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僕がついた本当の嘘
第3話 記憶②
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金庫の中は空っぽだったが、手を伸ばすと奥の方から新聞紙に包まれたものがあり、僕はそれを取り出した。
「おじいちゃん、これ?」
「そう、それや」
おじいちゃんはそう言いまた二回咳をした。
僕はそれをおじいちゃんに渡すと、ゆっくりと新聞紙をめくっていった。
中から出てきた小さな石を僕とおじいちゃんの間に置いた。
「隆久、今から大事な話をするけど、このことは誰にも言ったらあかんで。約束できるか?」
僕は少し間をおいて答えた。
「わかった、誰にも言わへん」
「隆久はいい子やから約束してくれる思ったで」
おじいちゃんはそう言うとしわくちゃな手で僕の頭を撫でてくれた。
そしてゆっくりと話し始めた。
「いいか、よう聞いてや。この石は不思議な力を持った石なんや。この石を身に着けて言った嘘が本当になるんや。ただし1回だけや」
僕はその時、どんな顔をして聞いていたのだろうか。
「そやけどな、その嘘というのは本当の気持ちと反対の嘘でないとあかんのやで。そうでないとその嘘は本当にならへん。おじいちゃんはこの石を使うことがなかったからこれを隆久に渡しておく。将来よく考えて使うんやで」
そう言っておじいちゃんはまた新聞紙にその石を時間をかけて包みなおした。
僕に手渡す時にこう付け加えた。
「それからもう一つ大切なことや。得るものと失うものがなければその嘘は本当にならないからな」
(えるものとうしなうもの)
意味はわからなかったがそのフレーズだけは耳から離れなかった。
おじいちゃんの病気が悪くなり、亡くなったのはそれから一月後だった。
あの時の「石」だ。
あの日僕はその新聞紙で包まれたそれをポケットに押し込み、家に帰り誰にも気づかれないように自分の机にそっとしまった。
当時おじいちゃんが言っていることを信じていたわけではないが、その雰囲気から何か特別な大切なものであることだけは感じていた。
嘘からでた真か、
とつぶやいて、少し違うなと自分の言葉を笑った。
「おじいちゃん、これ?」
「そう、それや」
おじいちゃんはそう言いまた二回咳をした。
僕はそれをおじいちゃんに渡すと、ゆっくりと新聞紙をめくっていった。
中から出てきた小さな石を僕とおじいちゃんの間に置いた。
「隆久、今から大事な話をするけど、このことは誰にも言ったらあかんで。約束できるか?」
僕は少し間をおいて答えた。
「わかった、誰にも言わへん」
「隆久はいい子やから約束してくれる思ったで」
おじいちゃんはそう言うとしわくちゃな手で僕の頭を撫でてくれた。
そしてゆっくりと話し始めた。
「いいか、よう聞いてや。この石は不思議な力を持った石なんや。この石を身に着けて言った嘘が本当になるんや。ただし1回だけや」
僕はその時、どんな顔をして聞いていたのだろうか。
「そやけどな、その嘘というのは本当の気持ちと反対の嘘でないとあかんのやで。そうでないとその嘘は本当にならへん。おじいちゃんはこの石を使うことがなかったからこれを隆久に渡しておく。将来よく考えて使うんやで」
そう言っておじいちゃんはまた新聞紙にその石を時間をかけて包みなおした。
僕に手渡す時にこう付け加えた。
「それからもう一つ大切なことや。得るものと失うものがなければその嘘は本当にならないからな」
(えるものとうしなうもの)
意味はわからなかったがそのフレーズだけは耳から離れなかった。
おじいちゃんの病気が悪くなり、亡くなったのはそれから一月後だった。
あの時の「石」だ。
あの日僕はその新聞紙で包まれたそれをポケットに押し込み、家に帰り誰にも気づかれないように自分の机にそっとしまった。
当時おじいちゃんが言っていることを信じていたわけではないが、その雰囲気から何か特別な大切なものであることだけは感じていた。
嘘からでた真か、
とつぶやいて、少し違うなと自分の言葉を笑った。
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