タケノコの里とキノコの山

たけ

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プロローグ タケノコ村とキノコ村

第十二話 命の階級ー

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集められたのは本部の出入り口。そこに三級のパアワが立っていた。上級が自分たちを待っているとは思わなかったが。彼とは数回言葉を交わしているので安心だ。動揺せずに耳を傾けられる。

115号室のあの目つきの悪い男もいる。シズもいた。目があうとシズはニコッとして、やはりここの軍には似合わないと思った。

「なにがあるんだろ~な?」

「さあ…でも戦い関連だろうね。それしか考えられない」

カイムと静かに会話をしていたときパアワは言う

「さて、まず集まってくれてありがとう。今から、ある任務の概要を説明し、参加者を募集する。」

低い声でそういう。前、楽しく話をしていたあのときとは違った。

これは“上級"が"仕事“の話をしている。その事をしっかりと頭のなかに刻み込ませるような重々しい声。

「ある任務とは、少し前、シェルターの位置がバレた件についての理由が判明した。知っているひともいると思う。」

自分とレイの任務の事か。自分が雑魚だったことで相手は油断し情報を話した。

それが結果、キノコ軍の進展に繋がっていると考えると。照れくさい。照れくさいのだろうか…

「昔からたけのこ軍が俺達に顔を出さずに偵察していたんですよね。確か」

モブがそういう

「そうだ。キノコ村はこれでも警備を固めていたつもりだが、そんなことをされるとは思わなかった。上級の責任だ。済まない…だから警備を強化するといった話も出た。だが無理だった」

単純に予算がない。ということなのだろう。

じゃあどうするか、答えは脳筋のゴリ押しだった


「…だから、こちらもたけのこの里へと足を踏み入れようと思う。つまりは、タケノコ軍にやられたことをそのまま返し、相手の動きを探り事前に対策する。これが狙いだ」

今まで危険を考えやっては来なかったが、状況が状況だ。と続けた

ざわめきが波となり広がる。確かに、いつ来るか分からないのに警備を強化しても負担が増えるだけ。

その点、偵察しに行きタケノコ軍の動向を掴めば、余計なことはする必要がなくなる。確かに合理的だ

偵察…それはつまり、誰も殺す必要がない?

「…つまり、タケノコ軍の偵察を君たちに任せようと思う。3人、いや2人でいい。だれかやろうと思うものは…」

「ーーーつまり、俺達の命なんざどーでもいいってか」

聞き覚えのある声が全体に響く。パアワに向かって放った声かというよりは、ここにいる人間すべてに向けて放った声のような気がした。

そう。聞き覚えのある声
その正体


115号室の 目つきの悪いあの男だった。



「?」
二人の男同士の目が合う

「どうなんだよ なあ」

男は言う。目つきの悪さが更に威圧感を引き立てる。

怒り だった。

落ち着いてパアワに話しかけてるようで、込み上げる怒りが隠してきれてない。空気を読まない人だが、この男の言い分も少し分かる。

「どうなんだよって…何がだ」


「そうだろ?初の危険な行動を起こすんだから。最初は命の"階級"が低い俺達を行かせようとするよな?


「………」

「まぁその方がいいもんな。ここで上級を出動させて失敗したときの損害を考えれば、俺ら見てぇな雑魚を死ぬ前提で行かせて様子を見るべきだ。軍として百点だよ。三級さん」

「…………………………………………………………………ちがう………………………………………そんな…………」

新人の言うことにパアワは言い返す事ができない。





レディーファーストとは、男性が危ない橋を渡るとき、女性に先に行かせて様子を見るという事から始まったそうだ。今回の作戦に自分たちを使うのはそういうことだ。

ーお互い、間違ってはいない。

タケノコ軍の抵抗のために、村のために。軍を効率よく動かす“軍としての考え“

死ぬ前提で行う今回の任務に異を唱え、命の平等を訴える"人としての考え"

パアワも軍としての考えを発することに抵抗を示しているように見えた。

平和な世界ともなれば後者の考えが正しい事が多い。しかしハルや周りの考えは違う。目つきの悪い男に、ハルも含めたほぼ皆が睨む



ーー何故なら“ココハソウイウセカイ“だからだ

「ーーってめえ!ふざけんじゃねえ!!」

(カイム!?!?)
心でハルが叫ぶ

カイムだった。

「…あ?誰だおめぇ」  

「カイムだ!覚えとけ!」

カイムが男の胸ぐらを掴む。そういう大胆さもハルにはないものだった。

「もし、タケノコ軍へ行って!俺達の思ってないような敵がいたらどうする?もしそこにキノコ軍の上級様たちがいたらどうする!?そこで、キノコ軍が!死んだら!この村はどうなるんだ!!!」

「しるかよ、うるせーよ!上級が全てじゃない。どっかで、統率者が現れる、世界ってのはそういうもんだ。なるようになる。だが人の思いはなるようにならない。死ぬ前提てそこにいって死んで、悲しむ人が大勢いる。それは、それだけは絶対に なるようにはならない。




ー俺が、そうだった。」


「そっちこそ知るかよ!」

平行線である。二人は確実に主張を変えることはない。ということは行き着く先は一つ

「てめぇぇ!」

暴力だ。

「お前。動きが変だぞ。手加減してるのか?」

「ああそうじゃねぇの!!?」

殴る、殴る、でも当たらない。カイムの一方的な男への暴力はすべてかわされた。入って半年しかたって無いと聞いたが、そうとは思えない身体能力だ。

それは周りに広がっていき、男を殴ろうとするもの、カイムを止めるものと広がっていく。そのとき

「もういい!!やめろ!!!」

パアワが怒鳴る。忘れかけていた上級の重圧感に全員が気を引き締め、気を付けの姿勢を取る。

「わかった…お前の、キクの言うとおりだ。俺達がいこう。この話は、全て無しだ。」

目つきの悪い男は、キク というらしい。

「そうかよ」

キク という男はハルの思う人物とは違い、以外とガキだった。主張を曲げないし、空気を読まないし、綺麗な会話展開で論点を丸く収めようとする気がない。ガキだった。まあハルと同い年らしいし…

その瞬間、またもや平行線。

「いいや、俺一人が行きます。」

「はぁ?」

カイムである。主張を曲げないし、空気を読まないし、綺麗な会話展開で論点を丸く収めようとする気がない。結局皆五級だ。

「……いや、お前にも大切に思っている人がいるだろ。キクの言う通り。そんな命は粗末にするもんじゃない…俺でもわかってる」

「じゃあ、あなたが死んだらその穴埋めが来る間、誰が世界を守るんですか?
ー俺は軍に入ってそこそこの時間がたった。この力がどうなるか見たい。だから、行かせて下さい。」

半ば強引だがカイムはそういう。パアワ的にも否定出来なかった。

「……じゃあ、言ってくれるか?」

「はい」

「…ちっ、馬鹿じゃねーの」

そのとき、思い出す。参加人数は二人はほしいと行っていた。カイム一人で行くのだろうか?


考える。このままだと、カイムに距離を離される。ただでさえ、ハルはカイムより弱いのに、この経験で更に距離が伸びたら、それは最悪だ

考える。俺は、強くなって、軍に恩返しをするんだろう?なのに、ここで縮こまっててどうする?


ー考えた


「ーーー俺も!一緒に行かせて下さい!!!!」
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