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第一章
カンナギ・ガンスリンガー 16
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空が、鼓動を打っていた。青や緑に変化していた空は、血のように真っ赤に染まっていく。空間にノイズが走る。
波打った坂から柱のようなものが捩じれ上がってくる。
「あ、あ、あ……」
静星が尻もちをついた。
「何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?」
「何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?」
捩じれた柱は、あの捩じれた女だった。何人も出てくる捩じれた女の分身。坂の上を滑るようにして、こちらに迫ってくる。
「何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?」
女の手が、静星の足を掴む。
「いや、嫌ぁあああっ!」
「静星さん!」
静星の肩を掴み、体を引っ張り出すようにして捩じれた女の手を振り払う。
だが……
「何で見ている人がいるのかなああああああああ」
真っ白い肌から赤い血を流し、怒りの形相で巨大な顔がこちらを睨んでいた。
じりじりと、白い腕の群れが這い、巨大な顔が近付いて来る。
「何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?」
「何で見ている人がいるのかなああああああああ」
「嫌、嫌ぁっ!」
静星の足に、再び捩じれた女の手が近付いた。
――ダン、ダン、ダン!
響き渡ったのは、炸裂音だ。地面から生えていた捩じれた女たちが弾け飛んでいく。
「今のは……」
――りぃん。
鈴の音がして、人影が煌津たちの前に舞い降りた。
濃紺のブレザーに、スカート。肩にかけたバッグ。この学校の生徒だ。それに、白いに近い銀色の髪。
「ごめん、遅くなった」
今朝の女子生徒だった。定期入れに『吐菩加美依身多女』を書いたのであろう、あの子。
「君は……」
言いかけて、煌津は彼女が右手に持っているものに気が付いた。詳しくはないが、見た事はある。西部劇でガンマンが持っているような……
「拳銃……?」
リボルバーだった。
女子生徒は煌津の言葉は意に介さず、肩のバッグから何かを取り出した。
それは大振りなベルトだった。小さなポーチがいくつも付いた、大きな留め具のあるベルト。バッグを脇に放ると、女子生徒は手慣れた仕草で、そのベルトを腰に巻き付ける。まるで自動でそうなったかのように、留め具がガチっと嵌め込まれた。
彼女の手の中で、リボルバーがくるくると回る。
「退魔屋チェンジ」
銃把を掴んで、彼女は言った。呪文のように。
――呪詛の海を割って、桜色の光が漏れる――
彼女が着ていた濃紺の制服が桜の花びらのように弾ける。眼前を覆うほどの桜吹雪が万華鏡の如く踊る。いつの間にか、彼女は装束を纏っていた。純白の白衣に、鮮やかな緋袴。その腰回りに無骨な大振りのベルトが巻き付けられている。そして銀髪が、桜色に染まっていく。
「退魔屋……」
静星が呟いた。
「拳銃使いの巫女……」
波打った坂から柱のようなものが捩じれ上がってくる。
「あ、あ、あ……」
静星が尻もちをついた。
「何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?」
「何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?」
捩じれた柱は、あの捩じれた女だった。何人も出てくる捩じれた女の分身。坂の上を滑るようにして、こちらに迫ってくる。
「何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?」
女の手が、静星の足を掴む。
「いや、嫌ぁあああっ!」
「静星さん!」
静星の肩を掴み、体を引っ張り出すようにして捩じれた女の手を振り払う。
だが……
「何で見ている人がいるのかなああああああああ」
真っ白い肌から赤い血を流し、怒りの形相で巨大な顔がこちらを睨んでいた。
じりじりと、白い腕の群れが這い、巨大な顔が近付いて来る。
「何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?」
「何で見ている人がいるのかなああああああああ」
「嫌、嫌ぁっ!」
静星の足に、再び捩じれた女の手が近付いた。
――ダン、ダン、ダン!
響き渡ったのは、炸裂音だ。地面から生えていた捩じれた女たちが弾け飛んでいく。
「今のは……」
――りぃん。
鈴の音がして、人影が煌津たちの前に舞い降りた。
濃紺のブレザーに、スカート。肩にかけたバッグ。この学校の生徒だ。それに、白いに近い銀色の髪。
「ごめん、遅くなった」
今朝の女子生徒だった。定期入れに『吐菩加美依身多女』を書いたのであろう、あの子。
「君は……」
言いかけて、煌津は彼女が右手に持っているものに気が付いた。詳しくはないが、見た事はある。西部劇でガンマンが持っているような……
「拳銃……?」
リボルバーだった。
女子生徒は煌津の言葉は意に介さず、肩のバッグから何かを取り出した。
それは大振りなベルトだった。小さなポーチがいくつも付いた、大きな留め具のあるベルト。バッグを脇に放ると、女子生徒は手慣れた仕草で、そのベルトを腰に巻き付ける。まるで自動でそうなったかのように、留め具がガチっと嵌め込まれた。
彼女の手の中で、リボルバーがくるくると回る。
「退魔屋チェンジ」
銃把を掴んで、彼女は言った。呪文のように。
――呪詛の海を割って、桜色の光が漏れる――
彼女が着ていた濃紺の制服が桜の花びらのように弾ける。眼前を覆うほどの桜吹雪が万華鏡の如く踊る。いつの間にか、彼女は装束を纏っていた。純白の白衣に、鮮やかな緋袴。その腰回りに無骨な大振りのベルトが巻き付けられている。そして銀髪が、桜色に染まっていく。
「退魔屋……」
静星が呟いた。
「拳銃使いの巫女……」
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