俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

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第六章

追跡

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「それで?オレ達はどこに行けばいいのかな!」
ユスティーツが大きく伸びをすると、オルクスは無言で椅子を取り出した。
「おい、オルクス?どこに行くつもりだ?」
「フォルストだ。」
俺が尋ねるとため息をつき、目も合わせずにそう言うとテレポートしてしまった。
「シャルさん、追うよ!早く!」
ユスティーツも椅子に座ると楽しそうに告げると姿を消し、フェイもそれに続いた。慌てて俺も椅子でテレポートする。

「絶対に嫌だね!その役はオレがやりたい!」
着くと、早速ユスティーツとオルクスが喧嘩をしていた。喧嘩と言っても怒っているのはユスティーツだけで、オルクスは煩く騒ぐ子供を眺めているような目で見下ろしていた。
「どうしたの?」
「あ!シャルさん!オルクスがオレは囮をやれっていうからさ!」
「ユスティーツが囮、他は捕獲だ。」
正義感の強いユスティーツには、最後の重要な役を取られている気がするのだろう。代わってあげたいけど、俺がやると捕まってしまいそうだ。
「フェイがやったら?」
「女の子にこんなことさせるのぉ?酷いよぉ!」
「…オルクスは。」
「やる訳ないだろう。」
確かに、ユスティーツが適役だ。俺が考えているとユスティーツが身構えた。オルクスは一見いつも通りだが、目だけはユスティーツと同じ方向を見ていた。フェイは無言で銃を構える。ユスティーツは短く告げた。
「誰かいるよ。」
その方向は森の中で、鳥や虫の羽音が不気味に響いていた。俺もそこをじっと見る。暫くの沈黙の後、近くの草が不自然に揺れた。
そこから二人の男女が現れる。まだ幼い彼らの頭の上には、獣の様な耳があった。
「こんにちは、シャル様。」
口を開いたのは少年の方だった。
「君は…誰?」
「僕らは貴方の護衛です。」
少女は黙ったまま何か言いたげにこちらを見てくる。反対に少年の目はどこか遠い場所を向いているようだった。
「中央教会で、あの沈黙を破ったのは彼です。」
「…彼?」
話しているのは少年だ、少女ではなく…彼?こう見えて二人とも男?
「失礼しました。今貴方が話しているのは彼であって、僕でもあるんです。彼はただの媒体…思考するのは僕です。」
口を動かしているのは少年だが、俺は少女と話しているような気分になる。
「話は聞きました…僕が囮をやります。」
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