俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

文字の大きさ
上 下
21 / 95
第三章

シュティレ

しおりを挟む
「こんなことなら、レーツェルとフロイント登録しておけば良かった…!」
周りを見る限り誰もいない。日はもう暮れかかっている。
今回はエアホーレン周辺のエアモルデン。舗装されていて、古びた建物が建ち並んでいる。
〈夜のエアモルデンは危険〉〈見晴らしが〉
ぞくりと、背筋に悪寒が走る。
(もしかしてここのエアモルデンって、超危険…?)
でも、戻るつもりはない。
(レーツェルと会うまで、絶対に帰らない…諦めない!)
ソファーで慎重に移動していると、ふいに腹が鳴る。
(エアモルデンに居るときは食べないといけないんだっけか…)
レーツェルから貰ったラムペを灯し、レーツェルから得た知識を生かして、レーツェルが仕入れてくれた食事をとる。
(いつの間にか俺は、レーツェルを頼ってたんだな…。)
まだ会ったばかりで、距離も縮められないと思ってたけど、レーツェルは俺にたくさんのことをしてくれていた。
渡された寝袋に潜り込む。今日は一旦落ちて、睡眠を十分に取ってから明日の朝にまた来よう。夜にエアモルデンで単独行動は危険だ。
そう思ってログアウトと言いかけた、その時。

「何だ、もう寝るのか?」

「!?誰だ、どこにいる!?」
既に周りは暗闇に包まれていて、声の主が分からない。
「予想以上に遅い到着だったな。おかげで見ろ、真っ暗だ。…聞いた筈だよな?『夜のエアモルデンは危険』…って。」
男の嘲笑うような声。
「!それは、レーツェルが…!」
ザッ、と足音が近づく。
「まぁいい。今は俺の時間だ。」
寝袋から出られない。体から血の気が引いていくのが分かる。
(もしかして…オルクス、いや)
「…ナイト?」
足音が止まった。男は何も言わない。
「ナイト@ヴェルト民…だよな?今ネットで有名な。」
「…黙れ。」
冷たい声が響く。その一言で、寝袋から抜け出そうとした手足が固まる。
「そうか、あいつが教えたのか。その事は誰かに言ったか?」
「…言ってない。」
再び沈黙。
「貴様は俺を脅しているつもりなのか?」
「い、いやいや!決してそんなつもりは…。」
足音が一歩後退した。
「そこから出ろ。」
ぎこちなく体を捻って這い出る。
そこには、エアホーレンで見た男が立っていた。
紫の瞳が俺を捉えて、再び体が硬直する。
「…貴様が来ないから、俺がわざわざここまで出向いてやったんだ、感謝しろ。」
さっきから思ってたけど…超上から目線だなこいつ!!!
震える喉で一人言モードに切り替える。
『単刀直入に言う。お前ヨシュカだろ?』
彼は少し間を置いて答えた。
『あぁ。俺はエアモルデン担当のヨシュカ、オルクスだ。』
『俺はフライハイト担当だ。』
オルクスは興味を失ったかのように目線を反らした。一気に緊張が解ける。
『貴様はここに何の用で来た。』
『レーツェルと…オルクスに、会いに来た。』
オルクスは鼻で笑った。
『レーツェル…か。それはシュティレのことか?』
『シュティレ?…誰だ、それ。』
オルクスは後ろに向かって声をかけた。
「シュティレ。来い。」
「…はい。」
暗闇から現れたのは、黒いドレス…いわゆるゴスロリのような格好をした少女だった。
俺は思わず叫ぶ。
「レーツェル!!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

魔術師セナリアンの憂いごと

野村にれ
ファンタジー
エメラルダ王国。優秀な魔術師が多く、大陸から少し離れた場所にある島国である。 偉大なる魔術師であったシャーロット・マクレガーが災い、争いを防ぎ、魔力による弊害を律し、国の礎を作ったとされている。 シャーロットは王家に忠誠を、王家はシャーロットに忠誠を誓い、この国は栄えていった。 現在は魔力が無い者でも、生活や移動するのに便利な魔道具もあり、移住したい国でも挙げられるほどになった。 ルージエ侯爵家の次女・セナリアンは恵まれた人生だと多くの人は言うだろう。 公爵家に嫁ぎ、あまり表舞台に出る質では無かったが、経営や商品開発にも尽力した。 魔術師としても優秀であったようだが、それはただの一端でしかなかったことは、没後に判明することになる。 厄介ごとに溜息を付き、憂鬱だと文句を言いながら、日々生きていたことをほとんど知ることのないままである。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう!〜公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」  五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。  他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

いい子ちゃんなんて嫌いだわ

F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが 聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。 おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。 どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。 それが優しさだと思ったの?

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

[完結]婚約破棄したいので愛など今更、結構です

シマ
恋愛
私はリリーナ・アインシュタインは、皇太子の婚約者ですが、皇太子アイザック様は他にもお好きな方がいるようです。 人前でキスするくらいお好きな様ですし、婚約破棄して頂けますか? え?勘違い?私の事を愛してる?そんなの今更、結構です。

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

処理中です...