俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

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第二章

人混み

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ヴェルト、四日目。


「レーツェル、居るかい?」
部屋の奥から出てきたレーツェルは、寝ぼけ眼で答える。
「…どうしたの、シャル。」
「おはよう。エアホーレンに用があるから、留守番頼んでいいかな?」
「ん…行ってらっしゃい。」
ユスティーツのアドバイス通りに、早い内からオルクスを探す。
エアホーレンにテレポートして、フロイント機能を起動させる。
[ユスティーツ。オルクスの場所分かるか?]
すぐに返事が来る。
[残念だけど、分からないや!昨日は偶然制裁通告があったから分かったけど…もしかしたら、もうエアモルデンに帰っちゃったかもしれないよ!]
[とりあえずエアホーレンに行ってみる。もしオルクスを見かけたら教えてくれ。]
[わかった、頑張ってね!]
(もしエアモルデンに帰ってたら、次に来るのはいつなんだ?ユスティーツの話し方だと、滅多にエアホーレンに来ないみたいだが…)
エアホーレンの市場の人混みに入って行く。買い物ならこういう所に居る筈だ。
(オルクスの背格好とか聞いておけば良かったな…)
[オルクスってどんな見た目?]
ユスティーツからの返事はない。ログアウトしたのか、リアルで朝食でもとりに行ったのだろうか。
市場はいつものように賑わっている。『自動椅子禁止』の看板が所々に建っている。
周りは人混みの吹き出しだらけで、間違えていくつかタップしてしまう。
「これいくらですか?」「いい朝だね。」「どこ行った!」「昨日のあれ見た?」「もう疲れてさぁ。」等々。

「お前…もしかしてあの有名な!」

うっかり見逃しそうになった吹き出しに、視線を戻す。しかし、その会話に参加した者はいない。
(あの有名な…って何だ?)
吹き出しの近くに寄ろうとすると、人混みから一人の男が現れた。
俺より少し背が高く歳上風で、身に付けている装備はどこか周りと浮いている。どうやら全て高級品のようだ。冷たい印象を抱かせる程端正な顔立ち。レーツェルに似た白い髪。紫の鋭い瞳が俺を見下ろす。

…紫?

(もしかしてこいつが…)
「オルクス、か?」
俺の吹き出しを見た瞬間、男は再び人混みに紛れた。
「待て!!」
[ユスティーツ、オルクスを見つけた!]
オルクスの姿を探すが、どこにも見当たらない。押し退けられた人達が、迷惑そうに俺を見る。
「すいません、すいません、通して下さい!」
最後の人をかき分ける。
男はいなかった。
「どこ行った…!!」
[シャルさん、オルクス見つけたの?]
無意識に歯ぎしりをする。
[いや…逃げられた。]
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