俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

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第十章

決着

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激しい運動を続けていたせいで、身体が重い。それに加えて腹を殴られ俺の体力は限界に近づいていた。しかし、そんな弱音を吐いている場合ではない。俺は壁にしがみつくようにして立ち上がった。実際リアルの俺の身体は何ともない。ただ、いつの間にか表示していたhpがどんどん減っている。動作も重い。エーファの本体は飴玉を口に放り込んだ。目が鋭く光る。ヴルルルル、と獣の唸り声を喉に響かせた。これ以上交渉しようとしても、無駄だろう。
俺がナイフを取り出そうとすると、目にも止まらぬ早さで飛びかかってきた。尖った爪が頬を掠める。何とか避けると、体制を立て直す前に次の手が襲いかかる。バランスを崩して尻餅をついた。間髪を入れずに上からの蹴りが降ってくるのを地面を転がるようにして避ける。相手の動作に反射で対応しているようなもので、当たらないのはほぼ奇跡だ。大きく横へ飛び退き、距離を取った。横にずれた事で、シュティレが攻撃の影響を受けない位置になった事に気がつく。
「メッサー発動!!」
出現したブーフを突き出し、そこから出た光線がエーファの心臓部分を貫いた。エーファの目が見開かれる。がくん、と顔が下を向くも、すぐに戻った。そして今度はエーファが後ろへ飛び退いた。隙を作るには使えそうだが、効果はあまりない。グロースを使いたい所だが、グロースではシュティレが巻き込まれてしまうかどうか、ギリギリだ。下手に賭けはしたくない。
(…賭け、か)
媒体へ視線を向ける。彼はシュティレの近くに立ったまま、微動だにしない。
(確か、オルクスが前にあの薬を使っていた。効果は…)
ユスティーツはかつて媒体を殺した。そのはずだった。俺はついさっき本体の心臓を貫いた。けれどもその二人は平然としている。
(…脳を破壊したらどうだ?)
いくらエーファとは言え、弱点はあるだろう。媒体を必要とする理由は何だ?
俺は今度こそナイフを取り出し、エーファに向かった。エーファは軽々と避ける。反撃する隙を与えずに何度もそれを繰り返す。刺すつもりはない、ただ、体力が尽きるのを待っている。オルクスが持っていたあの飴、それと同じならば、エーファの体力が減るのは早い。段々と動きが鈍くなっているのが目に見えて分かった。
「メッサー発動。」
再びメッサーを使った。エーファは大きく痙攣するとその場に倒れた。
俺はそのまま媒体へと向かい、本を向ける。
「メッサー発動!!」
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