19 / 100
第一章
カンナギ・ガンスリンガー 16
しおりを挟む
空が、鼓動を打っていた。青や緑に変化していた空は、血のように真っ赤に染まっていく。空間にノイズが走る。
波打った坂から柱のようなものが捩じれ上がってくる。
「あ、あ、あ……」
静星が尻もちをついた。
「何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?」
「何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?」
捩じれた柱は、あの捩じれた女だった。何人も出てくる捩じれた女の分身。坂の上を滑るようにして、こちらに迫ってくる。
「何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?」
女の手が、静星の足を掴む。
「いや、嫌ぁあああっ!」
「静星さん!」
静星の肩を掴み、体を引っ張り出すようにして捩じれた女の手を振り払う。
だが……
「何で見ている人がいるのかなああああああああ」
真っ白い肌から赤い血を流し、怒りの形相で巨大な顔がこちらを睨んでいた。
じりじりと、白い腕の群れが這い、巨大な顔が近付いて来る。
「何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?」
「何で見ている人がいるのかなああああああああ」
「嫌、嫌ぁっ!」
静星の足に、再び捩じれた女の手が近付いた。
――ダン、ダン、ダン!
響き渡ったのは、炸裂音だ。地面から生えていた捩じれた女たちが弾け飛んでいく。
「今のは……」
――りぃん。
鈴の音がして、人影が煌津たちの前に舞い降りた。
濃紺のブレザーに、スカート。肩にかけたバッグ。この学校の生徒だ。それに、白いに近い銀色の髪。
「ごめん、遅くなった」
今朝の女子生徒だった。定期入れに『吐菩加美依身多女』を書いたのであろう、あの子。
「君は……」
言いかけて、煌津は彼女が右手に持っているものに気が付いた。詳しくはないが、見た事はある。西部劇でガンマンが持っているような……
「拳銃……?」
リボルバーだった。
女子生徒は煌津の言葉は意に介さず、肩のバッグから何かを取り出した。
それは大振りなベルトだった。小さなポーチがいくつも付いた、大きな留め具のあるベルト。バッグを脇に放ると、女子生徒は手慣れた仕草で、そのベルトを腰に巻き付ける。まるで自動でそうなったかのように、留め具がガチっと嵌め込まれた。
彼女の手の中で、リボルバーがくるくると回る。
「退魔屋チェンジ」
銃把を掴んで、彼女は言った。呪文のように。
――呪詛の海を割って、桜色の光が漏れる――
彼女が着ていた濃紺の制服が桜の花びらのように弾ける。眼前を覆うほどの桜吹雪が万華鏡の如く踊る。いつの間にか、彼女は装束を纏っていた。純白の白衣に、鮮やかな緋袴。その腰回りに無骨な大振りのベルトが巻き付けられている。そして銀髪が、桜色に染まっていく。
「退魔屋……」
静星が呟いた。
「拳銃使いの巫女……」
波打った坂から柱のようなものが捩じれ上がってくる。
「あ、あ、あ……」
静星が尻もちをついた。
「何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?」
「何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?」
捩じれた柱は、あの捩じれた女だった。何人も出てくる捩じれた女の分身。坂の上を滑るようにして、こちらに迫ってくる。
「何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?」
女の手が、静星の足を掴む。
「いや、嫌ぁあああっ!」
「静星さん!」
静星の肩を掴み、体を引っ張り出すようにして捩じれた女の手を振り払う。
だが……
「何で見ている人がいるのかなああああああああ」
真っ白い肌から赤い血を流し、怒りの形相で巨大な顔がこちらを睨んでいた。
じりじりと、白い腕の群れが這い、巨大な顔が近付いて来る。
「何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?何で助けてくれなかったの?」
「何で見ている人がいるのかなああああああああ」
「嫌、嫌ぁっ!」
静星の足に、再び捩じれた女の手が近付いた。
――ダン、ダン、ダン!
響き渡ったのは、炸裂音だ。地面から生えていた捩じれた女たちが弾け飛んでいく。
「今のは……」
――りぃん。
鈴の音がして、人影が煌津たちの前に舞い降りた。
濃紺のブレザーに、スカート。肩にかけたバッグ。この学校の生徒だ。それに、白いに近い銀色の髪。
「ごめん、遅くなった」
今朝の女子生徒だった。定期入れに『吐菩加美依身多女』を書いたのであろう、あの子。
「君は……」
言いかけて、煌津は彼女が右手に持っているものに気が付いた。詳しくはないが、見た事はある。西部劇でガンマンが持っているような……
「拳銃……?」
リボルバーだった。
女子生徒は煌津の言葉は意に介さず、肩のバッグから何かを取り出した。
それは大振りなベルトだった。小さなポーチがいくつも付いた、大きな留め具のあるベルト。バッグを脇に放ると、女子生徒は手慣れた仕草で、そのベルトを腰に巻き付ける。まるで自動でそうなったかのように、留め具がガチっと嵌め込まれた。
彼女の手の中で、リボルバーがくるくると回る。
「退魔屋チェンジ」
銃把を掴んで、彼女は言った。呪文のように。
――呪詛の海を割って、桜色の光が漏れる――
彼女が着ていた濃紺の制服が桜の花びらのように弾ける。眼前を覆うほどの桜吹雪が万華鏡の如く踊る。いつの間にか、彼女は装束を纏っていた。純白の白衣に、鮮やかな緋袴。その腰回りに無骨な大振りのベルトが巻き付けられている。そして銀髪が、桜色に染まっていく。
「退魔屋……」
静星が呟いた。
「拳銃使いの巫女……」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
小児科医、姪を引き取ることになりました。
sao miyui
キャラ文芸
おひさまこどもクリニックで働く小児科医の深沢太陽はある日事故死してしまった妹夫婦の小学1年生の娘日菜を引き取る事になった。
慣れない子育てだけど必死に向き合う太陽となかなか心を開こうとしない日菜の毎日の奮闘を描いたハートフルストーリー。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる