俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

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第三章

シュティレ

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「こんなことなら、レーツェルとフロイント登録しておけば良かった…!」
周りを見る限り誰もいない。日はもう暮れかかっている。
今回はエアホーレン周辺のエアモルデン。舗装されていて、古びた建物が建ち並んでいる。
〈夜のエアモルデンは危険〉〈見晴らしが〉
ぞくりと、背筋に悪寒が走る。
(もしかしてここのエアモルデンって、超危険…?)
でも、戻るつもりはない。
(レーツェルと会うまで、絶対に帰らない…諦めない!)
ソファーで慎重に移動していると、ふいに腹が鳴る。
(エアモルデンに居るときは食べないといけないんだっけか…)
レーツェルから貰ったラムペを灯し、レーツェルから得た知識を生かして、レーツェルが仕入れてくれた食事をとる。
(いつの間にか俺は、レーツェルを頼ってたんだな…。)
まだ会ったばかりで、距離も縮められないと思ってたけど、レーツェルは俺にたくさんのことをしてくれていた。
渡された寝袋に潜り込む。今日は一旦落ちて、睡眠を十分に取ってから明日の朝にまた来よう。夜にエアモルデンで単独行動は危険だ。
そう思ってログアウトと言いかけた、その時。

「何だ、もう寝るのか?」

「!?誰だ、どこにいる!?」
既に周りは暗闇に包まれていて、声の主が分からない。
「予想以上に遅い到着だったな。おかげで見ろ、真っ暗だ。…聞いた筈だよな?『夜のエアモルデンは危険』…って。」
男の嘲笑うような声。
「!それは、レーツェルが…!」
ザッ、と足音が近づく。
「まぁいい。今は俺の時間だ。」
寝袋から出られない。体から血の気が引いていくのが分かる。
(もしかして…オルクス、いや)
「…ナイト?」
足音が止まった。男は何も言わない。
「ナイト@ヴェルト民…だよな?今ネットで有名な。」
「…黙れ。」
冷たい声が響く。その一言で、寝袋から抜け出そうとした手足が固まる。
「そうか、あいつが教えたのか。その事は誰かに言ったか?」
「…言ってない。」
再び沈黙。
「貴様は俺を脅しているつもりなのか?」
「い、いやいや!決してそんなつもりは…。」
足音が一歩後退した。
「そこから出ろ。」
ぎこちなく体を捻って這い出る。
そこには、エアホーレンで見た男が立っていた。
紫の瞳が俺を捉えて、再び体が硬直する。
「…貴様が来ないから、俺がわざわざここまで出向いてやったんだ、感謝しろ。」
さっきから思ってたけど…超上から目線だなこいつ!!!
震える喉で一人言モードに切り替える。
『単刀直入に言う。お前ヨシュカだろ?』
彼は少し間を置いて答えた。
『あぁ。俺はエアモルデン担当のヨシュカ、オルクスだ。』
『俺はフライハイト担当だ。』
オルクスは興味を失ったかのように目線を反らした。一気に緊張が解ける。
『貴様はここに何の用で来た。』
『レーツェルと…オルクスに、会いに来た。』
オルクスは鼻で笑った。
『レーツェル…か。それはシュティレのことか?』
『シュティレ?…誰だ、それ。』
オルクスは後ろに向かって声をかけた。
「シュティレ。来い。」
「…はい。」
暗闇から現れたのは、黒いドレス…いわゆるゴスロリのような格好をした少女だった。
俺は思わず叫ぶ。
「レーツェル!!」
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