俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

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第十章

天空の教会

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何が起きたのか分からない。
教会の重たい扉の目の前に立ち、ひとりでに開いた扉から入った直後。扉が大きな音をたて、それ以上に大きな音とともに地面が激しく揺れ始めた。俺は思い切りどこかの壁に頭を打ち付けて…今まで、気を失っていた。地震はもう収まっていた。
「一体何が…。」
「気が付きましたか。」
顔を上げると、そこにいたのはエーファの媒体だった。彼はあの時、ユスティーツが殺したのに。痛む頭を押さえながら立ち上がる。
「ユスティーツはどこだ。シュティレは今どうなっている。」
「二人とも上の階です。もちろん、ここから先へは通しません。貴方は…そう、ここで死んでもらいます。その能力で彼女と連絡を取られたら厄介ですから。いくらレベルが最強のヨシュカと言っても、空は飛べませんよね?ここなら一時的に彼女の介入を防げそうです。」
彼女というのは創造主の事だろう。
(…空ってなんだ?)
慌てて近くの窓から外の景色を見る。地面は見えず、大きな雲ばかりだ。心なしか船のように床が揺れている気がする。更に上を見上げると、そこには闇が広がっていた。光が全く無い、完全な無。
「何だこれ、空、飛んで…」
「こんなに上空に飛ぶ事は想定されていません。だから、上は暗いでしょう?存在しないはずの空間を、僕が一時的に歪めて生み出したのです。あそこに入ってしまえば、彼女はもう手出しが出来ません。」
「そこで、何をするつもりだ。」
エーファは無表情で俺を見つめる。
「ご存知でしょう?貴方が迷わず中央教会に来た時点で、そう宣言している事と同義です。ユスティーツは我々にとっての『切り札』…そう仰っていましたね。」
(俺達の会話を盗聴していたのか…)
考えてみれば、こんなに簡単に空間を歪めてしまう様な人工知能に盗聴なんて出来ないはずがなかった。俺達の会話はすっかり聞かれていたのだ。
どうしたらいい。
もう何も思い浮かばない。俺には作戦を考える才能も、実行する勇気も無い。ここ最近、そんな事ばかり考えている。フロイント機能も使い物にならなくなっていた。

エーファを倒す。

この目的もエーファにはお見通しだ。
(…でも、それが何だ?エーファを倒す、それは知られようが知られまいが倒してしまえば良いんだ)
今俺に思い付くのはそれだけだ。エーファさえ倒してしまえば何とかなる気がする。俺が問題を単純化したいだけかもしれない。しかし、問題も意外とシンプルなんじゃないか?
オルクスと二人で戦っても倒せなかった。俺が殺される確率の方が高い。それでも、自分が今出来る事を放り投げてログアウトする程、弱虫にはなりたくない。
もうこれ以上、自分を嫌いになりたくない。
「エーファ。お前を、殺す。」
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