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僕がついた本当の嘘
第7話 祈り
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かなりの時間僕は机と椅子しかない無機質な待合室で祈り続けた。
その間も、勤会社からしつこく電話があったがどうでもよかった。
ふいにドアが軽くノックされ、ドクターと看護師が静かにドアを開いた。
二人は失礼しますと声をかけ僕の前に腰掛けた。
「手術を担当した森田と申します。経過についてお知らせに参りました」
心臓の鼓動が恐ろしく早くなる。
「結論から申し上げます。患者さんは非常に危険な状態です。」
ある程度のことは予測していたが、目の前でドクターに言われたショックは想像以上に大きかった。看護師の哀れむような眼が僕の不安をさらに煽った。
「できる限りの手は尽くしましたがしばらくは予断を許さない状態です。一命を取り留めたとしても意識が戻る保証はありません」
「どういう意味ですか?」
僕は手のひらに爪の跡がつくほど握りこぶしに力を入れ聞いた。
「いわゆる植物状態になる可能性があるということです。あくまで仮の話ですが」
そう言うとドクター森田は、視線を僕の目から何もない机に移した。
「お気持ち的に大丈夫であれば、今患者さんにお会いされますか?」
看護師の言葉に僕は「はい、会わせてください」と即答した。
集中室へ向かう途中、何人かの看護師とすれ違ったが、お気の毒にとの声が聞こえてくるようだった。
「出られたらまたナースセンターにお声をかけてください」
深々と頭を下げ看護師は踵を返した。
その間も、勤会社からしつこく電話があったがどうでもよかった。
ふいにドアが軽くノックされ、ドクターと看護師が静かにドアを開いた。
二人は失礼しますと声をかけ僕の前に腰掛けた。
「手術を担当した森田と申します。経過についてお知らせに参りました」
心臓の鼓動が恐ろしく早くなる。
「結論から申し上げます。患者さんは非常に危険な状態です。」
ある程度のことは予測していたが、目の前でドクターに言われたショックは想像以上に大きかった。看護師の哀れむような眼が僕の不安をさらに煽った。
「できる限りの手は尽くしましたがしばらくは予断を許さない状態です。一命を取り留めたとしても意識が戻る保証はありません」
「どういう意味ですか?」
僕は手のひらに爪の跡がつくほど握りこぶしに力を入れ聞いた。
「いわゆる植物状態になる可能性があるということです。あくまで仮の話ですが」
そう言うとドクター森田は、視線を僕の目から何もない机に移した。
「お気持ち的に大丈夫であれば、今患者さんにお会いされますか?」
看護師の言葉に僕は「はい、会わせてください」と即答した。
集中室へ向かう途中、何人かの看護師とすれ違ったが、お気の毒にとの声が聞こえてくるようだった。
「出られたらまたナースセンターにお声をかけてください」
深々と頭を下げ看護師は踵を返した。
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