俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

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第十章

儀式

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廊下の角を曲がった瞬間、媒体の姿を見失う。撒かれた?いや、ひょっとしたらテレポートなんて事も可能なのかもしれない。今は原因より解決方法…シュティレがどこにいるのかだ。
(名前を呼ぶか?そもそもシュティレは、どんな状態なんだ?)
落ち着け。これはゲーム、ゲームのラスボスと言ったら何となく場所が特定できるかもしれない。…建物の最上階か、地下室。間違えたら大きな時間をロスする事になる。
エーファは空に近づきたがっていた。上空に自ら生み出した空間があるからだ。それならより高い場所を好むのではないだろうか。つまり、最上階。階段に飛び付いて駆け上がる。自分の動きがもどかしくて、時折転びそうになりながら最上階に辿り着いた。そこには廊下も部屋もなく、広い空間になっていた。天井からの光が巨大なステンドグラスに通されて、大理石の床を彩る。空間の中心では、人一人が横たわれるくらいの簡素な白い台が置いてあった。そこに寝ていたのは、紛れもなく本物のシュティレだった。いつもとは違う、真っ白なワンピースを身に付けている。その光景はまるで絵画のようで、呆然とする程美しかった。何もかもが白いその場所で、エーファは明らかに浮いた存在であり、彼女はトゥテラリィ達が着ていた制服姿だった。その隣には媒体もいる。
俺の足音を聞いて、シュティレを見つめていたエーファは振り向いた。媒体も同時に振り向く。シュティレは気を失っているようだ。
「彼を殺したのですか。」
相手の出方が分からない為俺は会話に応じる事にした。
「シュピッツは生きている、気絶しただけだ。」
「そうですか…それで、どうなさいましたか?」
「シュティレから離れろ。」
手を前に突き出す。エーファが妙な動きをしたら、すぐにアングリフを作動させる。しかしシュティレを巻き込みたくない。
「それは出来ませんね。…貴方がいても、儀式には問題ありません。じっとしていて下されば。ですがそれは不可能でしょう。今度こそ、死んで貰わなくては。」
エーファの…本体の身体が変化し始めた。より姿が獣へと近付いていく。媒体が1つの飴玉を取り出した。
「この彼女から拝借しました。一時的に身体能力を高める効果があるらしいですね。…獣人は、最も身体能力に長けている種族です。これさえ摂取すれば、貴方に勝てるでしょう。」
媒体は更にシュティレに近付いた。これでは攻撃できない。俺がアングリフを使わずにエーファを倒すには…あの飴玉を手に入れたら、強くなれるのか?
俺は淡々と説明するエーファの媒体に素早く駆け寄り、飴玉に手を伸ばした。咄嗟とっさに本体が俺の腹を殴る。身体が大きく曲がって、俺は壁へと打ち付けられた。
「さぁ、もう貴方との決着をつけましょう。」
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