俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

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第四章

襲撃

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あれから無意識にD組へと足が向くようになっていた。
しぐれにアピールしていた頃より頻繁にだ。

もうしぐれにアピールする必要がなくなったのに気が付くとD組に行ってしまっていて、こっそりと花井の姿を見て帰る。そんな事を繰り返していた。

花井の事が気になってしょうがない。
顔を真っ赤にさせてもじもじとする姿や遠慮がちに話す姿。
全てが可愛くて、もっと一緒にいたいし笑顔が見たいと思ってしまう。
番になれるわけでもないのに何でこんなに気になってしまうのか…。
花井の事を想うだけで何でこんなに胸がドキドキと騒ぐのか。

もうこうなれば認めるしかなかった。
俺のこの気持ちは『恋』で、俺は花井に恋してる―――――。


俺は「よし」と頷くと花井に会う為にD組を訪れた。

が、教室を見回してみても花井の姿はなかった。
今日こそは花井に自分の気持ちを伝えようと思ったのに……。
しょんぼりと肩を落としていると後ろから声をかけられた。

「芦崎くん、どうしたの?まさか僕にアピール…?」

しぐれだった。

「あーちがうちがう。俺相手いるやつにしつこくするつもりないから」

怪訝そうな顔で俺を見るしぐれ。
まぁそりゃそうだよな。じゃあ何でここにいるんだって話だよ。

「―――花井…に……」

「菫くん?菫くんならE組の人に呼ばれて今いないよ?」

「―――え?何で呼ばれて…?」

「何でってアピールじゃない」

「アピール???何の?」

「は?何言ってるの?αがΩを呼び出す理由なんて一つでしょ?菫くんの番にして欲しいってアピールじゃない」

Ω……?番……?
だって―――

「花井はβ……」

「何言ってるのさ。菫くんは立派なΩだよ?フェロモンが薄いからってあんまりふざけた事言ってると僕が赦さないよ?ご機嫌なαだからって何でも赦されるなんて思わないでね?」

怖い顔でギロリと俺の事を睨むがまったく怖くないし気にならない。
そんな事より――――。
花井がΩ………。嘘だ……。だって薄いって言ったってフェロモンに気づかないわけが……。
―――あ、もしかしてシャンプーの匂いだって思ったあれはフェロモンだった?

「―――ごめ…。しぐれ、花井どこに呼び出されたか知ってるか?」

「え?えーと校舎裏だったと思うけど…。え?行くの?それって野暮じゃない?邪魔とか、ルール違反でしょ?」

それでも俺は行かなくちゃ。
しぐれにロクに返事をする事もせず校舎裏に向って走り出していた。

βだって思ってた時から気になっていた。
本当はしぐれにアピールする為に通っていた時も花井の事が可愛いって思っていた。
αとβじゃ番えないからブレーキかけてたけど、もういいかなって思えた。
今日こそ自分の正直な気持ちを伝えて花井が頷いてくれるなら俺は花井の手を取りたいって、この先の未来を一緒に歩いて行きたいって思ってた。
俺はご機嫌なαだからβを愛してもいいんじゃないかって思ったのに。

なのに花井はΩで別のαからアピールされてるとか―――そんなの我慢できるわけがない!

初めてなんだ。
何を失ってでも笑ってた俺が……全く笑えないなんて!
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