17 / 95
第二章
人混み
しおりを挟む
【ログインします】
ヴェルト、四日目。
「レーツェル、居るかい?」
部屋の奥から出てきたレーツェルは、寝ぼけ眼で答える。
「…どうしたの、シャル。」
「おはよう。エアホーレンに用があるから、留守番頼んでいいかな?」
「ん…行ってらっしゃい。」
ユスティーツのアドバイス通りに、早い内からオルクスを探す。
エアホーレンにテレポートして、フロイント機能を起動させる。
[ユスティーツ。オルクスの場所分かるか?]
すぐに返事が来る。
[残念だけど、分からないや!昨日は偶然制裁通告があったから分かったけど…もしかしたら、もうエアモルデンに帰っちゃったかもしれないよ!]
[とりあえずエアホーレンに行ってみる。もしオルクスを見かけたら教えてくれ。]
[わかった、頑張ってね!]
(もしエアモルデンに帰ってたら、次に来るのはいつなんだ?ユスティーツの話し方だと、滅多にエアホーレンに来ないみたいだが…)
エアホーレンの市場の人混みに入って行く。買い物ならこういう所に居る筈だ。
(オルクスの背格好とか聞いておけば良かったな…)
[オルクスってどんな見た目?]
ユスティーツからの返事はない。ログアウトしたのか、リアルで朝食でもとりに行ったのだろうか。
市場はいつものように賑わっている。『自動椅子禁止』の看板が所々に建っている。
周りは人混みの吹き出しだらけで、間違えていくつかタップしてしまう。
「これいくらですか?」「いい朝だね。」「どこ行った!」「昨日のあれ見た?」「もう疲れてさぁ。」等々。
「お前…もしかしてあの有名な!」
うっかり見逃しそうになった吹き出しに、視線を戻す。しかし、その会話に参加した者はいない。
(あの有名な…って何だ?)
吹き出しの近くに寄ろうとすると、人混みから一人の男が現れた。
俺より少し背が高く歳上風で、身に付けている装備はどこか周りと浮いている。どうやら全て高級品のようだ。冷たい印象を抱かせる程端正な顔立ち。レーツェルに似た白い髪。紫の鋭い瞳が俺を見下ろす。
…紫?
(もしかしてこいつが…)
「オルクス、か?」
俺の吹き出しを見た瞬間、男は再び人混みに紛れた。
「待て!!」
[ユスティーツ、オルクスを見つけた!]
オルクスの姿を探すが、どこにも見当たらない。押し退けられた人達が、迷惑そうに俺を見る。
「すいません、すいません、通して下さい!」
最後の人をかき分ける。
男はいなかった。
「どこ行った…!!」
[シャルさん、オルクス見つけたの?]
無意識に歯ぎしりをする。
[いや…逃げられた。]
ヴェルト、四日目。
「レーツェル、居るかい?」
部屋の奥から出てきたレーツェルは、寝ぼけ眼で答える。
「…どうしたの、シャル。」
「おはよう。エアホーレンに用があるから、留守番頼んでいいかな?」
「ん…行ってらっしゃい。」
ユスティーツのアドバイス通りに、早い内からオルクスを探す。
エアホーレンにテレポートして、フロイント機能を起動させる。
[ユスティーツ。オルクスの場所分かるか?]
すぐに返事が来る。
[残念だけど、分からないや!昨日は偶然制裁通告があったから分かったけど…もしかしたら、もうエアモルデンに帰っちゃったかもしれないよ!]
[とりあえずエアホーレンに行ってみる。もしオルクスを見かけたら教えてくれ。]
[わかった、頑張ってね!]
(もしエアモルデンに帰ってたら、次に来るのはいつなんだ?ユスティーツの話し方だと、滅多にエアホーレンに来ないみたいだが…)
エアホーレンの市場の人混みに入って行く。買い物ならこういう所に居る筈だ。
(オルクスの背格好とか聞いておけば良かったな…)
[オルクスってどんな見た目?]
ユスティーツからの返事はない。ログアウトしたのか、リアルで朝食でもとりに行ったのだろうか。
市場はいつものように賑わっている。『自動椅子禁止』の看板が所々に建っている。
周りは人混みの吹き出しだらけで、間違えていくつかタップしてしまう。
「これいくらですか?」「いい朝だね。」「どこ行った!」「昨日のあれ見た?」「もう疲れてさぁ。」等々。
「お前…もしかしてあの有名な!」
うっかり見逃しそうになった吹き出しに、視線を戻す。しかし、その会話に参加した者はいない。
(あの有名な…って何だ?)
吹き出しの近くに寄ろうとすると、人混みから一人の男が現れた。
俺より少し背が高く歳上風で、身に付けている装備はどこか周りと浮いている。どうやら全て高級品のようだ。冷たい印象を抱かせる程端正な顔立ち。レーツェルに似た白い髪。紫の鋭い瞳が俺を見下ろす。
…紫?
(もしかしてこいつが…)
「オルクス、か?」
俺の吹き出しを見た瞬間、男は再び人混みに紛れた。
「待て!!」
[ユスティーツ、オルクスを見つけた!]
オルクスの姿を探すが、どこにも見当たらない。押し退けられた人達が、迷惑そうに俺を見る。
「すいません、すいません、通して下さい!」
最後の人をかき分ける。
男はいなかった。
「どこ行った…!!」
[シャルさん、オルクス見つけたの?]
無意識に歯ぎしりをする。
[いや…逃げられた。]
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
箱庭から始まる俺の地獄(ヘル) ~今日から地獄生物の飼育員ってマジっすか!?~
白那 又太
ファンタジー
とあるアパートの一室に住む安楽 喜一郎は仕事に忙殺されるあまり、癒しを求めてペットを購入した。ところがそのペットの様子がどうもおかしい。
日々成長していくペットに少し違和感を感じながらも(比較的)平和な毎日を過ごしていた喜一郎。
ところがある日その平和は地獄からの使者、魔王デボラ様によって粉々に打ち砕かれるのであった。
目指すは地獄の楽園ってなんじゃそりゃ!
大したスキルも無い! チートも無い! あるのは理不尽と不条理だけ!
箱庭から始まる俺の地獄(ヘル)どうぞお楽しみください。
【本作は小説家になろう様、カクヨム様でも同時更新中です】
その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~
たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!!
猫刄 紅羽
年齢:18
性別:男
身長:146cm
容姿:幼女
声変わり:まだ
利き手:左
死因:神のミス
神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。
しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。
更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!?
そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか...
的な感じです。
領主の妻になりました
青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」
司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。
===============================================
オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。
挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。
クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。
新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。
マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。
ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。
捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。
長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。
新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。
フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。
フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。
ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。
========================================
*荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください
*約10万字で最終話を含めて全29話です
*他のサイトでも公開します
*10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします
*誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
[完結]愛していたのは過去の事
シマ
恋愛
「婚約破棄ですか?もう、一年前に済んでおります」
私には婚約者がいました。政略的な親が決めた婚約でしたが、彼の事を愛していました。
そう、あの時までは
腐った心根の女の話は聞かないと言われて人を突き飛ばしておいて今更、結婚式の話とは
貴方、馬鹿ですか?
流行りの婚約破棄に乗ってみた。
短いです。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる