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4章 新しいもの
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奴隷制度廃止宣言後、王は処理に覆われていた。
戸籍の登録や就職支援、そしてまだ解放されていない奴隷の回収とやることはいっぱいだ。
そしてルークはというと、今まで奴隷だっため勉学ができなかった者たちのため、まだ奴隷紋か消えぬもののために建設された奴隷構成施設の責任者を任されていた。
一番奴隷について理解しているのは、元奴隷であるルークがふさわしいとと言うことで王から任命されたのだ。
忙しい。忙しすぎる。エミリーに会いたい。
せっかくことが片付いてエミリーも奴隷ではなくなって人間に戻ったのにこれでは全然会う暇がない。
ルークは王子としての義務も果たしつつ、この仕事をしているため、激務だ。休みも返上して働いている。
宣言前の優雅さはどこへ行ったのやら。
「ルーク王子、大変そうね」
そう言ってルークの前に現れたのはイザベラだ。
今日は奴隷更生施設の見学に来ている。
「ええ、大変ですよ。俺は王子という身分をもらい教育も受け、元から奴隷ってわけじゃなかったからマシですけど、生まれた時からの子は奴隷って感覚がずっと残ってて根強いですね」
「なるほどね」
イザベラ様は他人事のような目だ。
「忙しいところ邪魔してごめんなさい。そうそう、気になっているだろうから言っておくわ。エミリーは相変わらずうちの屋敷でメイドとして働いて、元気に過ごしているわ。今度、手が空いた時にでも会いに来なさい。昔の感情が溢れ出しているせいか話したいこともたくさんあるみたいだし、会いたがっていたわ」
イザベラはそれだけ言ってその場を立ち去る。
エミリーが俺に会いたがっている。なんて喜ばしいことだ。一秒でも早く、会いたい。
ルークの願いが届けられたのはその一ヶ月後。
今日は特別な日。ルークがイザベラに買われた日でもある。
今日はルークの誕生日。十八歳になった。
馬車に乗って屋敷へ行くルークはルンルンだ。
もちろんいつも通り、エミリーが喜びそうな王都一人気のスイーツも忘れず持っている。
馬車が止まり、イザベラの屋敷へ着く。
ルークが来ることは分かっていたので使用人が待機していた。
「ようこそいらっしゃいませ。ルーク王子」
使用人が勢揃い。来るたびにいつもそうだった。この扱いにもだいぶ慣れたものだ。
一年前、ここに来た時との待遇が大違いだ。
「ルーク王子、ご案内いたします。どうぞこちらへ」
エミリーはわざとらしく『ルーク王子』と言う。
この表情はわかっていて言っている感じだ。
「どうぞこちらへ」
案内されたところはいつも、ルークとエミリーが昼食の時に食べていたあのベンチだ。
懐かしい。こんなところで食べるなんて。
最近はずっと貴族のお茶会とかそんなんばっかりだったから新鮮だ。
懐かしのサンドウィッチが置いてある。
「エミリー、これ良かったら」
ルークはエミリーに持ってきたスイーツを渡す。
「ありがとう」
二人になった瞬間口調が一気に変わる。これでもルークが王子なことを気にした結果だろう。
「ルーク、ひとつ言おうと思ってたんだけど、毎回スイーツなんて持って来なくてもいいのよ。貴族の間では普通なのかもしれないけど、庶民は毎回こうやって貢がれると勘違いしてしまうんだから....」
エミリーの顔は真っ赤だ。
これはもしかして、エミリーも俺に気があるってことなのだろうか。
奴隷時代を除けば、一番付き合いが長いのは俺だ。もしかして、今がチャンス?
「さ、もうお昼ね。一緒に食べましょう。まだ言ってなかったね誕生日おめでとう」
「ああ、ありがとう」
「今日はルークが来るってことで厨房のお兄さん張り切ってたわ。スペシャル誕生日メニューだそうよ」
「それは楽しみだな」
確かに料理はスペシャルで美味しい。だが、全然味が頭に入って来ない。
全然アプローチだってしてないし、まだ早いってのはわかっている。けど、この気持ちを伝えたい。よし、言おう。
もう、どうなってもいい。抑えられない。
「ルーク」
「エミリー」
二人が同時に名前を呼ぶ。
「エミリー、お先にどうぞ」
「それではお言葉に甘えて。昔とは全然立場が違うってのはわかってる。本当は話しかけるのでさえ烏滸がましいってことも。でも、言いたい」
これは、もしかして、もしかしなくても
「すっかり遠い存在にななってしまったけど私はやっぱりルークのことが好きです」
エミリーが俺のことが好き?こんなことが現実にあっていいのか。
「だから、昔みたいに話せるような友達として置いていただけますか?」
ルークの首がガクッと項垂れる。
友だちか。やっとそこまでになったのか。
「ああ、もちろんだ。時々会いに来る」
「ありがとう」
ま、いいか。友達でもそばにいれるなら....
そのあと俺はイザベラ様に呼び出された。
「ルーク、ダメだったのね」
「ええ、おともだち宣言されましたよ」
「けど、意識はされてると思うわ。これからも頑張りなさい」
「はい」
その時気づいたのだが控えていたレベッカさんの 表情がもう、奴隷の作り物ではなかった。
良かった。
「さて、王宮に戻ろう。今日は誕生パーティーだし」
俺は王子。義務を果たす。それが今俺がすべきことだ。
戸籍の登録や就職支援、そしてまだ解放されていない奴隷の回収とやることはいっぱいだ。
そしてルークはというと、今まで奴隷だっため勉学ができなかった者たちのため、まだ奴隷紋か消えぬもののために建設された奴隷構成施設の責任者を任されていた。
一番奴隷について理解しているのは、元奴隷であるルークがふさわしいとと言うことで王から任命されたのだ。
忙しい。忙しすぎる。エミリーに会いたい。
せっかくことが片付いてエミリーも奴隷ではなくなって人間に戻ったのにこれでは全然会う暇がない。
ルークは王子としての義務も果たしつつ、この仕事をしているため、激務だ。休みも返上して働いている。
宣言前の優雅さはどこへ行ったのやら。
「ルーク王子、大変そうね」
そう言ってルークの前に現れたのはイザベラだ。
今日は奴隷更生施設の見学に来ている。
「ええ、大変ですよ。俺は王子という身分をもらい教育も受け、元から奴隷ってわけじゃなかったからマシですけど、生まれた時からの子は奴隷って感覚がずっと残ってて根強いですね」
「なるほどね」
イザベラ様は他人事のような目だ。
「忙しいところ邪魔してごめんなさい。そうそう、気になっているだろうから言っておくわ。エミリーは相変わらずうちの屋敷でメイドとして働いて、元気に過ごしているわ。今度、手が空いた時にでも会いに来なさい。昔の感情が溢れ出しているせいか話したいこともたくさんあるみたいだし、会いたがっていたわ」
イザベラはそれだけ言ってその場を立ち去る。
エミリーが俺に会いたがっている。なんて喜ばしいことだ。一秒でも早く、会いたい。
ルークの願いが届けられたのはその一ヶ月後。
今日は特別な日。ルークがイザベラに買われた日でもある。
今日はルークの誕生日。十八歳になった。
馬車に乗って屋敷へ行くルークはルンルンだ。
もちろんいつも通り、エミリーが喜びそうな王都一人気のスイーツも忘れず持っている。
馬車が止まり、イザベラの屋敷へ着く。
ルークが来ることは分かっていたので使用人が待機していた。
「ようこそいらっしゃいませ。ルーク王子」
使用人が勢揃い。来るたびにいつもそうだった。この扱いにもだいぶ慣れたものだ。
一年前、ここに来た時との待遇が大違いだ。
「ルーク王子、ご案内いたします。どうぞこちらへ」
エミリーはわざとらしく『ルーク王子』と言う。
この表情はわかっていて言っている感じだ。
「どうぞこちらへ」
案内されたところはいつも、ルークとエミリーが昼食の時に食べていたあのベンチだ。
懐かしい。こんなところで食べるなんて。
最近はずっと貴族のお茶会とかそんなんばっかりだったから新鮮だ。
懐かしのサンドウィッチが置いてある。
「エミリー、これ良かったら」
ルークはエミリーに持ってきたスイーツを渡す。
「ありがとう」
二人になった瞬間口調が一気に変わる。これでもルークが王子なことを気にした結果だろう。
「ルーク、ひとつ言おうと思ってたんだけど、毎回スイーツなんて持って来なくてもいいのよ。貴族の間では普通なのかもしれないけど、庶民は毎回こうやって貢がれると勘違いしてしまうんだから....」
エミリーの顔は真っ赤だ。
これはもしかして、エミリーも俺に気があるってことなのだろうか。
奴隷時代を除けば、一番付き合いが長いのは俺だ。もしかして、今がチャンス?
「さ、もうお昼ね。一緒に食べましょう。まだ言ってなかったね誕生日おめでとう」
「ああ、ありがとう」
「今日はルークが来るってことで厨房のお兄さん張り切ってたわ。スペシャル誕生日メニューだそうよ」
「それは楽しみだな」
確かに料理はスペシャルで美味しい。だが、全然味が頭に入って来ない。
全然アプローチだってしてないし、まだ早いってのはわかっている。けど、この気持ちを伝えたい。よし、言おう。
もう、どうなってもいい。抑えられない。
「ルーク」
「エミリー」
二人が同時に名前を呼ぶ。
「エミリー、お先にどうぞ」
「それではお言葉に甘えて。昔とは全然立場が違うってのはわかってる。本当は話しかけるのでさえ烏滸がましいってことも。でも、言いたい」
これは、もしかして、もしかしなくても
「すっかり遠い存在にななってしまったけど私はやっぱりルークのことが好きです」
エミリーが俺のことが好き?こんなことが現実にあっていいのか。
「だから、昔みたいに話せるような友達として置いていただけますか?」
ルークの首がガクッと項垂れる。
友だちか。やっとそこまでになったのか。
「ああ、もちろんだ。時々会いに来る」
「ありがとう」
ま、いいか。友達でもそばにいれるなら....
そのあと俺はイザベラ様に呼び出された。
「ルーク、ダメだったのね」
「ええ、おともだち宣言されましたよ」
「けど、意識はされてると思うわ。これからも頑張りなさい」
「はい」
その時気づいたのだが控えていたレベッカさんの 表情がもう、奴隷の作り物ではなかった。
良かった。
「さて、王宮に戻ろう。今日は誕生パーティーだし」
俺は王子。義務を果たす。それが今俺がすべきことだ。
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