俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

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第六章

役目

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「シャル君は創造主の事を知りたいんだよね?このバグは、その手がかりになるかもしれない。」
「バグが、手がかりに?」
聞き返すと、ヴィッツはイデーに近づいた。
「イデー嬢の紅糸を改造し、バグに付ける。ヴェルトの法則に縛られている僕達ではあれをどうしようもないからね、創造主もしくは創造主の仲間―ヴェルト公式の人間が直しにくる。それがどんな手段かは分からないけど…それを観察出来たら、と思ってね。」
イデーは紅糸を弄びながら言った。
「メンテナンスだとヴェルトにログイン出来ない場合があると思うが。」
ヴィッツは目を細めた。
「実はヴェルトは、既に何百回ものメンテをしているんだよ。」
確かにこのデータが多いゲームでは、メンテナンスが絶対に必要になる。今までも何回か職業が増えていたらしい。
「でも…ログイン出来なかった時はない。俺達が知らない間にメンテナンスが行われている…。」
「面白い話でしょ?」
ヴィッツの楽しげな声に頷く。面白い、というよりは興味深い。彼の言う手がかりの意味が、分かった気がする。
「フェイはぁ、何かできることあるぅ?」
珍しく静かだったフェイが、我慢できなくなったように尋ねる。すっかりリーダーになってしまったヴィッツは、黙ったままのオルクスとユスティーツを眺めた。
「もちろんあるよ。僕とイデー嬢以外は、バグを見つける役目だ。」
「バグを見つけるって、この広いヴェルトからどうやって…」
「ヨシュカが一番多い場所に現れる確率が高い。」
地図から顔を上げたオルクスが一人言のように呟いた。
「そういうことだよ。オル君、よろしく~!」
オルクスはヴィッツを無視して続ける。
「ヨシュカは六人。四人で集まれば奴は来る。」
「だから、イデーとヴィッツさん以外は探す役目…でも、どうしてヨシュカがいる所にバグがあるんだ?」
オルクスに聞いたつもりだったが、再び地図を広げて無視された。
「僕が答えよう、シャル君。可能性としては二つ。一つは僕達の存在がバグを引き起こしている。二つ目は、バグが僕達を使って更にバグらせようとしている。」
「どっちも同じじゃないのぉ?」
「全然違うよ、前者なら僕達が出来るだけ集まらないようにすればバグは起きにくくなる。もしかして創造主が、僕達自体をメンテするかも?後者なら…バグに意志があるということだ。この世界ヴェルトを壊そうという明確な意志がね。」
バグに意志、後者が事実なら、ヴェルトを守るはずの俺達が利用されて壊す道具となってしまうということだ。
絶対に、そんなことはさせない。一刻も早くバグを直してもらわなくてはならない。しかし、創造主に直される前にバグを見つけなくてはいけない。
「分かりました。探しに行きます。」
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