俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

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第三章

中央教会

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居ないことを期待していたが、彼女達はそこで待っていた。
「お待ちしておりました。さあ、行きましょう。」
「あ、はい…。」
彼女達の後を付いていく。隊長、俺、男達の順に歩く。大きな道へ出ると、通行人は俺達をちらちらと見てくる。あまり気持ちの良いものじゃない。
(やっぱり有名人なのかな…)
「あの。徒歩で行くんですか?」
テレポートするならなるべく早くして欲しかった。
隊長は振り向いて答えた。
「ええ。教会はすぐそこにありますよ。」
段々と紫色の服を着た人が多くなる。デザインはどれも似ている。制服だろうか。
やがて、とても立派な教会らしきものが現れた。周りに堀があり、石の橋を渡る。例の服を着た女性達が挨拶をする。
「隊長、お帰りなさいませ。」
「ええ、貴方もご苦労様。」
見上げるほど大きな扉が開けられる。
(うわ…広い…)
高い天井からはきらびやかなシャンデリア、床はよく磨かれた大理石が光る。人々は皆例の服を着て、忙しなく動いている。人数の割には静かで、隊長を見ると前を避けて通ってくれる。
「立派な教会ですね。」
お世辞ではなく、本気でそう言った。
「ありがとうございます。救世主メシアス様にそう仰って頂けるなんて、光栄です。」
「あの…その救世主って…」
尋ねかけた時、側を通った女性が足を止め、俺を見上げる。
「救世主?あなたが救世主様なのですか?」
「え?いや…」
女性の発言に周りがざわつき始めた。
「救世主…?」「まさか、あの男性が…?」「本物?」
(え、何この状況…)
「静かにしろお前達。」
モノクルの一声に、しんと静まりかえった。
「この御方が救世主かどうかはまだ分からない。今からそれを確かめるのだ。」
「ええ、その通りだわ。」
隊長がモノクルの隣に立つ。
(さっき俺のこと救世主って呼んでたよな…)
「ありがとうブリレ。」
そう彼女が呟くと、ブリレと呼ばれた青年は会釈した。
「シャルさん、貴方の力を見せてもらいます。創造主の『お告げ』を聞いて下さい。」
「『お告げ』…。」
(そういえば、プファラーはお告げが聞けるってシュティレが言ってたな)
勇気を出して言ってみることにする。
「すいません。まだお告げを聞いたことはないんです。」
彼女は目を見開いた。
「では、一体今まで何をしていらっしゃったのですか?」
「と、友逹作り…ですかね。」
ヨシュカ探しとは言えない。
「ああ、近くに教会が無かったのですね?なら、初めてのお告げ…この中央教会で聞けるなんて羨ましいです。」
俺の話を聞いているのかよくわからない返しをされ、曖昧な笑みを浮かべて誤魔化す。
「さあ…どうぞ。」
彼女の言葉で、周りの人が俺を避けるように後退った。
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