タケノコの里とキノコの山

たけ

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ニ章 

第四十四話 バギーで

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「うお」

ブウン と、古臭いエンジン音が鳴り響く

「おい!爆発しねえよな!?これ!!」


エンジンをふかしたのはキクだ。唐突な爆音に
体を震わせた彼をハルとカイム2人は横から鼻で笑う


「しないさ、、うん、まあ、ちょーっと古いから、爆発してもおかしくないけどね、うん」


「は、はあ!?こんなんでヨツンヴァインと戦えるのかよ!」


「大丈夫さ、そこは皆で頑張ろうか」


「不安だ、、、、、」


カイムの声はエンジン音に掻き消され、そしてついにアガレスはハンドルに手をかける

「さあ、、、、行くよ」


下の突起物を勢いよく踏み、タイヤが高速で回り始める。

次の瞬間高い金属音が鳴り車が動き、土埃を上げ
地を走り出した



その光景はキノコ族にとっては驚愕そのものであった。


「うおおおおお!?!?」



「すげえ!!動いてる!!!」


「ふっ…あまり暴れると、、、、壊れるよ」


ハンドルを右にぶん回し勢いよく進行方向を変える
ヨツンヴァインのいた方向に


「うお」

ここは地形が悪い。ガタガタと揺れる感覚にキノコ族の3人は焦りを覚える。本当に大丈夫なのか、と


「なあ、車でどうするんだ?ヨツンヴァインとどうやって、、」


「さっき言った通り、ヨツンヴァインを瀕死にする為に傷を与え続けなければいけない。だが動き回る巨人に素早さではどうしてもかてない。その素早さに追いつくために車を使うんだ、これは車じゃなくてバギーだけどね」


「……この揺れる車の中から攻撃しろってコト?」



「そう、アデルに勝利するにはそれしか方法はない」


「くっ…やってやらあ」

「それしかないならそれしかないよね、、」


キノコ村の事もあり、考え込む時間などない。即決しハンドルを回すアガレスを見守った


「……そういえば」

カイムがアガレスに対して口を開いた


「…このクルマってのは、何が目的で作られたんだ?」


「…まあ、目的地への高速移動の為、じゃないかな。
別に俺が作ったわけじゃないからね、作ったのは昔のお偉い技術者さんだ分からないけどまあそんな所だろう。うん、」


「ほーん…」

「昔の世界は今とは比べ物にならないほど広く沢山のモノがあった。そこに住んでいた者たちにとって、クルマというのは人やモノを同時に運べる大切な技術の塊だったんだ」

「なんで知ったような口を…」


「まあ…あ」

アガレスが会話を遮り”あ”と言う
視線の先をハルたちが追いかけると、そこにはあの恐ろしい巨人がいた

先程の戦闘の名残に土が付いていて、少し疲労しているのかヨダレをたらし小さく動いている


「…っ、割と近くにいたな」

「違うよキク、このクルマが速すぎたんだ。」

「どっちでもいいだろそんなこと!!!」

「さあ、短期決戦だ、疲労中の今が一番、突撃する。」


「ちょまてよ、こころのじ」

ハルの言葉を思い切り無視し、アガレスは最高の爆速でクルマを走らせる


「速ああああああああああああああああああ」


叫び声すら残像と化し、一気にヨツンヴァインへ接近する

その音にヨツンヴァインも気付き大声を上げた


「ギアあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


「くっ!」


ヨツンヴァインはその巨体で地団駄を踏み視界を撹乱させる。バギーの走る音の何倍も大きな音を立てた

「っおおお!振り落とされるなよ!!」

そう叫び、アガレスがハンドルをギュルギュルとまわし急激な方向転換を行う


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


バギーからふり飛ばされそうになるも根性で張り付く


「はぁ…っ!言われてみればたしかにあいつ、体の使い方が分かってない…!見てからでも避けれる動きだ…!」


「そうだろう!次はこちらから攻めるぞ!ハル!!左足だ!!」


そう言って、左へハンドルを回し、軽くドリフトのような動きで動く、巨人の左足に向かってタイヤの跡を地面に残し


「ヨツンヴァインの左足に傷を付ける!車から剣を伸ばせハル!!!」

「応!!!!!!」


ハルはバギーから体を出し、ふり飛ばされないようにカイムとキクが体を支える。


「いっけえええ!!!!!」


そしてバギーと巨人の左足があと目と鼻の先という時、ハルの剣はソレに向かって伸びてゆく


「はあっ!!!!!」


ギャリ という音が鳴り響く。その音の残響を残しバギーは全員を乗せてすぐさまヨツンヴァインから離れる。



「当たった!?」

「ハル!確かにあたった…!でも反応がない!あの巨体でも切られたら叫ぶなりするはずなんだが…」


「……く!?」


確かに今、ハルの剣はヨツンヴァインの左足に(左脚甲の部分)当たった。それもバギーの勢いを使って
なのにヨツンヴァインにはなんのダメージもなく、悲鳴を上げるような事も一切しなかった


そして……

「折れてる……」


ーー巨人へ攻撃したハルの剣が折れていた


「な…っ!?」


「つまり……ヨツンヴァインさんよぉ……おれたちの攻撃が聞かねぇくらい硬いってわけ……」


ほぼ確実な推測にアガレズは


「……だろうと思ったよ、剣で斬れるレベルの筋肉ならこの自然に生息できないからね…」


と言う


「だと思ったのになんで来たんだよてめぇ!!」


「正直 行けると思ったのさ」


「お前…!!以外とアレだな!!!」


「ーーそう思われて嬉しいよ」


キクとアガレズがそう言い合う

その間にハルが割り込んだ


「そうだ!!アガレズ!触手の剣を使えば!」


「はぁ!?こいつの体の剣とか…」


「今はそんなこと言ってられない!」


ハルの焦りを含んだ早口に流石のキクも妥協する

「まあ、そうだな…時間がない…!」


即決、そして、話を聞いていたアガレズが脚の触手をぶち抜く


「全く…無限に生える俺の触手なら良いと?一応ちぎるのは痛いんだよ…まあ、名案だけどね」


ぶちぶちぶちと音をたて、触手を4本抜いた。
それらは硬化し、すぐさま漆黒の剣となった

「触手剣も普通の剣とさほど切れ味は変わらないかもしれないが…数でゴリ押しすれば少しは傷をつくはず…!」


「よし……もう一回!!行くぞ!」


またもや巨人の左足に向かって全力でバギーを進ませる



いつの間にか、自分達が踏んでいた砂利だらけの森はタイヤの跡とヨツンヴァインの破壊でまっさらな地と化していた
    
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