俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

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第六章

歪み

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『オル君一人では無理だ…そうだね、例えば』
ヴィッツが何かを言いかけた時、ドアが大きな音を立てて開いた。
「お待たせ!」
「ユスティーツ!来てくれたんだね!」
ユスティーツは俺達を見ると露骨に嫌そうな顔をした。
「うわ、オルクスだ。」
「ユスティーツか…。」
対してオルクスは、ユスティーツの方を見もせずに呟いた。
『ヨシュカを全員呼んだのか。』
『ちょっと…話し合いたいから。』
気まずい雰囲気になっていると、イデーやフェイも到着した。
「これで全員揃ったね。」
俺は円を書くように立った皆の、中心へ出た。
「その前にぃ、ここへ来る途中で変な人いたよぉ?」
フェイの一言にヴィッツとオルクスが反応した。
「変な人って、どんな人?」
ヴィッツが尋ねると、彼女はううんと考え込む。
「身体がぼやけているようなぁ…。」
「ありがとうねー。シャル君、自己紹介は後だ。」
ヴィッツはフェイに爽やかに笑って見せると、一人で外へ出ていってしまった。その後にオルクスが続こうとする。
「オルクス、一体何を?」
「…バグだ。シュティレはそこで待機しろ。」
シュティレはいつものように機械的な口調で答える。
「はい、お兄様。」
「フェイも行くぅ!」「我も同行しよう。」「オレも!」
皆が次々に出ていく。
「ぼ、僕も!」
結局、シュティレ以外の全員で付いてきてしまった。シュティレと二人きりで教会にいるという選択もできたが、オルクス達のただならぬ雰囲気に気がつき、それどころでは無いことを察した。
「あれだ!」
先頭のヴィッツが指差した先には、一人の男がぼうっと立っていた。
そして、違和感に気がつく。
その男は全体的にぼんやりとしていた。それは視覚的なもので、輪郭や顔、手や足の先までもが薄くぼやけていた。表情もモザイクがかかったようになっていて、幽霊を見ている気分になる。
彼は俺達に気がついたのか、手を振った。
「…やァ…。」
一体、どんな声を出したらこんな文字になるのだろうか。
その吹き出しはノイズが混ざったようにいびつで、一瞬消えてはまた表示されるといった不安定な物だった。
「邪魔だ。」
突然オルクスに押し退けられる。すると、その瞬間男は身体ごとノイズに飲み込まれたようにぼやけ、消えてしまった。
「あーあ。オル君強いから、逃げちゃったよ。」
オルクスはヴィッツの非難の声を無視し、地図を取り出して何かを考えていた。
イデーが紅い糸を漂わせながら言った。
「我の紅糸も受け付けない…何者だ?」
ヴィッツがため息をつきながら答える。
「何者でもないし、何者でもある…そんな感じ。」
「なぞなぞみたいねぇ!」
フェイは銃をしまうとその場で座った。
「とりあえず、悪いやつってことだよね!それなら倒さないと!」
この状況で、何故かユスティーツだけが楽しそうにしていた。
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