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第五章
探索
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今日はもう落ちると決めていた。そのことを伝えると、明日までに彼女について調べておいておくと言ってくれた。
シュティレと明日会う約束をしてログアウト。
「今日は疲れたなぁ…。」
夕食をとって、机に向かう。そろそろ夏休みの宿題に手をつけなくてはならない。分かってはいたけど、気が重い。
「…音楽でも聴きながら…そうか。」
(せっかくだから、ナイトの曲聴いてみよう)
イヤホンを付けて、スマホでナイトの曲を探す。
音楽には詳しくないが、何となく寂しい、切ない曲が多い。たまにロックっぽいかっこいい曲もある。
(曲ごとに声が全然違う…)
思わず聞き入ってしまって、勉強がはかどらない。
諦めて音楽を止めた。
【ログインしました】
ヴェルト七日目。
「おはよう、シュティレ。」
「おはよう…シャル。」
シュティレはいつものように、俺より先に来ていた。
(挨拶が返ってきて、こんなに嬉しいなんて)
「早速だけど、彼女の居場所が分かった。」
(仕事が早い…)
「うん、わざわざありがとう。」
シュティレが出した画面を見る。昨日の写真だ。
昨日は気がつかなかったが、クマのぬいぐるみを抱えている。
「彼女が今居るのは…エアモルデン。」
「え!?」
(エアモルデン…?ヨシュカだとしたら、自分のエリアがあるのに…エアモルデンはオルクスの担当、彼女は…?)
シュティレはヴェルトの地図を映した。
「エアモルデンとベルク、二つの場所を行き来している…。」
俺はソファーを取り出した。
「…とりあえず行ってみよう。」
シュティレが乗ったことを確認して命令する。
「エアモルデンへ!」
【テレポート・エアモルデン 実行します】
地図を見ると、着いたのはフライハイトの近くのエアモルデンだった。
「ベルクに近い所へ移動して。」
「うん。」
ベルクとやらに行ったことはないけど、地図をみれば大体分かる。
草原の中を風をきって進んでいく。
「…シュティレは、どうしてその人を僕が探してるって分かったの?」
「お兄様が教えてくれたの。」
(オルクスが!?…ってことは、当然ツミッターも知ってるよな…)
面倒事を嫌いそうな彼がシュティレにそのことを言ったということは、エアモルデンに他のヨシュカが居るのが嫌なのだろうか。
「椅子、止めて。」
我に返って急停止させる。
シュティレが指差した先には、朝日に照らされている高い山があった。
木々は不気味な深い紫色をしていて、葉は毒々しいほどカラフルだ。
「ここに写っていたのはこの山。エアモルデンの山は危険な動植物が沢山いるけど…珍しいアイテムとかもあるから、それ目当てで来る人が居る。彼女は…もしかしたら、お兄様が目当てかも、だけど。」
「やっぱり知ってたんだね…。」
俺がそう言うと、シュティレはソファーから素早く降りた。そのまま振り向かずに山へ歩き始めた。
「ナイト様の会、会長。私達は彼女を監視する必要があるの。彼女は私達の情報を探っている。」
ソファーをしまって、彼女についていく。強い風が吹いてシュティレの髪がふわりと揺れる。
それと同時に、山の木々が俺達を追い返すように重い音をたててざわついた。
シュティレと明日会う約束をしてログアウト。
「今日は疲れたなぁ…。」
夕食をとって、机に向かう。そろそろ夏休みの宿題に手をつけなくてはならない。分かってはいたけど、気が重い。
「…音楽でも聴きながら…そうか。」
(せっかくだから、ナイトの曲聴いてみよう)
イヤホンを付けて、スマホでナイトの曲を探す。
音楽には詳しくないが、何となく寂しい、切ない曲が多い。たまにロックっぽいかっこいい曲もある。
(曲ごとに声が全然違う…)
思わず聞き入ってしまって、勉強がはかどらない。
諦めて音楽を止めた。
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「おはよう、シュティレ。」
「おはよう…シャル。」
シュティレはいつものように、俺より先に来ていた。
(挨拶が返ってきて、こんなに嬉しいなんて)
「早速だけど、彼女の居場所が分かった。」
(仕事が早い…)
「うん、わざわざありがとう。」
シュティレが出した画面を見る。昨日の写真だ。
昨日は気がつかなかったが、クマのぬいぐるみを抱えている。
「彼女が今居るのは…エアモルデン。」
「え!?」
(エアモルデン…?ヨシュカだとしたら、自分のエリアがあるのに…エアモルデンはオルクスの担当、彼女は…?)
シュティレはヴェルトの地図を映した。
「エアモルデンとベルク、二つの場所を行き来している…。」
俺はソファーを取り出した。
「…とりあえず行ってみよう。」
シュティレが乗ったことを確認して命令する。
「エアモルデンへ!」
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地図を見ると、着いたのはフライハイトの近くのエアモルデンだった。
「ベルクに近い所へ移動して。」
「うん。」
ベルクとやらに行ったことはないけど、地図をみれば大体分かる。
草原の中を風をきって進んでいく。
「…シュティレは、どうしてその人を僕が探してるって分かったの?」
「お兄様が教えてくれたの。」
(オルクスが!?…ってことは、当然ツミッターも知ってるよな…)
面倒事を嫌いそうな彼がシュティレにそのことを言ったということは、エアモルデンに他のヨシュカが居るのが嫌なのだろうか。
「椅子、止めて。」
我に返って急停止させる。
シュティレが指差した先には、朝日に照らされている高い山があった。
木々は不気味な深い紫色をしていて、葉は毒々しいほどカラフルだ。
「ここに写っていたのはこの山。エアモルデンの山は危険な動植物が沢山いるけど…珍しいアイテムとかもあるから、それ目当てで来る人が居る。彼女は…もしかしたら、お兄様が目当てかも、だけど。」
「やっぱり知ってたんだね…。」
俺がそう言うと、シュティレはソファーから素早く降りた。そのまま振り向かずに山へ歩き始めた。
「ナイト様の会、会長。私達は彼女を監視する必要があるの。彼女は私達の情報を探っている。」
ソファーをしまって、彼女についていく。強い風が吹いてシュティレの髪がふわりと揺れる。
それと同時に、山の木々が俺達を追い返すように重い音をたててざわついた。
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