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第二章
ユスティーツ
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「返事してくれないと困るなー!それじゃ悪いやつなのか普通の人なのかわからないじゃないか!」
金髪碧眼の少年は大袈裟な身振りをする。俺はソファーから降りた。
「僕達はある人に頼まれて、少年を探すためにここへ来た。フライハイトに立ち寄った旅人の少年って、君のことかい?」
少年は体ごと傾いた。
「んー…フライハイト?…あ!行ったよ、下見にね!」
「下見?」
レーツェルはソファーに座ったまま、この会話を見守っている。顔には緊張の色が見えた気がした。
「そう!下見。最悪の場合、あそこで『仕事』しようと思ってたからさ!」
「仕事?君の職業は何?」
少年は胸を張った。
「剣士だよ!勇者といえば剣士でしょ?それよりオレのことばっかり聞かないで、君たちのことも教えてよ!」
「彼女はレーツェル。僕はプファラーのシャルだ。」
少年は笑顔のまま黙った。代わりに、一人言モードの丸い吹き出しが現れる。
(?どうして今一人言なんか…。)
疑問に思いつつレーツェルに気がつかれないよう、タップした。
『シャルさん。もしこれが読めるなら、二人で話そう。』
(!?なんだこれ、どうしてこいつは俺が一人言を読めるって知って…)
脳内に一つの単語が弾き出される。
ヨシュカ。
「…レーツェル。君はもう教会に帰ってくれ。」
レーツェルはソファーから身を乗り出す。
「そんなことできない。危険過ぎる。」
「僕もすぐ戻る。お願いだから、早く。」
レーツェルは小声になった。
「嫌。この少年のことなら、私が何とかする。」
「…本当にお願いだ。帰ってくれ。」
頭がこんな重要な時に回らない。何か言い訳を言わないと、怪しまれるばかりだ。
「レーツェルさん?オレ何にもしないよ、大丈夫。シャルさんとはさ、リアルで知り合いなんだよ。ねー?」
(ナイスフォロー!!)
「そ、そうそう!いやぁ、偶然だな…えーと…。」
名前を聞いていなかった。
「ユスティーツだよ、シャルさん!ここで会うのは初めてだったよね!」
「そうだね!ユスティーツ…そんな名前でやってたなんて知らなかったよ!」
「じゃあ、どうして知り合いだって分かったの?」
レーツェルが冷静に言った。ユスティーツは表情を崩さない。
「シャルさんの名前は聞いてたからさ!オレはシャルさんにここの写真を送ったことがあるんだよ!あーあ、名前を一緒に教えておけば良かったね!」
「そうだね!」
(完璧だよユスティーツ…ただ者じゃなさそうだな。)
「そう…なら、私は先に戻っている。でも、シャル。帰りも気をつけて。」
ユスティーツはひらひらと手を振った。
「オレが教会まで送っておくよ!心配しないで!」
レーツェルは頷いて自分の椅子に乗った。
「ふー。シャルさん嘘つくの下手だね!まあそこが信用できるところだけど!」
「…で、君はヨシュカなのか?」
ユスティーツは腰に手を当てた。
『こっちで話してくれる?普通の会話じゃ誰かが参加してくるかもしれない。』
『わかった。』
素直に従っておく。
『オレはヨシュカだよ。シャルさんもそうでしょ?』
『あぁ、そうだ。フライハイトが担当になってる。君は?』
『当ててみてよ!オレはねー結構最初の方からいたかな!それがヒント。』
まず俺はフライハイトとエアホーレンとエアモルデンしか知らない。
『…もしかして、エアモルデン?』
ユスティーツは笑いだした。
『違うよ!正解はエアホーレン。中央都市!』
『あの中央都市?凄いね…。最近は初心者狩りがいるって聞いたけど…。』
『いるいる!おかげで仕事が増えちゃった!でもこいつらは違うよ、もっと悪いことしてた。』
(こいつらって…ここで死んでる人全員、ユスティーツの『制裁』の餌食に…?)
『こいつらは「制裁書」564ページ…「金銭の賭け」をしていたんだ。大規模だよ、これだけ居たんだから。課金するほどお金がなくなってきちゃった人たち集めて、戦わせる。それでどっちが生き残るか賭けるんだ。戦う人も、また課金するためのお金が必要だからね!』
『「制裁書」ってなに?』
ユスティーツは本を取り出した。
『ファルベにもらわなかった?どういう人が制裁対象なのかって、詳しく書いてある。』
『さっきページ数言ってたけど…もしかして、暗記してるの?』
日が高くなってきた。
『そう、もちろん!』
(マジかよ…ガチ勢ってやつか?)
『ところで、シャルさんはオレを探すためだけにここへ来たの?』
なかなか鋭い。俺は自分の言葉で話すことにした。
『…違う。俺は、この世界についてもっと知りたい。プファラーについて、知ってるか?創造主の声が聞けるらしい。でもそれだけじゃ足りない、それじゃ他のプファラーと一緒だ、だから…仲間が、できればヨシュカの仲間が欲しい。より多くだ。エアモルデンなら、制裁を下すヨシュカに会えるかもしれないって思ったんだ。』
口調が変わったことには触れず、ユスティーツは考えこんだ。
『…その判断は良いと思うよ。現にオレと会えてるんだ。俺も創造主には興味がある。もっとこうしてくれとか、ああしてくれとか、要望が伝えられたらどんなにいいことか!それに、どんな人なのかっていうのも気になるね!』
俺は握手を求めた。ユスティーツもそれに応じる。
『決まりだ。他のヨシュカのことについて何か知ってるか?』
『もちろん!地域一つごとに一人!つまり、このエアモルデンにもヨシュカは居る。』
エアモルデンのヨシュカ。レーツェル曰く弱肉強食のこの地域に居るヨシュカは、一体どんな人物なのだろうか。
『とりあえず、今日は教会まで送るよ!』
『いや、エアホーレンまでで大丈夫だ。用があって。』
ユスティーツは椅子を出したオレンジの木製のベンチだ。
「では、しゅっぱーつ!!」
【テレポート・エアホーレン 実行します】
金髪碧眼の少年は大袈裟な身振りをする。俺はソファーから降りた。
「僕達はある人に頼まれて、少年を探すためにここへ来た。フライハイトに立ち寄った旅人の少年って、君のことかい?」
少年は体ごと傾いた。
「んー…フライハイト?…あ!行ったよ、下見にね!」
「下見?」
レーツェルはソファーに座ったまま、この会話を見守っている。顔には緊張の色が見えた気がした。
「そう!下見。最悪の場合、あそこで『仕事』しようと思ってたからさ!」
「仕事?君の職業は何?」
少年は胸を張った。
「剣士だよ!勇者といえば剣士でしょ?それよりオレのことばっかり聞かないで、君たちのことも教えてよ!」
「彼女はレーツェル。僕はプファラーのシャルだ。」
少年は笑顔のまま黙った。代わりに、一人言モードの丸い吹き出しが現れる。
(?どうして今一人言なんか…。)
疑問に思いつつレーツェルに気がつかれないよう、タップした。
『シャルさん。もしこれが読めるなら、二人で話そう。』
(!?なんだこれ、どうしてこいつは俺が一人言を読めるって知って…)
脳内に一つの単語が弾き出される。
ヨシュカ。
「…レーツェル。君はもう教会に帰ってくれ。」
レーツェルはソファーから身を乗り出す。
「そんなことできない。危険過ぎる。」
「僕もすぐ戻る。お願いだから、早く。」
レーツェルは小声になった。
「嫌。この少年のことなら、私が何とかする。」
「…本当にお願いだ。帰ってくれ。」
頭がこんな重要な時に回らない。何か言い訳を言わないと、怪しまれるばかりだ。
「レーツェルさん?オレ何にもしないよ、大丈夫。シャルさんとはさ、リアルで知り合いなんだよ。ねー?」
(ナイスフォロー!!)
「そ、そうそう!いやぁ、偶然だな…えーと…。」
名前を聞いていなかった。
「ユスティーツだよ、シャルさん!ここで会うのは初めてだったよね!」
「そうだね!ユスティーツ…そんな名前でやってたなんて知らなかったよ!」
「じゃあ、どうして知り合いだって分かったの?」
レーツェルが冷静に言った。ユスティーツは表情を崩さない。
「シャルさんの名前は聞いてたからさ!オレはシャルさんにここの写真を送ったことがあるんだよ!あーあ、名前を一緒に教えておけば良かったね!」
「そうだね!」
(完璧だよユスティーツ…ただ者じゃなさそうだな。)
「そう…なら、私は先に戻っている。でも、シャル。帰りも気をつけて。」
ユスティーツはひらひらと手を振った。
「オレが教会まで送っておくよ!心配しないで!」
レーツェルは頷いて自分の椅子に乗った。
「ふー。シャルさん嘘つくの下手だね!まあそこが信用できるところだけど!」
「…で、君はヨシュカなのか?」
ユスティーツは腰に手を当てた。
『こっちで話してくれる?普通の会話じゃ誰かが参加してくるかもしれない。』
『わかった。』
素直に従っておく。
『オレはヨシュカだよ。シャルさんもそうでしょ?』
『あぁ、そうだ。フライハイトが担当になってる。君は?』
『当ててみてよ!オレはねー結構最初の方からいたかな!それがヒント。』
まず俺はフライハイトとエアホーレンとエアモルデンしか知らない。
『…もしかして、エアモルデン?』
ユスティーツは笑いだした。
『違うよ!正解はエアホーレン。中央都市!』
『あの中央都市?凄いね…。最近は初心者狩りがいるって聞いたけど…。』
『いるいる!おかげで仕事が増えちゃった!でもこいつらは違うよ、もっと悪いことしてた。』
(こいつらって…ここで死んでる人全員、ユスティーツの『制裁』の餌食に…?)
『こいつらは「制裁書」564ページ…「金銭の賭け」をしていたんだ。大規模だよ、これだけ居たんだから。課金するほどお金がなくなってきちゃった人たち集めて、戦わせる。それでどっちが生き残るか賭けるんだ。戦う人も、また課金するためのお金が必要だからね!』
『「制裁書」ってなに?』
ユスティーツは本を取り出した。
『ファルベにもらわなかった?どういう人が制裁対象なのかって、詳しく書いてある。』
『さっきページ数言ってたけど…もしかして、暗記してるの?』
日が高くなってきた。
『そう、もちろん!』
(マジかよ…ガチ勢ってやつか?)
『ところで、シャルさんはオレを探すためだけにここへ来たの?』
なかなか鋭い。俺は自分の言葉で話すことにした。
『…違う。俺は、この世界についてもっと知りたい。プファラーについて、知ってるか?創造主の声が聞けるらしい。でもそれだけじゃ足りない、それじゃ他のプファラーと一緒だ、だから…仲間が、できればヨシュカの仲間が欲しい。より多くだ。エアモルデンなら、制裁を下すヨシュカに会えるかもしれないって思ったんだ。』
口調が変わったことには触れず、ユスティーツは考えこんだ。
『…その判断は良いと思うよ。現にオレと会えてるんだ。俺も創造主には興味がある。もっとこうしてくれとか、ああしてくれとか、要望が伝えられたらどんなにいいことか!それに、どんな人なのかっていうのも気になるね!』
俺は握手を求めた。ユスティーツもそれに応じる。
『決まりだ。他のヨシュカのことについて何か知ってるか?』
『もちろん!地域一つごとに一人!つまり、このエアモルデンにもヨシュカは居る。』
エアモルデンのヨシュカ。レーツェル曰く弱肉強食のこの地域に居るヨシュカは、一体どんな人物なのだろうか。
『とりあえず、今日は教会まで送るよ!』
『いや、エアホーレンまでで大丈夫だ。用があって。』
ユスティーツは椅子を出したオレンジの木製のベンチだ。
「では、しゅっぱーつ!!」
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