俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

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第三章

駆け引き

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『…は!?』
『何だ。妹とだと言っただけだぞ。』
俺は思わずシュティレを凝視した。シュティレの目はぼんやりしたままだった。
『リアルで、妹ってことか?』
『それ以外に何がある?』
(シュティレの…お兄さんが、こいつ?)
『信じられない。』
『聞いてみるか?』
俺はぎこちなく頷いた。シュティレとしては、二人の周りが一人言モードの吹き出しがぽんぽん出ている奇妙な光景になっているのだろう。
ヨシュカのことは隠したいが、今はそれを気にしている場合じゃない。
「し、シュティレ…オルクスとどういう関係なんだ?」
「お兄様です。」
お兄様?
『ほらな。』
オルクスが勝ち誇ったかのように笑う。
『…その、シュティレに席を外してもらわなくてもいいのか?ヨシュカのこととか…。』
『必要ない。』
オルクスはシュティレを見た。
「もう帰るぞ、シュティレ。」
シュティレはゆっくりとオルクスを見上げた。
「はい、お兄様。」
二人は帰ろうと後ろを向いた。
「ちょっ…ちょっと待った!!」
オルクスが迷惑そうな顔で振り向く。
「なんだ。殺されたいのか?」
「いや、違う!」
一人言モードに切り替える。
『…その、協力して欲しいんだ!』
『協力?』
『そうだ。…ヨシュカの人達と一緒に、ヴェルトの謎を解きたいんだ!』
オルクスは鼻で笑う。
『断る。』
そして再び後ろを向きかけた背中に叫んだ。
「ナイト!!!」
彼の動きが止まる。
「ファンは相当いるんだろ?ヴェルトにも居るだろうな、熱心なファンが…お前が本人だって言い触らしたらどうなるか、気にならないか?」
オルクスが何か言いかけた時、俺の喉元に何かが突き付けられた。
ひやりとした感触。それは、シュティレがブーツから取り出したナイフだった。
「お兄様に危害を、与えるつもりなの…?お願い…違うと言って。」
「シュティ、レ…?」
呼び慣れない名を呼ぶと、シュティレの瞳が俺の目をしっかりと見つめた。先程までぼんやりとしていたとは思えない。本当に彼女は、俺の探していたレーツェルなのだろうか?ふと、そんな疑問が浮かんだ。しかし、見れば見るほど彼女だという確信が強まる。だとしたら、どうして俺は彼女にナイフを突き付けられているのだろうか?
「シュティレ。止めろ。」
「はい、お兄様。」
シュティレは大人しくナイフを戻した。
「…今回は、脅しだ。」
シュティレには聞きたいことが山ほどあるが、とりあえず今は交渉に集中する。
「ヴェルトの秘密など、興味がない。どうでもいいだろうそんな事。」
「それが答えか?」
オルクスは沈黙する。思ったよりこの脅しは効果があった。
「…ナイト…ばらすぞ?」
(やり過ぎか…?いや、でも反応ないし…)
不意にオルクスは口を開いた。
「協力してやってもいい。」
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