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第二章
運悪くこの世界にたどり着いてしまった方へ 19
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「ただし、今の穂結君相手なら、撃てる」
逆光で影になった那美が、冷たく言い放つ。
「こ、これは……!?」
「異界から帰って来た人間は、何かしらを持ち帰っている可能性がある。だから私はハゼランノヒメを君に付けていた。特に、あだむの世界は《魔物喰らいの帯》が封じられていると言われていた」
「っ、魔物喰らい……?」
何か、急速にエネルギーを吸い取られているような、そんな脱力感があった。
「今、君から伸びているそれだよ」
煌津の頭上で、大きなヒトガタが形成されつつあった。緑色の目を爛々と光らせた、包帯の悪魔とでも言うべき風貌のヒトガタが。
「これは……ヤバいね」
訓練場の景色が振動していた。ヒトガタは異物であり、このマトリックスの世界はその存在を受け止め切れていないかのようだ。
「かなり痛いだろうけど我慢してね。そいつを君から引っぺがすから」
ベルトを拾い上げるや、彼女はくるりとそれを腰に巻く。ガチッと留め具が嵌る音がした。くるくると、まるで何かの儀式のように、流麗に拳銃を回して小気味よくリボルバーが手の中に納まる。
「退魔屋チェンジ!」
那美が叫ぶと同時に、桜色の光が溢れ出す。彼女が着ていた衣服が白衣に、緋袴に変化していく。緋袴に小さなポーチがいくつも連なったベルトが現れ、銀髪が桜色に変わっていく。
ヒトガタが鋭く伸びた指を那美に向かって突っ込ませた。土煙を立てて、地面が抉れている。
「九宇時さん!?」
ヒトガタが砕いた場所に、すでに那美の姿はない。彼女は跳んでいた。上空にある彼女の影がヒトガタに落ちている。撃鉄を起こす音がした。
ダン! ダン! ダン! 浄力の込められた銃弾がヒトガタを貫く。衝撃で煌津の骨まで震える。
「うぐっ……!?」
自分の体が銃弾で突き破られたかのようだ。こんな衝撃を何発も食らっていて耐えられるか……。
「少し耐えて。そいつを封じ直してあだむの世界に送り返す」
那美が懐から四個の御幣を空に放ると、それが煌津を囲うように四方に着地する。
「東に青龍、西に白虎、南に朱雀、北に玄武、中に匂陣、地に帝台、天に文王、前に三台、後ろに玉女。九字を敷き、九字を建て、九字で囲う九字の箱。閉じよ、九神の封!」
四つの御幣が光を放ち、青い壁、白い壁、朱の壁、玄の壁となり、ヒトガタを光の柱が貫き、煌津とヒトガタの間に壁、ヒトガタの上に壁、前に、後ろに光りの壁が発生し、それらが一挙に箱を形成しようとヒトガタに迫る。
――その瞬間、煌津に見えたのは、この訓練場を構成するエネルギーの織り込みだった。色とりどりのエネルギーの糸は全てが魔力だと理解出来た。それらの糸が強引にヒトガタに吸い寄せられるのも――
逆光で影になった那美が、冷たく言い放つ。
「こ、これは……!?」
「異界から帰って来た人間は、何かしらを持ち帰っている可能性がある。だから私はハゼランノヒメを君に付けていた。特に、あだむの世界は《魔物喰らいの帯》が封じられていると言われていた」
「っ、魔物喰らい……?」
何か、急速にエネルギーを吸い取られているような、そんな脱力感があった。
「今、君から伸びているそれだよ」
煌津の頭上で、大きなヒトガタが形成されつつあった。緑色の目を爛々と光らせた、包帯の悪魔とでも言うべき風貌のヒトガタが。
「これは……ヤバいね」
訓練場の景色が振動していた。ヒトガタは異物であり、このマトリックスの世界はその存在を受け止め切れていないかのようだ。
「かなり痛いだろうけど我慢してね。そいつを君から引っぺがすから」
ベルトを拾い上げるや、彼女はくるりとそれを腰に巻く。ガチッと留め具が嵌る音がした。くるくると、まるで何かの儀式のように、流麗に拳銃を回して小気味よくリボルバーが手の中に納まる。
「退魔屋チェンジ!」
那美が叫ぶと同時に、桜色の光が溢れ出す。彼女が着ていた衣服が白衣に、緋袴に変化していく。緋袴に小さなポーチがいくつも連なったベルトが現れ、銀髪が桜色に変わっていく。
ヒトガタが鋭く伸びた指を那美に向かって突っ込ませた。土煙を立てて、地面が抉れている。
「九宇時さん!?」
ヒトガタが砕いた場所に、すでに那美の姿はない。彼女は跳んでいた。上空にある彼女の影がヒトガタに落ちている。撃鉄を起こす音がした。
ダン! ダン! ダン! 浄力の込められた銃弾がヒトガタを貫く。衝撃で煌津の骨まで震える。
「うぐっ……!?」
自分の体が銃弾で突き破られたかのようだ。こんな衝撃を何発も食らっていて耐えられるか……。
「少し耐えて。そいつを封じ直してあだむの世界に送り返す」
那美が懐から四個の御幣を空に放ると、それが煌津を囲うように四方に着地する。
「東に青龍、西に白虎、南に朱雀、北に玄武、中に匂陣、地に帝台、天に文王、前に三台、後ろに玉女。九字を敷き、九字を建て、九字で囲う九字の箱。閉じよ、九神の封!」
四つの御幣が光を放ち、青い壁、白い壁、朱の壁、玄の壁となり、ヒトガタを光の柱が貫き、煌津とヒトガタの間に壁、ヒトガタの上に壁、前に、後ろに光りの壁が発生し、それらが一挙に箱を形成しようとヒトガタに迫る。
――その瞬間、煌津に見えたのは、この訓練場を構成するエネルギーの織り込みだった。色とりどりのエネルギーの糸は全てが魔力だと理解出来た。それらの糸が強引にヒトガタに吸い寄せられるのも――
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