俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

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第四章

クライン

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外の雨はますます激しくなっていた。
「シャルさんは屋内で待機していて下さい!この場所だけは死守します!」
そう叫んでミスィオーンは行ってしまった。
「悪いシャル、俺もあいつに着いていく!」
シュピッツの後ろ姿を見送ると、俺は教会の中へ戻った。
最初から前線で戦う気はない。あの様子からすると、皆そこそこ強いだろう。俺は救世主として、象徴としていればいい。
「…エアモルデン以外でも、攻撃できる能力か。」
先程遭遇した獣人達が使っていた能力。
「つ、使っているのは獣人ではなくっ、やつらの長が持っているんだと思われますっ!」
そう答えたのは、ミスィオーンについていた幼い少年だった。
「えっと…君は。」
「クラインですっ…よ、よろしくお願いいたします!」
「よろしく、クライン。」
周りを見回したが、どうやらここに居るのは俺とクラインだけらしかった。 
「奴らの長って、どんな人…あ、獣人なの?」
「いえ、種族はおそらく人間ですっ…ただ、特別な力を持っているらしいです!自分こそが創造主であり、ここヴェルトの神である、等と言い獣人達を従えているみたいですっ…!」
(なるほど…それは確かに衝突しそうだ)
「そんな能力がある職業って、何かな。」
「き、聞いたことがありません…そんな危険な力、皆が持っていたら大変ですっ…。」
(どういうことだ…職業にないのに、能力がある?創造主を名乗るって、相当自信があるんだな…トゥテラリィに喧嘩売ってるようなものだし…)
考え込んでいると、下からクラインが覗いてきた。
「あっ…あの、救世主様ッ!!救世主様はその、公式の方ですか?初心者と伺いましたが、とてもお強いのですよねっ…?」
疑われている…のか?救世主と言えばまあ、興味を持たれるよな…。
俺は微笑みながら彼の頭に手を乗せ、くしゃくしゃと撫でた。
「そういうの、秘密なんだ。ごめんね。」
「いっ…いえ!!こ、こちらこそ失礼しましたッ!!」
警戒したのか、クラインは少し距離をとった。
「…もし、自力で強くなれるのなら…ボ、ボクに秘訣を教えて下さったり…とか、な、何でもないです!!」
上目遣いの彼の目は、しっかりとこちらを見ていた。きっと何かを探っている。
「気が向いたらね。」
そのまま笑顔で通す。こんな所でうろたえてはいけない。
俺はこれから、ずっと偽らなくてはいけないのだから。
「ボク…きゅ、救世主様が戦われるところを拝見したいですっ…も、申し訳ありませんっ、不謹慎です…よね、もしここまで来たら負けて…い、いえっ隊長が絶対に勝ちます!」
「そうだね。僕も出番がないことを祈るよ。…創造主に、ね。」
クラインの表情は、一見すると笑っているが若干強ばっていた。
「…よ、よろしければ一緒に祈りましょう。創造主様に!」
俺は頷いた。
「創造主のお導きがあらんことを。」
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