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1章 はじまり

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馬車に乗り、現在は主人の住居に向かっている途中だ。

「ルーク、少し寄り道をして良いかしら?」
「はい、もちろん大丈夫です。ご主人様」
 この人はモノにどうしてそんな態度を取るのだろうか。奴隷なのだから聞く必要なんてないだろうに。
「あ、そうそう言い忘れていたけど私のことはイザベラと呼ぶように」
「かしこまりました」

 そして馬車はとある場所で止まる。紳士専門店、通称テーラーだ。主に富裕層が利用する。

「ルークあなたも降りるのよ」
「はい」

 店内はお昼時だからかそこまで賑わってはいない。

「いっらしゃいませ」
 まるで来るのが分かっていたと言わないばかりに店員はイザベラに声をかける。
「ゴトウィン女侯爵様でお間違いないでしょうか?」
「ええ、そうよ」
「本日は如何なさいましたか?」
「この子の服、一式揃えて欲しいのよ。普段着と靴を五着ずつ。それから社交用を一着ってところかしら」
「かしこまりました。特に色などの指定はございませんか?」
「ええ、今日はオーダーメイドではなく既製のものですぐ使えるものを。社交用だけはオーダーメイドが良いから柄は一番良いもので良いものを。それだけ後日屋敷に届けて貰える?」
「勿論でございます」
「それじゃあお願いね。私は一時間ぐらいしたら戻ってくるから」

 奴隷に服を仕立て、イザベラ様はどうするつもりなのだろう。

「お連れさま、奥へどうぞ。一時間とのことですので少し急ぎ足になりますがよろしくお願いいたします」
「はい」

 まずサイズを測り、そこから靴や服を選んで行く。どんな形が好みだとか色だとかを聞かれるがルークは戸惑っている。なので勧められたものをそのままと言った感じだ。

 なぜここの人は奴隷である俺に人扱いをするのだ。ああそうか、今はもう俺はイザベラ様のモノ。彼女の所有物だからモノでも丁寧なのだ。

 一時間後
「うん、どれも良いわ。社交用、一着って言ったけれど、どちらもルークに似合ってるし二着頂くわ」
「ありがとうございます」

「ルーク、それではこれで寄り道は終わりよ。行きましょうか」

 綺麗な身なりになったルークはまるで何処かの国の王子様だ。しかし慣れないのか所々疲れが見える。

一時間ぐらい馬車に乗り、やっと目的地に着いた。
「ここがきょうから貴方の暮らす場所よ」

だいぶ辺境地にあるが目の前にある建物は立派だ。流石侯爵家と言ったところだろうか。

「おかえりなさいませ、イザベラ様」
 三人の使用人が主人の帰宅を迎える。

 護衛を除いて三人しかいないのか。貴族の割には少ないな。

「ただいま。今日から一人増えることになったわ。こんなところで悪いけど簡単に自己紹介ね。はい、どうぞ」

「ルークです。お世話になります。宜しくお願いします」
自己紹介、こんなので良かったのだろうか。
「じゃあ右から、彼女は侍女長のアデル。この屋敷の管理は彼女が全てやっているわ。それで真ん中がエミリー。貴方と同じ奴隷であり、侍女である。このあと屋敷に関しては彼女から学ぶように。それから一番左にいるのはレベッカ。彼女もまた奴隷で私の秘書よ。仕事を手伝ってくれているの」

 奴隷はここ屋敷に俺を含めて三人か。エミリー、彼女を見るのは二年ぶりだ。けれど、だいぶ印象が違う。

「それじゃあ早速だけどエミリー、ルークに屋敷の案内を。アデルはその間に部屋を整えておいて」

「「かしこまりました」」

「久しぶり、ルーク。さ、案内をするわ。行きましょう」

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