俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

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第五章

対面

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『フェイ…頼みがあるんだ。』
『なぁにぃ?』
フェイはアーベントを抱き締めながら答えた。
『ヨシュカとして、俺に協力して欲しい。創造主について知りたいんだ。』
『ふぅん?創造主に興味があるなんてやっぱりぃ、プファラーってそんな人ばっかりなんだねぇ…いいけどぉ、見返りはぁ?』
シュティレがフェイのぬいぐるみをじっと見ていることに気がつくと、ぬいぐるみを触らせてあげていた。
『見返り…何か欲しいものあるの?』
『ナイト様の情報。』
即答だった。
『そんなの俺が持ってる訳ないよ…。』
『ナイト様のライブして欲しい!ナイト様の新曲早く出して欲しいぃ!』
(オルクスに頼もうかな…)
しかし頼んで快く受けて貰えるとは思えない。
ふと、あることを思い付く。
『じゃあ…イケメン紹介する!』
オルクスはかなり顔が整っている。男の俺がそう思うくらいなら、女性もきっとかっこいいと思うに違いない。
『イケメン~?ナイト様以外は興味ないけどぉ…それでいいよぉ。』
興味ないと言いつつも、明らかにそわそわし始めた。
『決まりだな!』
「シュティレ、フェイをオルクスに会わせてもいいかな?」
[…お兄様に聞いてみる、一旦落ちる。]
シュティレはフェイにぬいぐるみを返し、ログアウトした。
「あなたの名前ってぇ…シャルぅ?」
「そうだよ、今ログアウトしたのはシュティレ。」
フェイは疲れたのかその場に座った。
「オルクスっていうのはぁ…ヨシュカなのぉ?」
「うん、エアモルデンのヨシュカ。フェイは、他のヨシュカのこと知らないの?」
俺もその隣に座る。不気味だった森も、しばらくいると大分慣れてきた。
「他のヨシュカぁ…フェイは最近来たばかりだからぁ、よく分からないぃ。フェイはベルクのヨシュカだけどぉ。」
最後のヨシュカについての情報は得られなさそうだった。
「フライハイト、エアホーホレン、エアモルデン、フォルスト、ベルク…あと残っているエリアはどこだか分かる?」
「メーアだよぉ。メーアに行ったことないのぉ?」
「メーア?」
フェイは地面に図を描き始めた。
「ここがぁ、ベルクでぇ…ここ全部メーアだよぉ、おっきな海ぃ!」
「海かぁ…。」
おそらく最後のヨシュカは、メーアに居る。
すると、シュティレがログインしてきた。
「ただいま…お兄様の許可をとった。仕事が早めに終わったから、お兄様も今ログインした。」
「今…。」
オルクスには何回か会っているが、何だか緊張してきた。
「エアモルデンではなく、エアホーホレンで会うことが条件…フェイのことを信用していないから、攻撃できない場所じゃないと会えない。」
シュティレにしては珍しく刺々しい言い方だ。
「何それぇ、失礼なやつぅ!…暇だからいいけどぉ!」
フェイはオルクスがナイトだとは露知らず、相手の無礼に腹をたてた。

エアホーホレンに移動すると、何人かの女性がこちらをちらちらと見てくる。一人の女性がフェイに話しかけた。
「あっ、あの…フェイさん、ですか?」
「そうだけどぉ…?あぁ!ナイト様の会の子ぉ?」
フェイだと分かると、後ろで様子を窺っていた女性達が歓声をあげた。
「やっぱり!フェイさんのこと、尊敬しています!」
その声を聞いて人が増え、フェイはすっかり人に囲まれてしまった。
「あはは、どうもありがとぉ~。」
フェイの声はするが、姿は見えなくなってしまう。
「フェイ、大丈夫?」
俺の言葉は届かなかったようで、フェイは周りの人の応対に苦戦していた。
その時。
「おい、フェイとやらはあの人混みの中か。」
俺の前に一人の男が立った。
「オルクス…。」
「お兄様!」
シュティレは嬉しそうに駆け寄る。
「面倒なことになったな…おい、シュティレ。」
「はい、お兄様。」
シュティレは人混みの中へ何かを投げつける。すると、その辺りから煙が出てきた。悲鳴をあげて人々は逃げていった。
「…あ、ありがとぉ…。」
煙の中から現れたフェイは、オルクスを見ると俺と同じく少し緊張しているようだった。
「俺はオルクスだ。」
「フェイ、ですぅ…。」
気まずい雰囲気が漂う。
「…シャル。」
「はっ、はい!」
オルクスに呼ばれて、思わず姿勢を正した。
「席を外せ…シュティレもだ。」
「はい、お兄様。」
(あれほど信用しているシュティレも?…一体、何の話を)
「…シャル、行こう。」
「うん…どこに行こうか。」
シュティレはしばらく考えた後、呟いた。
「フライハイト…シャルの教会へ。」
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