13 / 95
第二章
ユスティーツ
しおりを挟む
「返事してくれないと困るなー!それじゃ悪いやつなのか普通の人なのかわからないじゃないか!」
金髪碧眼の少年は大袈裟な身振りをする。俺はソファーから降りた。
「僕達はある人に頼まれて、少年を探すためにここへ来た。フライハイトに立ち寄った旅人の少年って、君のことかい?」
少年は体ごと傾いた。
「んー…フライハイト?…あ!行ったよ、下見にね!」
「下見?」
レーツェルはソファーに座ったまま、この会話を見守っている。顔には緊張の色が見えた気がした。
「そう!下見。最悪の場合、あそこで『仕事』しようと思ってたからさ!」
「仕事?君の職業は何?」
少年は胸を張った。
「剣士だよ!勇者といえば剣士でしょ?それよりオレのことばっかり聞かないで、君たちのことも教えてよ!」
「彼女はレーツェル。僕はプファラーのシャルだ。」
少年は笑顔のまま黙った。代わりに、一人言モードの丸い吹き出しが現れる。
(?どうして今一人言なんか…。)
疑問に思いつつレーツェルに気がつかれないよう、タップした。
『シャルさん。もしこれが読めるなら、二人で話そう。』
(!?なんだこれ、どうしてこいつは俺が一人言を読めるって知って…)
脳内に一つの単語が弾き出される。
ヨシュカ。
「…レーツェル。君はもう教会に帰ってくれ。」
レーツェルはソファーから身を乗り出す。
「そんなことできない。危険過ぎる。」
「僕もすぐ戻る。お願いだから、早く。」
レーツェルは小声になった。
「嫌。この少年のことなら、私が何とかする。」
「…本当にお願いだ。帰ってくれ。」
頭がこんな重要な時に回らない。何か言い訳を言わないと、怪しまれるばかりだ。
「レーツェルさん?オレ何にもしないよ、大丈夫。シャルさんとはさ、リアルで知り合いなんだよ。ねー?」
(ナイスフォロー!!)
「そ、そうそう!いやぁ、偶然だな…えーと…。」
名前を聞いていなかった。
「ユスティーツだよ、シャルさん!ここで会うのは初めてだったよね!」
「そうだね!ユスティーツ…そんな名前でやってたなんて知らなかったよ!」
「じゃあ、どうして知り合いだって分かったの?」
レーツェルが冷静に言った。ユスティーツは表情を崩さない。
「シャルさんの名前は聞いてたからさ!オレはシャルさんにここの写真を送ったことがあるんだよ!あーあ、名前を一緒に教えておけば良かったね!」
「そうだね!」
(完璧だよユスティーツ…ただ者じゃなさそうだな。)
「そう…なら、私は先に戻っている。でも、シャル。帰りも気をつけて。」
ユスティーツはひらひらと手を振った。
「オレが教会まで送っておくよ!心配しないで!」
レーツェルは頷いて自分の椅子に乗った。
「ふー。シャルさん嘘つくの下手だね!まあそこが信用できるところだけど!」
「…で、君はヨシュカなのか?」
ユスティーツは腰に手を当てた。
『こっちで話してくれる?普通の会話じゃ誰かが参加してくるかもしれない。』
『わかった。』
素直に従っておく。
『オレはヨシュカだよ。シャルさんもそうでしょ?』
『あぁ、そうだ。フライハイトが担当になってる。君は?』
『当ててみてよ!オレはねー結構最初の方からいたかな!それがヒント。』
まず俺はフライハイトとエアホーレンとエアモルデンしか知らない。
『…もしかして、エアモルデン?』
ユスティーツは笑いだした。
『違うよ!正解はエアホーレン。中央都市!』
『あの中央都市?凄いね…。最近は初心者狩りがいるって聞いたけど…。』
『いるいる!おかげで仕事が増えちゃった!でもこいつらは違うよ、もっと悪いことしてた。』
(こいつらって…ここで死んでる人全員、ユスティーツの『制裁』の餌食に…?)
『こいつらは「制裁書」564ページ…「金銭の賭け」をしていたんだ。大規模だよ、これだけ居たんだから。課金するほどお金がなくなってきちゃった人たち集めて、戦わせる。それでどっちが生き残るか賭けるんだ。戦う人も、また課金するためのお金が必要だからね!』
『「制裁書」ってなに?』
ユスティーツは本を取り出した。
『ファルベにもらわなかった?どういう人が制裁対象なのかって、詳しく書いてある。』
『さっきページ数言ってたけど…もしかして、暗記してるの?』
日が高くなってきた。
『そう、もちろん!』
(マジかよ…ガチ勢ってやつか?)
『ところで、シャルさんはオレを探すためだけにここへ来たの?』
なかなか鋭い。俺は自分の言葉で話すことにした。
『…違う。俺は、この世界についてもっと知りたい。プファラーについて、知ってるか?創造主の声が聞けるらしい。でもそれだけじゃ足りない、それじゃ他のプファラーと一緒だ、だから…仲間が、できればヨシュカの仲間が欲しい。より多くだ。エアモルデンなら、制裁を下すヨシュカに会えるかもしれないって思ったんだ。』
口調が変わったことには触れず、ユスティーツは考えこんだ。
『…その判断は良いと思うよ。現にオレと会えてるんだ。俺も創造主には興味がある。もっとこうしてくれとか、ああしてくれとか、要望が伝えられたらどんなにいいことか!それに、どんな人なのかっていうのも気になるね!』
俺は握手を求めた。ユスティーツもそれに応じる。
『決まりだ。他のヨシュカのことについて何か知ってるか?』
『もちろん!地域一つごとに一人!つまり、このエアモルデンにもヨシュカは居る。』
エアモルデンのヨシュカ。レーツェル曰く弱肉強食のこの地域に居るヨシュカは、一体どんな人物なのだろうか。
『とりあえず、今日は教会まで送るよ!』
『いや、エアホーレンまでで大丈夫だ。用があって。』
ユスティーツは椅子を出したオレンジの木製のベンチだ。
「では、しゅっぱーつ!!」
【テレポート・エアホーレン 実行します】
金髪碧眼の少年は大袈裟な身振りをする。俺はソファーから降りた。
「僕達はある人に頼まれて、少年を探すためにここへ来た。フライハイトに立ち寄った旅人の少年って、君のことかい?」
少年は体ごと傾いた。
「んー…フライハイト?…あ!行ったよ、下見にね!」
「下見?」
レーツェルはソファーに座ったまま、この会話を見守っている。顔には緊張の色が見えた気がした。
「そう!下見。最悪の場合、あそこで『仕事』しようと思ってたからさ!」
「仕事?君の職業は何?」
少年は胸を張った。
「剣士だよ!勇者といえば剣士でしょ?それよりオレのことばっかり聞かないで、君たちのことも教えてよ!」
「彼女はレーツェル。僕はプファラーのシャルだ。」
少年は笑顔のまま黙った。代わりに、一人言モードの丸い吹き出しが現れる。
(?どうして今一人言なんか…。)
疑問に思いつつレーツェルに気がつかれないよう、タップした。
『シャルさん。もしこれが読めるなら、二人で話そう。』
(!?なんだこれ、どうしてこいつは俺が一人言を読めるって知って…)
脳内に一つの単語が弾き出される。
ヨシュカ。
「…レーツェル。君はもう教会に帰ってくれ。」
レーツェルはソファーから身を乗り出す。
「そんなことできない。危険過ぎる。」
「僕もすぐ戻る。お願いだから、早く。」
レーツェルは小声になった。
「嫌。この少年のことなら、私が何とかする。」
「…本当にお願いだ。帰ってくれ。」
頭がこんな重要な時に回らない。何か言い訳を言わないと、怪しまれるばかりだ。
「レーツェルさん?オレ何にもしないよ、大丈夫。シャルさんとはさ、リアルで知り合いなんだよ。ねー?」
(ナイスフォロー!!)
「そ、そうそう!いやぁ、偶然だな…えーと…。」
名前を聞いていなかった。
「ユスティーツだよ、シャルさん!ここで会うのは初めてだったよね!」
「そうだね!ユスティーツ…そんな名前でやってたなんて知らなかったよ!」
「じゃあ、どうして知り合いだって分かったの?」
レーツェルが冷静に言った。ユスティーツは表情を崩さない。
「シャルさんの名前は聞いてたからさ!オレはシャルさんにここの写真を送ったことがあるんだよ!あーあ、名前を一緒に教えておけば良かったね!」
「そうだね!」
(完璧だよユスティーツ…ただ者じゃなさそうだな。)
「そう…なら、私は先に戻っている。でも、シャル。帰りも気をつけて。」
ユスティーツはひらひらと手を振った。
「オレが教会まで送っておくよ!心配しないで!」
レーツェルは頷いて自分の椅子に乗った。
「ふー。シャルさん嘘つくの下手だね!まあそこが信用できるところだけど!」
「…で、君はヨシュカなのか?」
ユスティーツは腰に手を当てた。
『こっちで話してくれる?普通の会話じゃ誰かが参加してくるかもしれない。』
『わかった。』
素直に従っておく。
『オレはヨシュカだよ。シャルさんもそうでしょ?』
『あぁ、そうだ。フライハイトが担当になってる。君は?』
『当ててみてよ!オレはねー結構最初の方からいたかな!それがヒント。』
まず俺はフライハイトとエアホーレンとエアモルデンしか知らない。
『…もしかして、エアモルデン?』
ユスティーツは笑いだした。
『違うよ!正解はエアホーレン。中央都市!』
『あの中央都市?凄いね…。最近は初心者狩りがいるって聞いたけど…。』
『いるいる!おかげで仕事が増えちゃった!でもこいつらは違うよ、もっと悪いことしてた。』
(こいつらって…ここで死んでる人全員、ユスティーツの『制裁』の餌食に…?)
『こいつらは「制裁書」564ページ…「金銭の賭け」をしていたんだ。大規模だよ、これだけ居たんだから。課金するほどお金がなくなってきちゃった人たち集めて、戦わせる。それでどっちが生き残るか賭けるんだ。戦う人も、また課金するためのお金が必要だからね!』
『「制裁書」ってなに?』
ユスティーツは本を取り出した。
『ファルベにもらわなかった?どういう人が制裁対象なのかって、詳しく書いてある。』
『さっきページ数言ってたけど…もしかして、暗記してるの?』
日が高くなってきた。
『そう、もちろん!』
(マジかよ…ガチ勢ってやつか?)
『ところで、シャルさんはオレを探すためだけにここへ来たの?』
なかなか鋭い。俺は自分の言葉で話すことにした。
『…違う。俺は、この世界についてもっと知りたい。プファラーについて、知ってるか?創造主の声が聞けるらしい。でもそれだけじゃ足りない、それじゃ他のプファラーと一緒だ、だから…仲間が、できればヨシュカの仲間が欲しい。より多くだ。エアモルデンなら、制裁を下すヨシュカに会えるかもしれないって思ったんだ。』
口調が変わったことには触れず、ユスティーツは考えこんだ。
『…その判断は良いと思うよ。現にオレと会えてるんだ。俺も創造主には興味がある。もっとこうしてくれとか、ああしてくれとか、要望が伝えられたらどんなにいいことか!それに、どんな人なのかっていうのも気になるね!』
俺は握手を求めた。ユスティーツもそれに応じる。
『決まりだ。他のヨシュカのことについて何か知ってるか?』
『もちろん!地域一つごとに一人!つまり、このエアモルデンにもヨシュカは居る。』
エアモルデンのヨシュカ。レーツェル曰く弱肉強食のこの地域に居るヨシュカは、一体どんな人物なのだろうか。
『とりあえず、今日は教会まで送るよ!』
『いや、エアホーレンまでで大丈夫だ。用があって。』
ユスティーツは椅子を出したオレンジの木製のベンチだ。
「では、しゅっぱーつ!!」
【テレポート・エアホーレン 実行します】
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説

モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
無能と呼ばれてパーティーを追放!最強に成り上がり人生最高!
本条蒼依
ファンタジー
主人公クロスは、マスターで聞いた事のない職業だが、Eランクという最低ランクの職業を得た。
そして、差別を受けた田舎を飛び出し、冒険者ギルドに所属しポーターとして生活をしていたが、
同じパーティーメンバーからも疎まれている状況で話は始まる。

俺の娘、チョロインじゃん!
ちゃんこ
ファンタジー
俺、そこそこイケてる男爵(32) 可愛い俺の娘はヒロイン……あれ?
乙女ゲーム? 悪役令嬢? ざまぁ? 何、この情報……?
男爵令嬢が王太子と婚約なんて、あり得なくね?
アホな俺の娘が高位貴族令息たちと仲良しこよしなんて、あり得なくね?
ざまぁされること必至じゃね?
でも、学園入学は来年だ。まだ間に合う。そうだ、隣国に移住しよう……問題ないな、うん!
「おのれぇぇ! 公爵令嬢たる我が娘を断罪するとは! 許さぬぞーっ!」
余裕ぶっこいてたら、おヒゲが素敵な公爵(41)が突進してきた!
え? え? 公爵もゲーム情報キャッチしたの? ぎゃぁぁぁ!
【ヒロインの父親】vs.【悪役令嬢の父親】の戦いが始まる?

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています

絞首刑まっしぐらの『醜い悪役令嬢』が『美しい聖女』と呼ばれるようになるまでの24時間
夕景あき
ファンタジー
ガリガリに痩せて肌も髪もボロボロの『醜い悪役令嬢』と呼ばれたオリビアは、ある日婚約者であるトムス王子と義妹のアイラの会話を聞いてしまう。義妹はオリビアが放火犯だとトムス王子に訴え、トムス王子はそれを信じオリビアを明日の卒業パーティーで断罪して婚約破棄するという。
卒業パーティーまで、残り時間は24時間!!
果たしてオリビアは放火犯の冤罪で断罪され絞首刑となる運命から、逃れることが出来るのか!?

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

外れスキルで始める、田舎で垂れ流しスローライフ!
Mr.Six
ファンタジー
「外れスキル」と嘲笑され、故郷を追放された青年リクト。彼の唯一のスキル「垂れ流し」は、使うと勝手に物が溢れ出すという奇妙な能力だった。辿り着いたのは、人里離れた小さな村。荒れた畑、壊れかけの家々、そしてどこか元気のない村人たち。
役立たずと思われていたスキルが、いつしか村を救う奇跡を起こす。流れ出る謎の作物や道具が村を潤し、彼の不器用ながらも心優しい行動が人々の心を繋いでいく。畑を耕し、収穫を喜び、仲間と笑い合う日々の中で、リクトは「無価値なスキル」の本当の価値に気付いていく。
笑いと癒し、そして小さな奇跡が詰まった、異世界スローライフ物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる