51 / 95
第六章
メーア
しおりを挟む
「メーアにテレポートして。」
【テレポート・メーア 実行します】
周囲の景色が、教会から浜辺に変わった。
潮の匂いが漂う。心地好い波の音を聞きながら辺りを見回す。
海水浴を楽しむ人々がちらほらいる。遠くを見ると船で釣りをしている人もいた。
(さて、これからどうしようかな…)
手がかりは瓶のみ。シュティレにもう少し情報を貰うべきだったと後悔する。でも、今まで少ない情報でヨシュカを探してきたのだから、今回もなんとかなるだろう。
(いや、手がかりはもう一つあった…ミスィオーンが言っていた『謎の洞窟』。そこで拾ったのだとしたら、その洞窟に何かあるのかも…)
ミスィオーンはその洞窟で宝物を手に入れたのだろうか。
見たところ洞窟らしきものはない。近くで船から降りる人に尋ねる。
「すいません、洞窟はどこにあるんですか?」
がっしりとした体つきの男は、明るく答えた。
「洞窟?あるよ、海岸をずっと行くと岩がたくさんあるから、その中にある。」
男が指差した方角を向くと、確かに遠くに岩があった。
「分かりました、ありがとうございます。」
礼を言って早速行こうとすると、呼び止められた。
「兄ちゃん、この間来たトゥテラリィか?忘れ物でもしたんなら止めておけ、もう残っちゃいないさ。トゥテラリィの私物なんて高価な物、洞窟の魔物に盗られているだろうよ。」
「洞窟の、魔物…?」
俺はトゥテラリィの仲間ではあるが、この間来てはいない。きっと先週来たというミスィオーン達のことだ。
「知らないのか?メーアじゃ有名だよ、あそこで何かなくして取りに行くと、何も残ってない。この間来て宝物も何も無かったからって油断するなよよ。あそこには確かに宝物がある、でも他所の者には決して取らせない、むしろ奪っていくのさ、宝物の一部にするために。」
男は一緒に船から降りた、男の仲間の一人に呼ばれた。
「…話しすぎた、俺はこれで。」
「ありがとうございました。」
再び礼を言う。男が帰ると、俺はソファで岩まで移動した。
徒歩で行けない距離でもないけど…時間短縮だ。
岩は思っていたより大きく、身長の三倍はありそうだった。一つ目の岩を乗り越えると、何個かの岩が複雑に組合わさっている場所を見つけた。岩が少しでも動けば消えてしまうそうなその隙間に体を押し付けて無理矢理通ると、細長い空間に出た。幅は肩がぴったり入るくらいだが、高さは何メートルもある。暗く、さっき入ってきた隙間から漏れる光が岩を不気味に浮かび上がらせていた。ラムぺで照らしながら進むと、急に広くなり洞窟が現れた。
「これが、『謎の洞窟』…。」
何かを盗られるかもしれない。今の俺はラムぺを失うのが一番怖い。
しかし、ここまで来たからには後には戻れない。慎重に進んでいく。
「君、誰?」
洞窟に声がゆっくりと響いた。
「!?…どこにいる!?」
ラムぺを振り回すようにして辺りを照らす。すると、一人の男が奥に座っていた。
「その服装…先週のトゥテラリィ?何でまた来たの?」
その若い男は白衣を身に付けていた。癖っ毛の長い前髪は顔の半分を隠していて、紫の瞳がラムぺに照らされ怪しく光る。質問しているが、俺の答えには興味がなく気だるいといったような態度だ。
「俺はヨシュカです。」
そう言うと、男は目を丸くした。
「へぇ…あ、ちょっと喉乾いたから水飲ませて。」
あいつに会うなら、絶対に飲み物を飲ませるな。
「…駄目です、飲まないで下さい!!」
俺は止めたが、男は見えないコップがあるかのように『水』を飲み干した。
おそらくリアルではそのコップを掴んでいるのだろう。
(飲んじゃったけど…特に変化は、ないかな)
「いいじゃーんちょっと飲むくらいさーぁー…。」
例の瓶を取り出して突きつける。
「あの、これあなたのですか?」
彼は飛び付くようにその瓶を奪った。
「これっ!…君が見つけたの?」
「見つけたのはトゥテラリィの方です。俺は貰ったんです。」
「僕はヴィッツ。君、名前は?」
彼は興奮した様子で再び何かを飲んだ。あまりの素早さに俺は止めることを諦めた。
「シャルです。フライハイトのヨシュカで、プファラーです。」
「シャル君!ありがとう、本当にありがとう!」
ヴィッツは俺の手を握って激しく振った。最初よりもテンションが高い。
顔も赤くなってきている気がする。
「僕、ね…この瓶!瓶をさ、に、書いた!文字をね!だからそう、ありがとう!嬉しくて…君、名前なんだっけ、君は見つけてくれたんだね?」
彼の異常な興奮が怖い。呂律も回っていない。
(ヴィッツが飲んだのって…お酒?)
「は、はい…どうしてこんな文字を?」
「それは、さ…だってほらぁ、暇だから!ね!宝でも置かなきゃあ誰とも会わないし!足りないんだよ、ほら…分からない?刺激だよ、足りなくて。」
このまま会話を続けるとこちらまで頭がおかしくなりそうだ。早めに本題に入ることにする。
「あの、俺にヨシュカとして協力して貰えませんか?創造主の謎を解き明かしたいんです。」
ヴィッツはリアルで酒をコップに注いでいるようだった。そして、一気に体ごと傾けて飲む。
「創造主?なに、それ…ああ面白いね!いいよ!創造主ね…つまり君は、ヨシュカを集めてる?だよね、ああそれなら会える!彼に、彼女に…ヨシュカの皆に!楽しそうじゃあないか、是非…是非お願いしたいね!」
ヨシュカを集めている、そんなことがこの酔った男に分かるのだろうか。酔っていても勘が鋭い…ただの酒好きではなさそうだ。
彼が危険だというのは何となく分かったので、俺は教会に戻ることにした。
「では、近い内にまたここに来ます。」
そう言って立ち去ろうとすると、彼が腕を掴んできた。
「待って、くれ…今すぐ皆に会いたいよ、いいだろう、ねぇ?もうこんな場所居てもヨシュカの、ないんだから、制裁なんて…滅多に下すことは、さぁ!」
(怖…連れてけってこと…だよな)
「…分かりました。一緒に行きましょう。」
渋々答えると、彼は勢いよく抱きついてきた。
面倒くさくなったのでそれを引きずるようにして洞窟を後にした。
【テレポート・メーア 実行します】
周囲の景色が、教会から浜辺に変わった。
潮の匂いが漂う。心地好い波の音を聞きながら辺りを見回す。
海水浴を楽しむ人々がちらほらいる。遠くを見ると船で釣りをしている人もいた。
(さて、これからどうしようかな…)
手がかりは瓶のみ。シュティレにもう少し情報を貰うべきだったと後悔する。でも、今まで少ない情報でヨシュカを探してきたのだから、今回もなんとかなるだろう。
(いや、手がかりはもう一つあった…ミスィオーンが言っていた『謎の洞窟』。そこで拾ったのだとしたら、その洞窟に何かあるのかも…)
ミスィオーンはその洞窟で宝物を手に入れたのだろうか。
見たところ洞窟らしきものはない。近くで船から降りる人に尋ねる。
「すいません、洞窟はどこにあるんですか?」
がっしりとした体つきの男は、明るく答えた。
「洞窟?あるよ、海岸をずっと行くと岩がたくさんあるから、その中にある。」
男が指差した方角を向くと、確かに遠くに岩があった。
「分かりました、ありがとうございます。」
礼を言って早速行こうとすると、呼び止められた。
「兄ちゃん、この間来たトゥテラリィか?忘れ物でもしたんなら止めておけ、もう残っちゃいないさ。トゥテラリィの私物なんて高価な物、洞窟の魔物に盗られているだろうよ。」
「洞窟の、魔物…?」
俺はトゥテラリィの仲間ではあるが、この間来てはいない。きっと先週来たというミスィオーン達のことだ。
「知らないのか?メーアじゃ有名だよ、あそこで何かなくして取りに行くと、何も残ってない。この間来て宝物も何も無かったからって油断するなよよ。あそこには確かに宝物がある、でも他所の者には決して取らせない、むしろ奪っていくのさ、宝物の一部にするために。」
男は一緒に船から降りた、男の仲間の一人に呼ばれた。
「…話しすぎた、俺はこれで。」
「ありがとうございました。」
再び礼を言う。男が帰ると、俺はソファで岩まで移動した。
徒歩で行けない距離でもないけど…時間短縮だ。
岩は思っていたより大きく、身長の三倍はありそうだった。一つ目の岩を乗り越えると、何個かの岩が複雑に組合わさっている場所を見つけた。岩が少しでも動けば消えてしまうそうなその隙間に体を押し付けて無理矢理通ると、細長い空間に出た。幅は肩がぴったり入るくらいだが、高さは何メートルもある。暗く、さっき入ってきた隙間から漏れる光が岩を不気味に浮かび上がらせていた。ラムぺで照らしながら進むと、急に広くなり洞窟が現れた。
「これが、『謎の洞窟』…。」
何かを盗られるかもしれない。今の俺はラムぺを失うのが一番怖い。
しかし、ここまで来たからには後には戻れない。慎重に進んでいく。
「君、誰?」
洞窟に声がゆっくりと響いた。
「!?…どこにいる!?」
ラムぺを振り回すようにして辺りを照らす。すると、一人の男が奥に座っていた。
「その服装…先週のトゥテラリィ?何でまた来たの?」
その若い男は白衣を身に付けていた。癖っ毛の長い前髪は顔の半分を隠していて、紫の瞳がラムぺに照らされ怪しく光る。質問しているが、俺の答えには興味がなく気だるいといったような態度だ。
「俺はヨシュカです。」
そう言うと、男は目を丸くした。
「へぇ…あ、ちょっと喉乾いたから水飲ませて。」
あいつに会うなら、絶対に飲み物を飲ませるな。
「…駄目です、飲まないで下さい!!」
俺は止めたが、男は見えないコップがあるかのように『水』を飲み干した。
おそらくリアルではそのコップを掴んでいるのだろう。
(飲んじゃったけど…特に変化は、ないかな)
「いいじゃーんちょっと飲むくらいさーぁー…。」
例の瓶を取り出して突きつける。
「あの、これあなたのですか?」
彼は飛び付くようにその瓶を奪った。
「これっ!…君が見つけたの?」
「見つけたのはトゥテラリィの方です。俺は貰ったんです。」
「僕はヴィッツ。君、名前は?」
彼は興奮した様子で再び何かを飲んだ。あまりの素早さに俺は止めることを諦めた。
「シャルです。フライハイトのヨシュカで、プファラーです。」
「シャル君!ありがとう、本当にありがとう!」
ヴィッツは俺の手を握って激しく振った。最初よりもテンションが高い。
顔も赤くなってきている気がする。
「僕、ね…この瓶!瓶をさ、に、書いた!文字をね!だからそう、ありがとう!嬉しくて…君、名前なんだっけ、君は見つけてくれたんだね?」
彼の異常な興奮が怖い。呂律も回っていない。
(ヴィッツが飲んだのって…お酒?)
「は、はい…どうしてこんな文字を?」
「それは、さ…だってほらぁ、暇だから!ね!宝でも置かなきゃあ誰とも会わないし!足りないんだよ、ほら…分からない?刺激だよ、足りなくて。」
このまま会話を続けるとこちらまで頭がおかしくなりそうだ。早めに本題に入ることにする。
「あの、俺にヨシュカとして協力して貰えませんか?創造主の謎を解き明かしたいんです。」
ヴィッツはリアルで酒をコップに注いでいるようだった。そして、一気に体ごと傾けて飲む。
「創造主?なに、それ…ああ面白いね!いいよ!創造主ね…つまり君は、ヨシュカを集めてる?だよね、ああそれなら会える!彼に、彼女に…ヨシュカの皆に!楽しそうじゃあないか、是非…是非お願いしたいね!」
ヨシュカを集めている、そんなことがこの酔った男に分かるのだろうか。酔っていても勘が鋭い…ただの酒好きではなさそうだ。
彼が危険だというのは何となく分かったので、俺は教会に戻ることにした。
「では、近い内にまたここに来ます。」
そう言って立ち去ろうとすると、彼が腕を掴んできた。
「待って、くれ…今すぐ皆に会いたいよ、いいだろう、ねぇ?もうこんな場所居てもヨシュカの、ないんだから、制裁なんて…滅多に下すことは、さぁ!」
(怖…連れてけってこと…だよな)
「…分かりました。一緒に行きましょう。」
渋々答えると、彼は勢いよく抱きついてきた。
面倒くさくなったのでそれを引きずるようにして洞窟を後にした。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説

絞首刑まっしぐらの『醜い悪役令嬢』が『美しい聖女』と呼ばれるようになるまでの24時間
夕景あき
ファンタジー
ガリガリに痩せて肌も髪もボロボロの『醜い悪役令嬢』と呼ばれたオリビアは、ある日婚約者であるトムス王子と義妹のアイラの会話を聞いてしまう。義妹はオリビアが放火犯だとトムス王子に訴え、トムス王子はそれを信じオリビアを明日の卒業パーティーで断罪して婚約破棄するという。
卒業パーティーまで、残り時間は24時間!!
果たしてオリビアは放火犯の冤罪で断罪され絞首刑となる運命から、逃れることが出来るのか!?
【完結】婚活に疲れた救急医まだ見ぬ未来の嫁ちゃんを求めて異世界へ行く
川原源明
ファンタジー
伊東誠明(いとうまさあき)35歳
都内の大学病院で救命救急センターで医師として働いていた。仕事は順風満帆だが、プライベートを満たすために始めた婚活も運命の女性を見つけることが出来ないまま5年の月日が流れた。
そんな時、久しぶりに命の恩人であり、医師としての師匠でもある秋津先生を見かけ「良い人を紹介してください」と伝えたが、良い答えは貰えなかった。
自分が居る救命救急センターの看護主任をしている萩原さんに相談してみてはと言われ、職場に戻った誠明はすぐに萩原さんに相談すると、仕事後によく当たるという占いに行くことになった。
終業後、萩原さんと共に占いの館を目指していると、萩原さんから不思議な事を聞いた。「何か深い悩みを抱えてない限りたどり着けないとい」という、不安な気持ちになりつつも、占いの館にたどり着いた。
占い師の老婆から、運命の相手は日本に居ないと告げられ、国際結婚!?とワクワクするような答えが返ってきた。色々旅支度をしたうえで、3日後再度占いの館に来るように指示された。
誠明は、どんな辺境の地に行っても困らないように、キャンプ道具などの道具から、食材、手術道具、薬等買える物をすべてそろえてた。
3日後占いの館を訪れると。占い師の老婆から思わぬことを言われた。国際結婚ではなく、異世界結婚だと判明し、行かなければ生涯独身が約束されると聞いて、迷わず行くという選択肢を取った。
異世界転移から始まる運命の嫁ちゃん探し、誠明は無事理想の嫁ちゃんを迎えることが出来るのか!?
異世界で、医師として活動しながら婚活する物語!
全90話+幕間予定 90話まで作成済み。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます
みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。
女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。
勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。
Gai
ファンタジー
不慮の事故で亡くなった後、異世界に転生した高校生、鬼島迅。
そんな彼が生まれ落ちた家は、貴族。
しかし、その家の住人たちは国内でも随一、乱暴者というイメージが染みついている家。
世間のその様なイメージは……あながち間違ってはいない。
そんな一家でも、迅……イシュドはある意味で狂った存在。
そしてイシュドは先々代当主、イシュドにとってひい爺ちゃんにあたる人物に目を付けられ、立派な暴君戦士への道を歩み始める。
「イシュド、学園に通ってくれねぇか」
「へ?」
そんなある日、父親であるアルバから予想外の頼み事をされた。
※主人公は一先ず五十後半の話で暴れます。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
無能と呼ばれてパーティーを追放!最強に成り上がり人生最高!
本条蒼依
ファンタジー
主人公クロスは、マスターで聞いた事のない職業だが、Eランクという最低ランクの職業を得た。
そして、差別を受けた田舎を飛び出し、冒険者ギルドに所属しポーターとして生活をしていたが、
同じパーティーメンバーからも疎まれている状況で話は始まる。
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。

プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる