狙ってきた。
「やばい!」
咄嗟に、ビデオデッキのどこかのボタンを押した。
【早送り】
ビデオデッキが、またも言葉を発した。
次の瞬間、煌津は自分の知覚が引き伸ばされるような感覚に陥った。周囲の動作が極端に遅くなり、自分の動きだけがそのままであるかのような感覚。首に迫ってきた影を爪の横薙ぎでぶった切り、勢いそのまま三つの影の根元を蹴り飛ばす。思考よりも早く体が動き、本能的に影で形作られた壁の中へと飛び込み、爪でその根元を抉り、蹴り飛ばし、ガラス片のように飛び散る影の破片を視界の端に認めながら、次々と叩き壊していく。ただ影の群れを蹴散らすためだけに、再び地面に下りると、柳田先生に憑りつく白い腕の根元まで駆け寄る。
「ははっ――!」
笑いが止まらない。自分の中にこれほどの破壊欲求が潜んでいたのかと驚くほど、手早く、力強く影を蹴散らしていく。
【停止】
ビデオデッキの声が、無慈悲に脳内に響く。
その瞬間、煌津は影の群れの真ん中に立ち尽くしていた。急激に酷使された筋肉は、千切れんばかりに悲鳴を上げ、そこから一歩も動く事は出来そうにない。
「このっ!」
影の群れは壁のようになって、煌津の侵攻を防いでいた。その奥に、白い腕に憑りつかれた柳田先生の体が浮かんでいる。
「先生……!」
包帯攻撃だけでは埒が明かない。何かほかの攻撃方法がないと……!
「いや待て……確か」
煌津は訓練場での光景を思い出す。あの時の包帯のヒトガタの攻撃。巨大な爪のような――
「うまく、造り出すんだ。あの爪――」
鋭い影の一撃を何とか躱す。隙が見えた。今、ここで切り込めれば!
思わず腕を横薙ぎにすると、まるで獣が切り裂いたかのように、影が無残に散った。
気が付けば、煌津の両手は幾重もの包帯が巻き付き、鋭い爪を形成していた。
「俺が思い描けば、その通りに動くのか!」
――カッ、カッ、カッ、カッ、カッ。
近付いてくる影を煌津は勢い爪で一突きにする。喉が潰れたような声を上げて、影が霧散していく。だが、影の壁はまだ高い。それに囲まれたら、今の煌津は一瞬で終わりだろう。
「もっと、何か違うものがいる。攻撃だけじゃない、もっと違う要素が……」
下腹部に出現したビデオデッキに目をやる。【再生】ボタン以外にも色々とあるが、どういう機能を持つかはわからない。
――ヒュッ! 影が前方から背後から、双方向から迫ってくる。戦いは考える暇を与えてはくれない。長い爪で双方の影を打ち払う。その瞬間、全く別の方向から、三本目の影が煌津の首を狙ってきた。
「やばい!」
咄嗟に、ビデオデッキのどこかのボタンを押した。
【早送り】
ビデオデッキが、またも言葉を発した。
次の瞬間、煌津は自分の知覚が引き伸ばされるような感覚に陥った。周囲の動作が極端に遅くなり、自分の動きだけがそのままであるかのような感覚。首に迫ってきた影を爪の横薙ぎでぶった切り、勢いそのまま三つの影の根元を蹴り飛ばす。思考よりも早く体が動き、本能的に影で形作られた壁の中へと飛び込み、爪でその根元を抉り、蹴り飛ばし、ガラス片のように飛び散る影の破片を視界の端に認めながら、次々と叩き壊していく。ただ影の群れを蹴散らすためだけに、再び地面に下りると、柳田先生に憑りつく白い腕の根元まで駆け寄る。
「ははっ――!」
笑いが止まらない。自分の中にこれほどの破壊欲求が潜んでいたのかと驚くほど、手早く、力強く影を蹴散らしていく。
【停止】
ビデオデッキの声が、無慈悲に脳内に響く。
その瞬間、煌津は影の群れの真ん中に立ち尽くしていた。急激に酷使された筋肉は、千切れんばかりに悲鳴を上げ、そこから一歩も動く事は出来そうにない。
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