俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

文字の大きさ
上 下
55 / 95
第六章

役目

しおりを挟む
「シャル君は創造主の事を知りたいんだよね?このバグは、その手がかりになるかもしれない。」
「バグが、手がかりに?」
聞き返すと、ヴィッツはイデーに近づいた。
「イデー嬢の紅糸を改造し、バグに付ける。ヴェルトの法則に縛られている僕達ではあれをどうしようもないからね、創造主もしくは創造主の仲間―ヴェルト公式の人間が直しにくる。それがどんな手段かは分からないけど…それを観察出来たら、と思ってね。」
イデーは紅糸を弄びながら言った。
「メンテナンスだとヴェルトにログイン出来ない場合があると思うが。」
ヴィッツは目を細めた。
「実はヴェルトは、既に何百回ものメンテをしているんだよ。」
確かにこのデータが多いゲームでは、メンテナンスが絶対に必要になる。今までも何回か職業が増えていたらしい。
「でも…ログイン出来なかった時はない。俺達が知らない間にメンテナンスが行われている…。」
「面白い話でしょ?」
ヴィッツの楽しげな声に頷く。面白い、というよりは興味深い。彼の言う手がかりの意味が、分かった気がする。
「フェイはぁ、何かできることあるぅ?」
珍しく静かだったフェイが、我慢できなくなったように尋ねる。すっかりリーダーになってしまったヴィッツは、黙ったままのオルクスとユスティーツを眺めた。
「もちろんあるよ。僕とイデー嬢以外は、バグを見つける役目だ。」
「バグを見つけるって、この広いヴェルトからどうやって…」
「ヨシュカが一番多い場所に現れる確率が高い。」
地図から顔を上げたオルクスが一人言のように呟いた。
「そういうことだよ。オル君、よろしく~!」
オルクスはヴィッツを無視して続ける。
「ヨシュカは六人。四人で集まれば奴は来る。」
「だから、イデーとヴィッツさん以外は探す役目…でも、どうしてヨシュカがいる所にバグがあるんだ?」
オルクスに聞いたつもりだったが、再び地図を広げて無視された。
「僕が答えよう、シャル君。可能性としては二つ。一つは僕達の存在がバグを引き起こしている。二つ目は、バグが僕達を使って更にバグらせようとしている。」
「どっちも同じじゃないのぉ?」
「全然違うよ、前者なら僕達が出来るだけ集まらないようにすればバグは起きにくくなる。もしかして創造主が、僕達自体をメンテするかも?後者なら…バグに意志があるということだ。この世界ヴェルトを壊そうという明確な意志がね。」
バグに意志、後者が事実なら、ヴェルトを守るはずの俺達が利用されて壊す道具となってしまうということだ。
絶対に、そんなことはさせない。一刻も早くバグを直してもらわなくてはならない。しかし、創造主に直される前にバグを見つけなくてはいけない。
「分かりました。探しに行きます。」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!

つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。 冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。 全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。 巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。

異世界召喚に巻き込まれたのでダンジョンマスターにしてもらいました

まったりー
ファンタジー
何処にでもいるような平凡な社会人の主人公がある日、宝くじを当てた。 ウキウキしながら銀行に手続きをして家に帰る為、いつもは乗らないバスに乗ってしばらくしたら変な空間にいました。 変な空間にいたのは主人公だけ、そこに現れた青年に説明され異世界召喚に巻き込まれ、もう戻れないことを告げられます。 その青年の計らいで恩恵を貰うことになりましたが、主人公のやりたいことと言うのがゲームで良くやっていたダンジョン物と牧場経営くらいでした。 恩恵はダンジョンマスターにしてもらうことにし、ダンジョンを作りますが普通の物でなくゲームの中にあった、中に入ると構造を変えるダンジョンを作れないかと模索し作る事に成功します。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

変人奇人喜んで!!貴族転生〜面倒な貴族にはなりたくない!〜

赤井水
ファンタジー
 クロス伯爵家に生まれたケビン・クロス。  神に会った記憶も無く、前世で何故死んだのかもよく分からないが転生した事はわかっていた。  洗礼式で初めて神と話よく分からないが転生させて貰ったのは理解することに。  彼は喜んだ。  この世界で魔法を扱える事に。  同い歳の腹違いの兄を持ち、必死に嫡男から逃れ貴族にならない為なら努力を惜しまない。  理由は簡単だ、魔法が研究出来ないから。  その為には彼は変人と言われようが奇人と言われようが構わない。  ケビンは優秀というレッテルや女性という地雷を踏まぬ様に必死に生活して行くのであった。  ダンス?腹芸?んなもん勉強する位なら魔法を勉強するわ!!と。 「絶対に貴族にはならない!うぉぉぉぉ」  今日も魔法を使います。 ※作者嬉し泣きの情報 3/21 11:00 ファンタジー・SFでランキング5位(24hptランキング) 有名作品のすぐ下に自分の作品の名前があるのは不思議な感覚です。 3/21 HOT男性向けランキングで2位に入れました。 TOP10入り!! 4/7 お気に入り登録者様の人数が3000人行きました。 応援ありがとうございます。 皆様のおかげです。 これからも上がる様に頑張ります。 ※お気に入り登録者数減り続けてる……がむばるOrz 〜第15回ファンタジー大賞〜 67位でした!! 皆様のおかげですこう言った結果になりました。 5万Ptも貰えたことに感謝します! 改稿中……( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )☁︎︎⋆。

【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…

三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった! 次の話(グレイ視点)にて完結になります。 お読みいただきありがとうございました。

処理中です...