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エピローグ
手紙
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あれから1ヶ月が経った。ヴェルトは完全に破壊され、もう存在しない。ユーザー達にはサービス終了のお知らせと共に謝罪文が送られ、ネットでも大騒ぎになった。俺はそんな騒ぎを、遠くから眺めるような気持ちで見ていた。シュティレの安否さえも俺は知らない。ただ、ヴェルトをやめた俺はシュティレの心配する気持ちも薄れてきた。そんな自分が、憎かった。それを振り払うかのように俺は夏休みの課題と戦った。結果、最終日の夜中に終わり、宣言通り全く何も終わっていなかった真から大ブーイングを受けた。夏休み中どこにも遊びに行っていない為、財布に余裕のあった俺はお詫びに真にアイスをおごってやったからもう怒っていないと思う。
今日は一人で電車に乗り、適当に漫画を買って帰る所だった。立ち読みしていたせいで外はもう薄暗く、帰宅ラッシュに巻き込まれてクタクタになっていた。駅も酷く混雑しており、人にぶつかってしまう。
「す、すいません。」
「…。」
その男性は思わず二度見するほど顔が整っていた。そのせいか冷たい雰囲気すらしていて、周りの人は彼をなるべく避けるようにして歩いていた。真っ黒な髪と目が印象的だった。
(…この髪型、どこかで見たような…)
男は何も言わず呆然とする俺を放置して行ってしまった。何となく気になり後を追う。すると、丁度電車が来るアナウンスがあった。電車がホームへと入ってくる。男は人を押し退け、そして躊躇なく…飛んだ。
飛び散る何か。叫び声。ざわめき。逃げようとする人と、駆けつける野次馬。出てくる運転手。俺は自分が何かしてしまった気がして、逃げるように帰宅した。
自分の部屋に戻り上着を脱ぐと、フードの所に手紙が入っている事に気がついた。封筒を開けると、紙が一枚。差出人の名前はない。
〈ヴェルトへのログインを今すぐしましょう!〉
「…これって。」
【ログインしました】
「お帰り、シャルさん!」「やぁシャル君!」「遅いわよぉ、もう!ずっと待ってたんだから!」「久しいな、シャル。」「…来たか。」
そこにいたのは、ヨシュカの皆だった。オルクスが説明する。
「作り直した。これからは俺がヴェルトを管理する。」
「オル君、ヴェルトのテーマ曲自分で歌うんだってよ。」
ヴィッツの余計な一言にオルクスが無言の圧力をかけていると、彼女が現れた。
「シャル…久しぶり。」
「シュティレ…!無事だったんだね。」
シュティレは以前と違い、白いレースが沢山付いたワンピースを来ていた。
「うん。シャルのお陰。…ありがとう。」
良い雰囲気になりそうな時に、オルクスが割り込む。
「貴様には引き続きヨシュカをやってもらう。シュティレもヨシュカの仲間入りだ。…ヨシュカで守る事は一つだけだ、分かるな。」
オルクスは珍しく少し笑っていた。何か良い事でもあったのかもしれない。俺はさっきの事件の事などすっかり忘れて、満面の笑みで答えた。
「もちろん。俺達がチートである事を知られてはいけない。」
今日は一人で電車に乗り、適当に漫画を買って帰る所だった。立ち読みしていたせいで外はもう薄暗く、帰宅ラッシュに巻き込まれてクタクタになっていた。駅も酷く混雑しており、人にぶつかってしまう。
「す、すいません。」
「…。」
その男性は思わず二度見するほど顔が整っていた。そのせいか冷たい雰囲気すらしていて、周りの人は彼をなるべく避けるようにして歩いていた。真っ黒な髪と目が印象的だった。
(…この髪型、どこかで見たような…)
男は何も言わず呆然とする俺を放置して行ってしまった。何となく気になり後を追う。すると、丁度電車が来るアナウンスがあった。電車がホームへと入ってくる。男は人を押し退け、そして躊躇なく…飛んだ。
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自分の部屋に戻り上着を脱ぐと、フードの所に手紙が入っている事に気がついた。封筒を開けると、紙が一枚。差出人の名前はない。
〈ヴェルトへのログインを今すぐしましょう!〉
「…これって。」
【ログインしました】
「お帰り、シャルさん!」「やぁシャル君!」「遅いわよぉ、もう!ずっと待ってたんだから!」「久しいな、シャル。」「…来たか。」
そこにいたのは、ヨシュカの皆だった。オルクスが説明する。
「作り直した。これからは俺がヴェルトを管理する。」
「オル君、ヴェルトのテーマ曲自分で歌うんだってよ。」
ヴィッツの余計な一言にオルクスが無言の圧力をかけていると、彼女が現れた。
「シャル…久しぶり。」
「シュティレ…!無事だったんだね。」
シュティレは以前と違い、白いレースが沢山付いたワンピースを来ていた。
「うん。シャルのお陰。…ありがとう。」
良い雰囲気になりそうな時に、オルクスが割り込む。
「貴様には引き続きヨシュカをやってもらう。シュティレもヨシュカの仲間入りだ。…ヨシュカで守る事は一つだけだ、分かるな。」
オルクスは珍しく少し笑っていた。何か良い事でもあったのかもしれない。俺はさっきの事件の事などすっかり忘れて、満面の笑みで答えた。
「もちろん。俺達がチートである事を知られてはいけない。」
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