ヒロインを辞職して悪役令嬢に転職しようと思います

ナデシコさん

文字の大きさ
上 下
2 / 3

私が転生ヒロインですか?

しおりを挟む

「っうわぁ!!」


ベットの上で目を覚ましたアリスは困惑した。背中は汗で湿り 冷や汗が止まらないし 動悸が半端じゃない。でも...


私、生きてる?


さっきまで自分は確かにイザベラ様に刺されて
バッドエンド間違えなかったからあの後、確実に死んだはず...
けど刺された部分に手を当てても痛くもなんともない。


一体どうなってるっていうの? ヒロインは死にませんみたいな補正機能発動しちゃったのかな




「お嬢様?お部屋から大きな声が聞こえてきたのですが、大丈夫でしょうか?」

少し慌てた様子で部屋に入ってきたのは
侍女のアンナ。  ...にしては 若いな?
私より一回りは年上だったんだけど 今は私と同じくらいの年齢に見える


「大丈夫 ...だけど、アンナってば若返った?」
「っ!お嬢様が私のこと呼び捨てにっ?」
「えええアンナどうして泣いてるのよ!」


若返った?と聞いただけなのに、そんなにシワ伸ばしでも頑張ったんだろうか それともデリカシーなかったか? ポロポロ涙を流し始めてしまった。




でも、アンナが私のことお嬢様って呼ぶのなんて本当に久しぶり
私は八歳でグロリア男爵家に引き取られてから
お嬢様呼びされていたけど一五歳の時、学園入学を機に私は使用人に対する敬語を、アンナはお嬢様呼びをやめたんだった。



「だってっ お嬢様がこの家に来て一年になりますが、やっと、やっと.... 」

「アンナ今なんて言った?」
「..お嬢様がこの家に来て一年?ですか?」



信じられない話だけどアンナが嘘を言っているはずはないので、私の中に一つの仮説が浮かんだ。
まぁ乙女ゲームに転生してるってだけで私の常識は壊されてるわけなんだけど...


「アンナ?手鏡ってある?」
「はい。こちらに」


恐る恐る手鏡を覗き込むとそこには
少し痩せ気味の少女が映っていた。
...男爵家に来たばかりの頃だと思われる私だった。


金色の髪は肩まで伸びており切りそろえられてはいないが艶はある。緑色の目はアーモンド型の可愛らしいものだった。あれだヒロイン万歳ってやつだ
元からの顔が普通より上くらいの良いラインをさまよっている。



「ごめんなさいアンナ 少し一人にしてもらってもいい?」
「それはもちろん構いませんが 体調が悪いなどではないですか?」
「少し考えたいことがあるの 明日の朝まで ごめんね?」


そう伝えると少し安心したようにアンナは部屋から出ていった。



■□■



姿見で自分の姿を何度も確認するけど 夢でも何でもなかった。 



「....私が転生ヒロインねぇ....」


今の所わかっているのは
私は転生したことを思い出して死んだが もう一度 アリスとして時が戻っているということだけ
けどこれも一応可能性 本当のことは分からない
乙女ゲームだからコンティニューってこと?


情報整理するために昔の記憶を頼りに自分の机からノートを取り出し 書き始めた




私は日本では佐藤有咲だった。
大学三年の春休みに車にひかれたんだっけ
あ、そうだア○メイトの帰りだったんだ、
道路の真ん中であの数々をばらまいてしまったと思うと恥ずかしすぎてお嫁に行けないわ
まぁ享年二一歳で私は死んだのだ。


日本のお母さん。私がずっとお母さんに怒られても夜通しやってた乙女ゲームの世界に転生しちゃった。私は元気だよたぶん。刺されたけど。



アリスについて分かっていることは流石に一八年 アリスをやっていただけあって思い出せる限りは分かる 
アリスはこの乙女ゲームのヒロインだ。
タイトルは〝TRUE LOVE~マクシミラ恋愛学園~〟 

今見返すとタイトル恥ずかしい



内容はごく簡単 珍しい光属性の魔法が使えるヒロインがマクシミラ学園に入学し
問題を抱えた攻略対象達を癒して悪役令嬢断罪してハッピーエンドって感じのゲームだ。
追加でアリスの魔力は巨大で ただのチートって所もある。


ゲームの内容自体は面白くもつまらなくもなかったけど このゲームはなにより絵が非常に良かった
攻略対象の フィン第二王子殿下は確認したとして、他に誰がいたかはいまいち思い出せないな



〝TRUE LOVE~マクシミラ恋愛学園~〟 のエンドは三つルートがある

一つはもちろんハッピーエンド。
ハッピーエンドはヒロインと攻略対象が悪役令嬢という壁を越えて幸せになり 悪役令嬢は断罪され それぞれの攻略対象によって刑は変わるけど大体は平民街に降りろ系だったと思う。

二つ目のバッドエンドはヒロインが悪役令嬢またはその手先によって殺され、悪役令嬢もそのあとを追うように処刑されるものだ。
私が経験したのはバッドエンドルートね..

ていうかバッドエンドに向かうってなかなかの低確率だった気がするのになんで当たっちゃうかな 
普通にイザベラ様怖かったわ

三つ目は逆ハーエンド ヒロインが攻略対象全員を侍らせて終わるという微妙なエンドだ。







次は...自分のことを思い出していこうかな


アリスは八歳の時 一人でこの男爵家に引き取られた。その時気がついたのだが私は庶子という事。
母の顔は見たことがなくずっと孤児院で暮らしてきたんだけど 男爵が気まぐれで手をつけて生まれた子が私らしい。
母や私に責任を感じて金銭的援助をしようと探してくれていて ようやくといったところで私はこの男爵家に引き取られた。


普通 旦那の浮気の証の私なんて夫人とその子供は許さないって思ってたけど 
夫人と娘の器の大きさは半端じゃなかった。 

曰く私の母に迫った男爵は私がお腹にいることを知っていたのに 責任をとらなかったので
その件に関しては許さないと。
だけどそのせいで出来た私に罪は何もないし 男爵家の施しを受ける権利があると



泣けるよね、さすがヒロイン
設定が完璧すぎるよ



でも私は環境の変化についていけなくて、結局学園に入学するまで
男爵家の使用人にも、さん付けして敬語で話して 夫人や男爵、義理妹にも距離を保って生活していた。学園に行くにあたって侍女にまで敬語だとまずいってことで無理矢理直した。
その学園でフィン様と出会って惹かれて 自分にダメだと言い聞かせたところでイザベラ様のあの事件が起きて私は殺された、と。


一連の流れを辿ると私の人生壮絶ね




それにしても今はこれからどうするか考えなきゃいけないんだ
生憎 記憶が戻った私にとって攻略対象達はフィン様含めてビジュアルのおかげ様で
観察対象に早変わりだし 
なにより私 イザベラ様の外見一番好みだったわ イザベラ様ならフィン様と並んでも遜色ないんだよね...




...ヒロインの仕事放棄してもいいかな?いいよね?ぐるぐる頭を回らせるがパンクしそうだ。




やっぱり無理!!一人じゃ考えられん!



「アンナー!!!」
「はいっ!!お嬢様っ!」
早いなアンナ 今日から電光石火のアンナって心の中で呼ぶかもしれないぞ。

「私が今から言うのは作り話ですがアンナはしっかり主人公に感情移入して答えてね」
「よく分かりませんが、承知しました!」




とりあえず今まで私に起こった架空のお話に意見してもらうことにした
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~

白金ひよこ
恋愛
 熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!  しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!  物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

悪役令嬢に転生したら溺愛された。(なぜだろうか)

どくりんご
恋愛
 公爵令嬢ソフィア・スイートには前世の記憶がある。  ある日この世界が乙女ゲームの世界ということに気づく。しかも自分が悪役令嬢!?  悪役令嬢みたいな結末は嫌だ……って、え!?  王子様は何故か溺愛!?なんかのバグ!?恥ずかしい台詞をペラペラと言うのはやめてください!推しにそんなことを言われると照れちゃいます!  でも、シナリオは変えられるみたいだから王子様と幸せになります!  強い悪役令嬢がさらに強い王子様や家族に溺愛されるお話。 HOT1/10 1位ありがとうございます!(*´∇`*) 恋愛24h1/10 4位ありがとうございます!(*´∇`*)

魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!

蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」 「「……は?」」 どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。 しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。 前世での最期の記憶から、男性が苦手。 初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。 リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。 当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。 おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……? 攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。 ファンタジー要素も多めです。 ※なろう様にも掲載中 ※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

悪役令嬢はあらかじめ手を打つ

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしは公爵令嬢のアレクサンドラ。 どうやら悪役令嬢に転生したみたい。 でもゲーム開始したばかりなのに、ヒロインのアリスに対する攻略対象たちの好感度はMAX。 それっておかしすぎない? アルファポリス(以後敬称略)、小説家になろうにも掲載。 筆者は体調不良なことが多いので、コメントなどの受け取らない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。

処理中です...