俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

文字の大きさ
上 下
18 / 95
第二章

早過ぎた帰宅

しおりを挟む
[ユスティーツ、手伝ってくれ。まだあいつはエアホーレンに…]
[居ないよ、もう。]
走っていた足が止まる。
[…え?]
[もうテレポートしてるよ、きっと!オルクスは逃げ足が早いんだ!]
[そんな…じゃあ、直接エアモルデンに行くしかないってのか?]
[それはやめておきなよ!エアモルデンはオルクスの領域テリトリー。庭みたいなものさ!絶対に見つかりはしないよ、それこそ…オルクスが自分から現れない限りはね!]
(仕方ない、今回は諦めるか…)
最近レーツェルに教会の留守番を頼みっぱなしなので、今日は早めに戻ることにした。

【テレポート・フライハイト   実行します】

教会のドアを開けただいまと言いかけた俺の目の前に、一人言モードの吹き出しが飛び込んできた。

『創造主よ。今日も私の悩みは晴れないのです。』

「…え?」
きっとこれはレーツェルの吹き出しだ。しかし、どういう意味なのかはわからない。
俺の吹き出しに気がついたレーツェルが、動揺した様子で懺悔室の方向から現れた。
「シャル…!?帰ってたの?」
「…あ、あぁ。ちょうど今、帰ってきたところだよ。」
「そう…。」
気まずい雰囲気になる。何回目だ、これ。
「…あ、のさ…そのマント、脱がないの?」
レーツェルは出会ってから一度もマントを、フードすら取ろうとしなかった。それどころか、日に日にフードを深く被るようになっていく気がした。
「脱がない。」
指摘されて更に深く被る。
「どうして?その…理由を教えてもらえるかな?」
「…顔を見られたら…駄目だから。」
(誰かに探されてるのか?)
エアモルデンから来たと言っていたから、もしかしてエアモルデンの人が追っているのかもしれない。
…エアモルデンの人…まさか
(何か規則を破ってヨシュカの制裁対象なんじゃ…もしそうだとしたら、追っているのは…オルクス?)
俺がヴェルトに来る前に何か罪を犯し、エアモルデンからフライハイトに逃亡。途中で見つけた教会で懺悔をしている…とても自然な考え方だ。
(…何考えてるんだ俺。レーツェルを疑うなんて…)
でも、オルクスのことくらいなら、聞いてみても損はないだろう。
「…オルクスって、知ってるかい?」
「え…!?」
レーツェルの動きが固まる。しばらくして、小さい声で答える。
「彼を…知ってるの?」
「その様子だと、レーツェルは知ってるの?」
レーツェルは視線をそらした。
「知ってる…エアモルデンで、恐れられている。最強だとも、言われている。」
一瞬迷ったが、ここは素直に話すことにした。
「彼に会いたいんだ。…協力してくれるかな?」
「…私が、止めたら?」
俺は微笑んでみせる。
「他の協力者を探すよ。」
「…そう。」
レーツェルは再び沈黙した。俺は彼女の言葉を待つ。
「私は…彼に会えない。会ってはいけないの。…もし、彼と何か話すつもりなら、彼に『ナイト』と言って。ただ近づいても、逃げられると思うから。」
「『ナイト』…分かった、ありがとう。この言葉の意味って?」
「私からは言えない。…ごめん、今日はもう落ちる。」
レーツェルは初めて、朝の内に帰ってしまった。
(よくわかんないけど怒らせたかな…でも、予想以上の収穫だった。この言葉があれば…逃げられずに済むかもしれない)
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

贄の令嬢はループする

みん
恋愛
エヴェリーナ=ハウンゼントには、第二王子の婚約者が居たが、その第二王子と隣国の第一王女が恋仲になり、婚約破棄されてしまう。その上、黒色の竜の贄にされてしまい、命尽きた──と思ったら、第二王子と婚約を結ぶ前の時に戻っていた。 『正しい路に────』と言う言葉と共に、贄とならないように人生をやり直そうとするが───。 「そろそろ……キレて良いかなぁ?」 ループする人生に、プチッとキレたエヴェリーナは、ループから抜け出せるのか? ❋相変わらずのゆるふわ設定なので、軽い気持ちで読んでいただけると幸いです。 ❋独自の設定があります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。 ❋他視点のお話もあります。 ❋更新時間は決めていませんが、基本は1日1話更新です。 ❋なろう様にも投稿しています。

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。 人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください! チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!! ※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。 番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」 「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824

転生令嬢は庶民の味に飢えている

柚木原みやこ(みやこ)
ファンタジー
ある日、自分が異世界に転生した元日本人だと気付いた公爵令嬢のクリステア・エリスフィード。転生…?公爵令嬢…?魔法のある世界…?ラノベか!?!?混乱しつつも現実を受け入れた私。けれど…これには不満です!どこか物足りないゴッテゴテのフルコース!甘いだけのスイーツ!! もう飽き飽きですわ!!庶民の味、プリーズ! ファンタジーな異世界に転生した、前世は元OLの公爵令嬢が、周りを巻き込んで庶民の味を楽しむお話。 まったりのんびり、行き当たりばったり更新の予定です。ゆるりとお付き合いいただければ幸いです。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!

【完結】家庭菜園士の強野菜無双!俺の野菜は激強い、魔王も勇者もチート野菜で一捻り!

鏑木 うりこ
ファンタジー
 幸田と向田はトラックにドン☆されて異世界転生した。 勇者チートハーレムモノのラノベが好きな幸田は勇者に、まったりスローライフモノのラノベが好きな向田には……「家庭菜園士」が女神様より授けられた! 「家庭菜園だけかよーー!」  元向田、現タトは叫ぶがまあ念願のスローライフは叶いそうである?  大変!第2回次世代ファンタジーカップのタグをつけたはずなのに、ついてないぞ……。あまりに衝撃すぎて倒れた……(;´Д`)もうだめだー

処理中です...